第5話 異能
そもそも、異能とは何なにか。
当然だが、まずは、そこから話さないとダメだろう。
正直、研究所へ到着するまで異能の話は
おろか私自身も異能を使う予定はなかった。
その為に、普段は持ち歩かない拳銃まで携帯していたのだから。
みことは、当初の計画が多少狂って来ていることに若干の苛立ちを覚えながらも
小谷周平に対して、異能についての説明を始めた。
異能とはなにか。
それは、本来、人の魂にはその人物が
この世に生を受けた根源的な願いがいくつか眠っており。
自分自身が何かしらの事象や原因によって、
その願に気付き願望を自覚した時に目覚める、
人智を超えた力の総称。
魂の根源的な願望の具現化。
それが異能。
例えば、”餓えたく無い”が魂の願望の場合、
それを自覚した時には餓えない異能。
鉄やプラスチックを食べれるとか。
例えば、火事に見舞われてそこから生き延びたいと
強く願った時に耐火性の異能やそもそも炎を
操つる異能が具現化する可能性すらある。
これは、魂には生き残りたいとの根源的な願いがあり
それに自分自身が気づき、魂に手を伸ばした時
原因となる火事を克服する形で、異能が出現している。
そんな普通では考えられないような
現象を引き起こす事が出来る。
時には自然現象を操ったり、サイコキネシスや
透視など願望によって様々な異能が存在している。
そして、中には生まれながらにして、魂の願望を知り、
具現化を初めから持っている。
そんな人間も少なからず存在している事が
確認されている。
私の所属している研究所では、
そんな異能に目覚めた市民や子供を
政府から預かり異能の使い方や秘匿、
犯罪の抑止などを行っている。
「なぜ、隠す必要があるんですか」
「異能は通常誰でも出現する可能性があるけど、一般には混乱をされるため」
「本当の秘匿理由は、異能者による支配の抑止よ」
人智を超えた超常的な力を手に入れれば、
最悪は異能者と非異能者の戦争に発展し兼ねない。
政府や世界はそれを最も恐れている。
もし、異能が誰でも手に入ると分かったら。
そして、手に入れ人物たちが徒党を組み、
戦争を仕掛けて来たらどうなるか。
当然異能者自身は、自分に異能があることは
知っているが情報も制限されており
研究所以外のコミュニティも存在しない。
一般には情報公開はされていないので、
マジックの類と思われ都市伝説扱いされるのが
関の山だ。
だが、もし現代で異能の情報が広まれば。
SNSなどを通じて、あらゆる所で犯罪の勧誘などが行われ。
異能を発現する方法などが拡散される事態となれば、
巨大な犯罪組織が出来上がる可能性がある。
そうなれば、いよいよ誰にも止められない事態となる。
それを避ける為の、情報規制だ。
「それで、霧崎さんの異能どう言うものなんですか」
私の異能か。
まぁ、もう見られているし、私が話さないのもおかしいか。
「私の異能は物質創造よ」
まぁ、今は半分以下の情報で良いだろう。
「かっこいいっすね。だから、あの大鎌なんですね。」
「そうね。」
私
目を輝かせて直視してくる男性にみことは少し恥ずかしくなり、
話を切り上げたくて短く、そして少し冷たく返答をした。
そんな、みことに考えなど知らずに、
小谷周平は質問を続ける。
「そうしたら、先襲ってきた男の異能はなんなんでしょうか?」
「それは、私も気に成ります。」
木崎も小谷の質問に対して興味があるようだ。
それもそうだろう。
自分がもしかしたら殺されたいたかもしれない
異能なのだから。
逆に興味がなかったらそれはそれで、怖い気がする。
「これは、当然私の予想だけど」
と、前置きをして、みことは先ほどの戦闘を
一部振り返る。
木崎を持ち上げ、若い警察官の弾丸を止め、首をおり、
小谷を壁へ叩きつけようとした、リュウと名乗る男の異能。
「恐らく、透明な触手もしくはそれに類するもの」
「サイコキネシスの類とは違うわ」
もし、サイコキネシスや念動力、重力操作のような能力なら異能で
創造しているとは言え、私の異能では簡単に切断する事は出来ないはず。
それが、木崎をギロチンで助けた時の事を考えれば、何かしらの物体はあるが、
目に見えていないと考えれるのがベターだろう。
逆に今回はそれが、幸いしたとも言える。
みことの異能は一見便利そうには見えるが
本当に形の無いものや自然現象にはあまり
相性がいいとは言えない。
異能で自身を守る盾を作っても、重力で
圧し潰されればそれで終わりの場合も考えられる。
その分、相手の異能をある程度特定したり、
異能の相性は悪くても相性の良いものを
生み出す事は出来る。
火が相手なら、大鎌での攻撃は効かなくても
炎を防ぐ事は出来る。
氷を作りだす事も出来るので周りを冷やして
延焼を抑えるなんて使い方も可能だろう。
まあ、とはいっても作り出せるのは基本的には物質の為、
サイコキネシスなど本当に純粋なエネルギーの操作
や幻術なんてものには、ほとんど無力になる。
どちらにしても、相手を直接叩けば解決だが、
それは非異能者でも結果は同じことだろう。
「じゃ、研究所にはたくさん異能者がいるんですか。」
「今から向かう研究所にはいないわよ、私専用だから」
何それ?
と言いたげな表情で小谷周平は私を見つめてくる。
異能者の研究所はここ日本にも数十か所あり、
異能者の育成などはいくつかの研究所に分かれて
行われている。
今から行くのは、結果的に所属が私だけになった為、
事実上私専用となった研究所だ。
ただ、研究所はどこでもそうだが、セキュリティー面などでも
一番安心出来るし、シェルターとしても使用出来る。
それに、一番の目的は、彼自身だ。
その為に、安全を理由に研究所へ向かっているのだから。
みことは、小谷周平には真意は伝えずにいた。
そこから先は、何か考えごとをしているかのように
黙って窓の外を見るようになり。
3人を乗せた車は研究所へ向かって走り続けていった。
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