第4話 異能者の戦い

 そうなると、この犯行自体が...


「そおー怖い顔しないでよ。」


木崎を宙吊りにしているであろう男性は、まるで、

遊んでいるかのように、ニタニタと笑いながら

みこと達に話かけてきた。


「木崎を離しなさい。」


みことは、先程までと違って冷静ではいるものの

かなり怒っているように見える。


「さもなければ」


「グッフ、ハァハァ」


苦しそうな、木崎の息遣いにみことは、自身の持っている

拳銃のトリガーにかけている指に力が入っていくのを肌で感じていた。


「いいのかなぁ?その銃より僕のほうが早いよ」


「殺すの」


そう、木崎を宙吊りにしているであろう男性は余裕な表情を浮かべて

こちらの様子を伺っている。


どうするか。


この場で異能者へ対抗できる手段は。

と、切り抜ける方法を考えている矢先に

銃声が当たりに響き渡った。


その銃声は、みことの思考をよそに。

若い警察官が発砲したものだった。


「待って。異能者には...」


みことが言い切る前に、異能者の男性は発砲した警察官を

睨みつけ、無表情に。


「死ねよ」


と告げる。


若い警察官は、自分の打った弾丸は確実に犯人に命中しているように

見て取れた為、なにが起こっているのか理解出来ないといった、

表情のまま、次の瞬間には「ボキンッ」と鈍い音がして、首があらぬ方向へ

曲がっていた。


「わぁぁぁぁぁぁぁ」


その状況を直視してしまった小谷周平の叫び声が

響き渡る。



その声が木崎を宙吊りにしている男性の勘に触ったのか。


「お前もうるさいから、死ねよ」


といった瞬間に小谷周平の表情は絶望に包まれていた。


俺はこのまま、何も知らずここで死んでしまうと。

絶対的な死を感じ、既に生きる事を諦めてしまったようにも見える。


そして、一瞬、自分の身体が宙を浮いきそのまま壁へ自分の

身体が吸い込まれるように動き出した。


このままでは、壁に叩きつけられて、確実に死ぬ。


「なに、命諦めてるの?」


その声は、冷静にでも確実に怒りと悲しみが入り交じった。

でも、なぜか安心できる。


さっき出会ったばかりの少女の声だった。


そして、声が聞こえた瞬間、ふっと自分を支配していたような感覚が

消えそのまま地面に重力によって落下した。


「痛ぇぇぇ」


「文句言わないで、死ぬよりましでしょ。」


そう、憎まれ口を叩きながらも自分を助けてくれた彼女の手には

少女の身の丈より長い持ち手の大きな鎌が握られていた。


まるで、死神の持つそれのような、巨大な鎌が。


いったいどこから出したのだろうか。


小谷周平の疑問をよそに、彼らはお互い睨み合っていた。


「やっぱり、君も異能者か。」

「よかった、トラップに異能者がかかって」


木崎を宙吊りにしているであろう男性は

みことに対して、あたかも作戦通りと言わんばかりの

勝ち誇った表情をして、こちらへ話かけてくる。


「そう、それは良かったわね」

正直、今更トラップと言われたところで。

みことの怒りが治まる訳がなかった。


「なに、怒ってるの?」

この男性は本気でいっているのだろうか。


どうやら、この男性とは別の形で出会っていても

決して仲良くはなれなかっただろう。


「えぇ、とってもね」


そういった瞬間、男性と木崎の間にギロチンのような巨大な刃が出現して

彼らの間を通過した。


その瞬間、木崎は何かから解放され、小谷周平と同じように地面に尻もちを

ついていた。


「ハァハァハァ」


まだ、かなり苦しそうにしているが、命に別状はなさそうだ。


「なに助けてんの」

と今度は男性が、みことをターゲットとして襲い掛かる。


見えない何かに対してみことは鎌を振り空を切る。


「君、見えてるの」


「いいえ、ただ、あなたの異能は恐らく正面しか攻撃な出来ないと思うから。」


と、既に何かをつかんでいるようにみことは男性に対して口を開く。


「今度は、私から行くわよ。」


そう言うと、みことは巨大な鎌を自分の身体の一部かのように操り

男性に対して攻撃繰り出していく。


男性もみことの攻撃を交わしながら反撃を行うもなかなかみことの

動きを捉えられず、徐々に追い込まれているようにも見える。


「どうしたのかしら、さっきまでの余裕は!!」


「もう、降参かしら。」


「そんなことないけど、君強いね」


二人は、まだ余力を残してるように戦闘を続けていたが。


男性の動きが急に止まった。


”ザザザ”


何らかの通信機器から指令でも受けているのだろうか。

かすかにノイズが聞こえている。


「ごめんね、もう少し遊びたかったんだけど」


男性はそう言いうと自身の身体を宙に浮かせて

壁を乗り越えて行く。


「待ちなさい、まだ終わってないわ」


みことの制止など当然意に返さずに、男性はこの場から立ち去ろうと

していた。


「じゃーね、それから、僕はリュウだよ。」

「また、会うときはちゃんと殺してあげるから覚えておいて」


そう言い残して、姿を消した。


みことは追いかけたい衝動を抑え、リュウと名乗る男性を

見逃すことにした。


正直、重要な情報が得られた可能性があるため、

追跡したい思いもあったが、木崎と小谷周平の二人を連れた状態で

あれ以上の戦闘が望ましくないのも事実だった。


「二人とも平気?」


みことは、さすがに二人を気遣って言葉を掛けた。


「あの、今のは一体何なんですか。」


それもそうだ。


小谷周平にはまだ何も話していない。


話は安全な研究所で行う予定でいたし。


ここまで来たなら致し方無いか。


そう考えたみことは、現場とフェイクに使われた男性と若い死亡した警察官を

刑事達に任せる事にした。


「移動しながら話すわ。」


その方がまだましだろう、ここに留まっていても埒が明かない。


 この犯行自体が、みこと一人を狙ったものとは考え辛い。


だが、この犯行は当初より異能者を見つけ出すものとして

計画されたものだろう。


 最初から被害者を殺さないギリギリの状態を保つようにし、

みことたちが来た時に蘇生したように見せかけスキを作り出す。


そして、木崎へ攻撃を仕掛けることにより、異能者がいる場合、

その能力を使わざるを得ない状況を作り出す。


そして、結果としてみことは異能力を使わざるを得なくなった。


 まぁ、もしもここに来たのが非異能者だけであった場合は

間違いなく全員殺害されていただろうけど。


 異能者は普段、その能力を隠しているが、異能者同士は直感で

分かる場合もある。


ただし、確証が得られるものではない。


その為、今回のように異能を使わざるを得ない状況作り出したりして、

異能者を特定する必要が出てくる。


 それは、みこと自身も例外では無く、直感では異能者の犯行と断定出来ても

確証が得られないし、ましてや、どこの誰かなんて見当もつかない。


 その為、いくら異能力を持っているとは言っても、

犯行現場を訪れたりと、色々自分の足で行動をしないといけない。

そのやり方は現場の刑事そう変わりない。


 まぁ、それはとりあえずいいとして。


「木崎、運転できる?」


やはり、私は鬼畜らしい。

この状況で運転させようとするなんて。


「大丈夫です」


さすが、私が見込んだタフネスだ。


「出来るんですか。」


小谷周平はまたしてもかなり驚いていたが私はそんな彼には

ツッコミはせずに車へ向かって歩きだした。


「さぁ、行くわよ、当初の目的地へ」


私はそう言って、研究所へ向かって車を走らせるように

木崎へ伝えながら、異能について話始めた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る