第2話 怜への感情
ただ、作るのはいいが……
サプライズもいいが、事前に知らせた場合はいつも以上に喜んでくれるからだ。特に、今回作る予定のスイートポテトタルトは、間違いなく怜の大好物であるので。
その日は、シフトの関係で裕司の方が遅番だったために、怜とは一緒に帰宅出来ない。ただ、最近はお互いが遅番でもどちらの部屋に行くことが多いのだ。なので、今日は裕司の部屋にいるだろう。夕飯も、それぞれまかないで食べたので要らない。
今日のまかないは、他人丼。豚バラ肉にめんつゆなどで味付けして卵をとじたものだ。怜はお代わりしたいと言っていたくらい、絶賛してくれていた。
(……うーん。ああ言う顔見ると、やっぱり言いたくなる)
ほぼ何でも、裕司や
まかない処では、他の社員やバイト達もいたので、言い出せば裕司達に質問が殺到したはず。だから、源二も自慢するように言うこともなかった。
「おかえり〜!」
「……ただいまぜよ」
部屋に行けば、鍵を開けた音で走ってきたのか怜が嬉しそうな顔で出迎えてくれた。
昼間も考えたが、本当に何気ないことでも大事にしたくなる女の子。今までの彼女達には失礼だが、やはり怜は特別に感じた。笑顔だけで、裕司の心をときめかせてくれるのだから。
「おつおつ! 疲れているこもやんに、ちょいとご褒美買ってきたのだよ!」
「……ご褒美?」
「季節限定のコンビニアイスなのだよ」
「おー」
気にはしていたが、今日もバイトでそこそこ疲れていたため、帰りにコンビニに寄るのを忘れていた。だから、裕司は自分の分を払うと言ったが。
「こもやんのご褒美なのだよ? たまにはいいっしょ? 私の奢りだー」
「……あんがと」
本当に……些細な事でもこちらを嬉しくさせてくれる。
気遣いも出来るし、二十歳になって少し経つが顔立ちも可愛らしい。さぞや、今までモテてきただろうが……夏の温水プールであったように、ナンパにも遭いやすい。出来るだけ一緒に居たいが、シフトもバイト内容も結構違うので最近はなかなか一緒に帰れないのだ。
「じゃじゃーん! 紅芋タルト味と、安納芋!!」
秋尽くしなのと、芋とタルトと言う単語に少しドキッとしてしまった。別に選択肢が悪いわけではない。ただ、言おうとしていたまかないのデザートがそのアイスの味とほぼ一緒だから……裕司は、怜がスイートポテトタルトをいらないかもと言われるのが悲しくなってきたのだ。
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