落ちこぼれパイロットの私だって、この子と一緒なら絶対、撃墜王になれるわ
三方を海に囲まれ、残る一方を8,000m級の山脈で覆われたバーラタ共和国。その航空宇宙軍の任務は、海上から侵攻してくる敵航空機および水上艦・潜水艦が接近ないし上陸しない前にこれを補足殲滅することである。「戦闘機がドッグファイトを行っている時点で戦略的に敗北している」と考えるバーラタでは戦闘機はミサイル輸送機として認識されており、そのパイロットは全て女性であった。
バーラタ共和国航空士官学校の候補学生フレミング。航空士官学校では4人1組の小隊単位で行動する。シャトーワインのような深みのある赤髪を持つ彼女は、黄金で染め上げたように美しく輝くゆるふわ金髪の親友キルヒホッフ、澄み切った清流のような透明感のある水色の髪を編み込みに結ったケプラーと、華やかでボリュームのある桜色の髪を襟元で二つ結びにしているファーレンハイトの4人で第18小隊を組んでいる。この小隊はその成績が同期72人(全18個小隊)中最下位であるため、別名「落ちこぼれ小隊」とも呼ばれていた。
フレミング達の愛機は、双発大推力エンジンに、大面積前進翼とカナードを持つヒメシステム第3世代戦闘機のAMF-75Aである。3学年時の8月に開催される空戦実技競技会のファイナルマッチに進んだフレミングと学年首席のイッセキ。メーカー標準グレー単色ロービジ塗装のイッセキ機の目の前で、フレミングは驚異の機動-キャンディマルーンのパーソナルカラーで塗装した愛機を推力偏向ノズルで自在に操ることから別名「踊る赤髪(ダンシングマルーン)」と呼ばれる-を披露した。
競技会から1週間。2078年8月10日。西方のパラティア教国が突如、宣戦布告と同時に多数の巡航ミサイルをバーラタに向けて発射した。フレミング達3号学生は、緊急空中退避を命じられる。フレミング、キルヒホッフの両名は無事空中退避に成功するが、未だ多くの同期生が地上に取り残され、離陸許可を待っている。中には同じ第18小隊のケプラー機とファーレンハイト機も……1507時、ついにパラティアのミサイル群が航空士官学校に着弾、候補学生からも多くの犠牲者が出てしまう。上空から成す術なく見つめるフレミングは、キルヒホッフと共にエンドレスエイトを描き続ける……