フレミングの法則 ~ 踊る赤髪の落ちこぼれ撃墜王 Dancing Maroon of the Scheduled Ace ~
第11話:きっとフレミーの頭の中には、覗いてみたって何も入っていませんから
第11話:きっとフレミーの頭の中には、覗いてみたって何も入っていませんから
この日の
「では、フレミーの
「かんぱぁ~い!」
「ホント、凄かったよねぇ~、フレミングちゃん。特にイッセキちゃんとの決勝戦なんて……」
「そうそう、あの
「ダメですよファーレンハイト、そんなことを言っては。それに……きっとフレミーの頭の中には、覗いてみたって何も入っていませんから」
「えぇ~、キルヒーまでヒドぉい~。私だって、それなりに……」
「考えてないっしょ?」
「そうそう、キルヒーもファーレンハイトも、決勝進出おめでとう」
「ありがと」
「ありがとう、フレミー」
「でも、ホント凄いよねぇ~。1つの小隊から3人も決勝トーナメントに進出するなんて」
今は編み込みを解いた
「ましてやうちら、
席次72位、すなわち学年最下位の自虐に、既に出来上がっている4人はまたも大爆笑する。隣の部屋はさぞ迷惑だろうなぁ、と
「そんなら来年から第18小隊は『落ちこぼれ小隊』の名を返上だね。そしたら『ジャックナイフ小隊』とかってどうかな? 普段はこぅ小さくなってるんだけど、いざとなったら
「何ソレ、イミフだし。うちらはせいぜい『
「えぇ~、どうせカードなら『
「ハートってやっぱケプラー、胸かぁ~?胸なのかぁ?」
「くぅ~もぉ~、まじ巨乳しか勝たんわぁ~」
3人のじゃれ合い(?)に見ない振りをするゆるふわ
「ワタクシ達の後輩がフレミーの
「『
フレミングのつぶやきに小隊メンバー全員が同意する。
「『
「そしたらこの203号室も伝説の部屋になっちゃうかもね?」
調子に乗ったフレミングが更に突拍子もないことを言いだす。
「『
「『
フレミングの暴走にファーレンハイトが追従する。今日はネーミング大会にでもなってしまったのだろうか……とケプラーが困惑を覚えていると
「でも、この4人でこうしてこの部屋で過ごすのも、あともう少しですわねぇ」
キルヒホッフが少し寂し気に呟く。
「あと4か月で卒業かぁ。あっという間だったなぁ~」
親友の
「ってか、10月からは
「
ケプラーの言う通り、最終試験を兼ねた研修であることである。つまり、赴任予定地の上官が試験官となり、特に軍人としての適性を最終判定することになっている。換言すれば、この試験にパスできなければ即退学を意味しているのだ。これまでの苦労が水の泡となる緊張の瞬間でもある。
「みんなには撃墜マークがあるからいいけどぉ~、私なんて、何もないから……」
「でもさ、ケプラーは逆に、何でもできるじゃん。私なんて、難しい理論はさっぱりだし……」
しんみりとするケプラーを慌ててフレミングがフォローする。「何でも無難にこなし何でもできるが何も秀でることもない」。席次36位-つまり同期の真ん中-のケプラーの自己認識は、そのまま周囲の客観評価でもあるが、それはケプラーの欠点を表すと同時に、長所を示す言葉でもあるのだ。ファーレンハイトが努めて明るく声を挙げる。
「それにその巨乳なら、どこ行っても誇れるっしょ」
元気づけてくれようとする
「ケプラー、お気持ちは分かりますけど、それでも貴女がこの2年半頑張ってきたことは、ワタクシ達が一番良く知っていますわ」
ゆるふわ
「じゃぁ、もう1回乾杯しようか!」
「よろしいですけど、何に乾杯しますの?」
フレミングの提案に、キルヒホッフが問う。
「4人の友情、とか?」
ケプラーの瞳の裏にある秘めたる決意に感じるものがあるファーレンハイトが、常の彼女には珍しく率先して音頭をとる。
「
「永遠の友情に!」
「離れ離れになっても、手紙ちょうだいね」
などと早くもおセンチになっているケプラーに、ファーレンハイトが突っ込みを入れる。
「いやいや、まだ2カ月も先のことだし……」
「えぇ~、そうだけどぉ~、ファーレンハイトちゃんは手紙くれないのぉ~?」
「いや、送るけど、そりゃ……」
ファーレンハイトが珍しくケプラーの応対に困っている様子がおかしい。
「ところで、みんなはどこの部隊に行きたいとかってある?」
室内がこのまま辛気臭くなるのを嫌ったフレミングが、さり気なく話題を変える。
「うちはやっぱ、故郷に近い方がいっかな? 何つーか、
「ファーレンハイトちゃんの故郷って、バーダリープトラだっけ?」
「そ……うち、ばぁちゃんっ子だから……やっぱ、河の神様の近くがいいわ」
10歳の時に母と死別し、以降は母方の祖母に育てられたファーレンハイトである。桃色の意外な側面を見た思いのする3人を代表して、キルヒホッフが声をかける。
「それならば、東方防衛航空軍団の第17防衛航空軍配属になれるといいわね。あの部隊は確かバーダリープトラに駐留だし、部隊の愛称も……」
「ガンガー、河の神様っしょ」
嬉しそうに揺れる
「ケプラーはどう?どっか、行きたい部隊とかあるの?」
少し困ったような表情を浮かべたケプラーは、
「私は……優しい上官のいる部隊がいいなぁ……」
「あぁケプラー、その柔らかい……」
「あぁお姉さま、私……」
寸劇を始める2人を無視して、ゆるふわ
「そうね、やはり尊敬できる上官の下であれば、勤務地などどこでも構わないですものね」
「そうなの。それでフレミングちゃんはやっぱり、
「やっぱフレミングの腕なら、
ケプラーの指摘にファーレンハイトも激しく同意する。
「あんだけの
褒められた気になってニヤニヤしているフレミングに、親友が水を差す。
「でもね、ファーレンハイト。仮に貴女が
問われたファーレンハイトは間髪いれずに
「いやいやいやいや、うちはまじ無理、ゼッタイやだ!」
「確かに、フレミングちゃんの感覚に付いていくのは難しいよねぇ~」
2人の反応を見てキルヒホッフが宣言する。
「
「なら、戦技研究部隊ならアリっしょ? 新技の研究とか、
「そうですわね……フレミーなら操縦はこなせるとは思いますが、重要なのはそれを理論的に表現して
キルヒホッフの指摘する通り、テストパイロットに要求される能力は大別して2つ。ひとつはどのような機体でも乗りこなす天性の感覚であり、もうひとつはその感覚を理論的かつ計数的に
「そこは……フレミングちゃんにはちょっと……」
納得する3人に何となくムっとするものを覚えたフレミングは、矛先を親友に向けることにした。
「そんなこと言うなら、キルヒーはどうしたいのっ!?」
「ワタクシは……」
珍しく言い淀むキルヒホッフが、しばしの間を空けてからゆっくりと話し始める。
「ワタクシは、今すぐどの部隊に、というのはありませんけれど、将来的には……」
「将来的には……?」
他の3人がオウム返しで後を促す。
「将来的には、ここ
「そっかぁ~、
思いやりに溢れた優しい夢に、キルヒホッフにはお似合いだろうなぁ、と感じる3人であった。
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