第2話 何気ないひと時

 れいと向かい合わせだったので、目が合うとすぐにお互い苦笑いしてしまう。


 話は、お開きしてから……となったが、真衣香まいかに先に引き留められた。



「マイ?」


「……お兄ちゃん。芽依めいお兄ちゃんの……連絡先はわかる?」


「芽依君? 俺より、兄貴の方が知ってると思うけど」


「! わかったー!」



 どうやら、来年中学生になる妹にも……春が来たかもしれない。道徳的とかどうたらこうたらあるだろうが……別に年の差はそこまで大きくはない、はず。


 それに、芽依の人柄は悪くない。まだまだ短い付き合いだが、きちんと姉の体調を労わる気遣いがあることを知っている。それは兄のりんも。


 とりあえず、真衣香は秀司しゅうじに確認を取りに行ったが……その秀司がお節介をしていた。芽依を引きずり、真衣香の前に立たせたのだ。



「れ……連絡先、交換。いいかな?」


「うん! 喜んで!!」



 と言うやり取りがあったので、あちらはあちらで何とかなりそうだ。とりあえずは……怜も来たので、お互いの両親に声をかけてから帰宅することに。



「お腹ぱんぱん! 披露宴だとどんくらい食べれるんだろう??」


葛木くずきさんとかに聞いたりした?」


「ドレスキツいし、挨拶とかが多いならあんまり食べれないって聞いた。仕事はまだ高砂たかさご任されたこと少ないし」



 裕司も詳しくないが、高砂とは新郎新婦が披露宴の時に座る席のことを言うらしい。裕司は今の部署の関係でほとんど見た事がないが……歓談の時間以外は立ったり座ったりが多いとか。


 お色直し……も、一応プランには組み込んだが、レンタルとは言え衣裳を汚さないかとても心配だ。



「……まあ。料理長や先輩らの料理はきちんと堪能したいぜよ?」


「和中洋混ぜたもんね〜?」



 和食部門の板橋も、出来れば祝いたいの言葉もあったため……そうしたら、いつもは大人しい中華部門のようまで参戦を言い出してきた。


 全部、山越を含めるまかない処でのやり取りだったが。


 怜もだが、裕司にもそれなりに気にかけてくれることが……裕司は素直に嬉しかった。


 しかし、料理のメインはやはり洋食部門の中尾に決定はしている。



「さてさて〜? 怜やん。今日は今日でお祝い食べたけど。夜はどうする?」


「んー……あんな豪華な料理食べちゃったから。なんかジャンキーなもの食べたい」


「んじゃ。そこのハンバーガーショップで買う? それかバンズとか買って、出来立て家で作る?」


「手伝う! その頃にはお腹ぺこぺこだー!!」


「了解。腕が鳴るぜよ」



 何気ない、ほっと出来るこのひと時が他のカップルでもありますように。


 そう思える瞬間だった。

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