第21話 みことの過去~中編~
工藤と名乗る人物は自分の身分証明書を
見せながら、自身が所属する研究所についての
概要を説明していた。
簡単に言うと不思議な現象を発生させる
人間の調査機関との事だった。
不思議な現象?
あのウサギのぬいぐるみの事だろうか。
政府はウサギのぬいぐるみ現象を調べる為にわざわざ来たのか?
可愛いようで、それは無いだろと。
ウサギのぬいぐるみはきっとシャイな誰かがいつも差し入れしてくれているのだろう。
そう思っていた。
工藤と名乗る人物は、今度は医師や看護師たちと会話しその後、みことの病室へやって来た。
そして、みことに挨拶をして軽く頭をなでながら
笑顔でみことの事を見つめてくれていた。
この光景を見ている限り悪い人物には見えなかった。
その日は、工藤と名乗る人物は特に何かをするわけでは無く
挨拶と説明で来たことと、明日より確認の試験を行う事を告げて帰っていった。
医師や看護師に聞いても特に詳細は解からず
説明も母親が聞いたのと同じ内容であった。
そして、次の日。
工藤は多くの人物を引き連れ病院へ再び訪れていた。
これから、数日間は研究所の人間が寝泊まりをし
検査を実施するとの事のようだ。
研究所の職員らしき人物はみことの病室のとなりの
部屋を陣取り機材の設置をしていた。
不思議なもので昨日まで患者のいた、
隣は空き部屋に成っていた。
もしかして、研究所の圧力で空き部屋になったのだろうか。
病室を一室とは言え一日で無人にして
機材を置ける環境を誰からの苦情も無く行う
ことはそれなりの機関なのだろうか。
一般人には、まったく理解の外の出来事であった。
肝心のみことは、心電図ようの端子や脳波測定用の
ネットに部屋には監視カメラが設置された。
「おの、本当になんの検査なんですか?」
「みことはただでさえ心臓が弱いので、ストレスは
余りかけたくないのですが。」
母親はそれは心配そうに医師や看護師のいる前で
工藤へ説明を求めるように詰め寄る。
「心配ですよね。そりゃ。僕だって何も知らさせずに、愛娘にこんな検査をされたら。」
「僕がお母さんの立場ならぶっ飛ばしてますよ」
工藤は真剣な眼差しで答える。
そして。
「誠に申し訳ございません。今は全を話す事は出来ません。」
「ただ、我々を信じて頂くしかない。」
そうは言っても昨日会ったばかりの人と
この状況の何を信じれば良いのか。
ただ、工藤の真剣な眼差しはみことを考えての
事であることは読み取れたのでそれ以上の追及は
母親からされる事は無かった。
検査は数日間、24時間体制で行われ、
数日間は毎日みことの状態が数値として
報告されていた。
みことの体は心臓病を患っているようには
見えず、心電図も正常で脳波も特に問題はなった。
監視カメラの映像も特に異常があるようには
見えない。
そう、知らない誰かがウサギのぬいぐるみを置きに
来るなんて状況は確認されなかった。
では、誰があれを置いたのか。
そして、数日間立ったある日の深夜に異変は起こった。
その日はたまたま、母親もみことの病室に泊まっており一緒にうさぎのぬいぐるみを撫でた後に、みことのベッドのすぐ横に簡易ベッドを設置して眠りについていた。
母親が眠って数時間後の深夜異変は起こった。
まずは心電図の波形が乱れ始めた。
初めは心臓病の兆候かと研究所職員も疑った為
一人が念のため医師を呼びに行く。
その日は当直にみことの担当医が居てくれた。
だが、心電図は確かに触れているが心臓病のそれでは無いと考えられた。
運動しているときと同じように心拍数は上がっているが
異常値ではない。
そして次に現れたのは脳波の異常。
これは、寝ている人間としては異常であった。
覚醒していても脳全体がフル稼働する事は
あり得ないと言っても良い程に覚醒している。
職員は研究所メンバー用に用意された宿泊スペースに
工藤を呼びに走る。
ほどなくして、工藤はモニターが設置されている部屋に入って来て一緒に数値を見る。
「これ以上の変化は、今はまだ起きてな...」
工藤が全て言い切る前にすべての数値が異常値を示した。
そして、監視カメラの映像にはみことを中心に眩い光が
発せられており、光が消えた瞬間に巨大なウサギのぬいぐるみが
突如として出現した。
今回のウサギのぬいぐるみは以前にもましてデカい。
ゆうに2mはあるのでは無いだろうか。
工藤たちは、流石のぬいぐるみの大きさにみことが窒息でも
するのではないかと心配になり病室に彼女を起こさないように
入っていった。
みことの母親は先ほどの光で起きていたようで。
薄暗いなか医師や看護師・工藤の存在を見つけ。
「どうしたんですか皆さん。勢ぞろいで」
と若干寝ぼけて話しかけ、ふいにみことに目をやる。
思わず叫びそうになるのを抑え。
そこには、2mほどの巨大なウサギのぬいぐるみを
抱きしめ、ウサギのモフモフに顔を埋め幸せそうに
寝息を立ってているみことの姿があった。
工藤はその幸せそうな顔を見ながら、この子の
為にも。
と心を決め母親に彼女に起こっている
現状をすべて話す事とした。
みことが持つ異能についてのすべてを。
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