第6話 組織
あっ、そう言えば。
みことは突然、窓の外を見ているかと思ったら、
リュウの異能とは別に、もうひとつ気になる事を口にしだした。
「それから、今回の敵は集団の可能性が高いわ。」
「リュウは恐らく実行部隊と言った所ね」
みことの、突然の発言に対して。
「なぜですか?」
と木崎が質問をしてきた。
そうか。
あの時のわずかな会話のノイズに気付いたのは、
私だけだったか。
まぁ、二人は殺されかけていたのだから、仕方がないけど。
と、先程の状況を思い出しながら、話を続けて行く。
「あの、リュウと名乗る男があの場から撤退したのは」
「何者からか、戦闘の途中で通信が入ったからよ」
「だから、彼以外にも...」
みことが、二人に注意を促そうとした瞬間に、3人の乗車に
凄まじい衝撃が走った。
車は、そのまま走っている道路から歩道へ飛ばれ、歩道の奥にある
コンビニへ車体ごと吹き飛ばされてしまった。
いったい何が?
みことは、衝撃の瞬間に車内にショック吸収のエアーバックのようなものを
作りだし咄嗟に、二人を守っていた。
車の外観とコンビニはボロボロだが、中は意外と大丈夫で
3人とも軽く打ち付けただけで、思っている以上に無事であった。
「二人とも、合図したら走って逃げて。」
「集合場所...」
そう言ってみことは、壊れた車から姿を現した。
巨大な鎌を携えた状態で。
「出てきなさい、相手に成るわ。」
そう言って、彼女は襲撃してきた異能者へ啖呵を切る。
異能者は無言で、次の攻撃態勢に入っている。
巨大な羽をバタつかせて。
突風か。
次の瞬間みことは、羽目掛けて攻撃を仕掛ける。
みことの攻撃を一瞬で躱し、襲撃犯は空中へ一度
逃げて行った。
その隙を見て、みことは二人に対して
非常に分かりやすい合図をだした。
「今よ、走って。」
みこは二人そう話伝えてから、空中へ逃げて行った
襲撃犯の方向を見つめる。
二人が走り出した瞬間に、逃げたと思われた襲撃犯は空中から
明らかに、小谷周平を目掛けて攻撃を仕掛けるように戻って来ていた。
みことは、当然その行動を見逃すことは無く、
襲撃犯の前に出て、対峙する。
「追わせないわよ、あなたの相手は私だから。」
そう言って、みことは完全に戦闘モードとなった。
みことは、羽の生えた異能者に対して。
「あなた、何者?名前は?」
と尋問のように問いかけていた。
異能者は、「つばさよ」と短く伝えてきた。
「能力名じゃなくて?」
みことは、見た目のままの異能なのかと、面白そうに
問いかけた。
「いや、翼生えてるけど、私の名前だから」
と、つばさと名乗る女性はイラ立ちながら
返答を返してきた。
「あらそう、ごめんなさい」
と、みことはさほど詫び入れる様子も無く、つばさと名乗った
女性に対して大鎌を振るう。
当然、つばさとの距離がある為、大鎌は当たらないように見える。
つばさも、その距離では届くわけないと高をくくり、避けるそぶりも
見せなかった。
次の瞬間。
つばさの右の羽が傷つき切り取られた羽が宙を舞っていた。
つばさ本人はなぜと困惑した表情を浮かべている。
「油断しすぎ」
みことのもっともな指摘につばさは、自身の羽を再度はばたかせて
突風を起こす。
「もう、効かないわ。」
みことは、創造の異能で巨大な半円状のドームのようなものを
創りだし、コンクリートも破壊してしまう程、強烈な突風をやり過ごす。
ドームは円形の為、風の流れを遮ることなくそのまま受け流し、
みこととドームは影響を受けることは無く、突風がやんだ瞬間を見定めて
再び大鎌を振りかぶる。
「そうはいかないわ」とつばさは、さらに高度を上げ決して鎌が届きようのない位置まで飛行し状況を見守っていた。
つばさは、みことの創造の異能に対して受けていた報告より厄介であることを
ここで改めて知ることになった。
どうして、さっきの攻撃が届いたのか。
その理由を考えている隙に、みことは自身の異能をつかって、透明な塔を建造し
つばさの背後を取っていた。
「まさか、ここまで来れるなんて」
「そんなに驚か居ないでよ」
みことは、軽く返す。
先程の車への攻撃の時とは打って変わって、すでにみことのペースで
戦闘は進んでいた。
「そこからじゃ、流石に届きはしないでしょ。」
と、いまだ余裕を見せるつばさに対して、みことは。
「バカね。学習能力が無いの?」
「良く見てなさい。」
と、挑発する可能ように一言発してから、大鎌を再度振るった。
その瞬間、大鎌の柄が伸びつばさの右側の羽を完全に両断した。
そう。
先程の攻撃もそうだが、ここへ上って来たのも基本的には同じ原理だ。
自身の創造する物であれば、作った後も形状は変えられる。
そのため、攻撃に合わせて、鎌そのものを延長して届かない距離への攻撃を行っていた。
当然、質量もコントロールしているので数メートルの距離なら一瞬で伸ばす
ことが可能であり、鎌を振きることも出来る。
「どう、私の異能の味は」
みことは、余裕な表情で笑い、挑発する。
片翼を失った、つばさは、成す術が無く、降参した表情である。
「強いわね、報告以上に。
「厄介な力」
やはり、何かしらの組織の異能者か。
「報告者は?リュウと言う男性かしらね」
「えぇ」
そう肯定するつばさは続けて言葉を添えた。
「でも、あの人にはかなわないわ。」
「だれ?」
「さぁ、いずれ知るんじゃない?」
とつばさは、明らかに上位の人物がいる口ぶりで話してくる。
”あの人”とはだれか。
この一連の事件の首謀者?
それとも組織のボス?
どうあれ、犯罪組織のような集団が
存在している事は疑いようがない。
「もう少しヒントはもらえないかしら」
みことは、片翼となり飛行能力を失ったつばさを、自身が作った透明な塔の
面積を広げる事で支え、地上に落下しないようにしてから、鎌をつばさの
首にかけ尋問をする。
”あなたの命は私のもの”と言わんばかりの、一瞬で殺せる距離で
みことは更なる情報を得るため問い詰めようとするが。
次の瞬間、不快な音が聞こえたと思った矢先に、
突然つばさの首から上がまるで捥ぎ取られでもしたかのように
無くなり、首から血が噴き出していた。
一瞬、リュウの異能かとも思ったが、恐らくこの高さまで彼の異能は届かない。
そもそも、視認するもの難しい。
私と間違った可能性もあるけど、恐らくは”あの人”と呼ばれる人物か。
それとも、まだ異能者がいるのか。
みことは、突然の現象ながらも冷静に分析し、そして
滅多にお目にかかることの無い、異能者の組織的犯行に対して
密かに、闘志を燃やし始めていた。
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