第3話 接触
一度病院から、小谷周平を安全な場所へつれて行く為、
一行は車でみことの育った場所を目指すことにした。
移動中、小谷周平に襲撃事件についての質問と自身の覚えている事や出自、
宗教へ入った理由などをみことは、お構いなしに聞いていた。
それも、これから彼をどの程度の期間護衛、どんな相手がいるかわからない為、
みことは少しでも情報が欲しかったからではあるのだけれど。
「みことさん、その辺にしたほうがよろしいかと」と、
運転手から言われみことは、はっとさせられた。
小谷周平はまた、事件後目覚めてかさほど時間がたっていないため、
負担をかけ過ぎたかと思ったのだが。
「いえ、これ位の拷問なら大丈夫です」
と、半分引きつりながら笑っていた。
拷問?そうか私は気づかぬうちに彼を尋問の様に問い詰め、
時に睨みつけ、時に殺意を込めていたようだ。
まぁ、私に守られる幸運があるのだから、それ位の代償はと。
くだらないことを考えていると車内に携帯の着信音が鳴り響いた。
「出ても」
「えぇ」
と短いやり取りのあと、近くに車を停めてか、
運転席を出て彼は電話を始めた。
用件はあまり長くはないようであったが、
一度車から離れ我々に聞こえないように
距離をとっていた。
「なんの連絡ですかね」
そんなこと、小谷周平には関係無いのだけれど
沈黙に耐えられないのか、聞いてきた。
「さぁ?良い知らせなら歓迎だけど。」
と、如何にもフラグ立てのような返答をして
帰りを待っていた。
「遅くなりました。」
そう言って彼は、小脇にビニール袋を抱えて買えてきた。
「どうぞ。」
と差出された飲み物を手にとり
ありがとうと軽く返す。
気遣いは嬉しが今は。
「それで、用件は。」
「はい、幸か不幸か、ここの近くで新たな
被害者が。」
そうか。
でも、これは好機かもしれない。
小谷周平を連れて犯行現場へ赴くのは
リスクはあるけど、どの道何れは。
彼も何かしらの危険にまきこまれるだろう。
それならむしろ、早い方がいいかもしれない。
自分でも鬼畜だと思いながらも。
「一度現場へ。」
とみことは短く行き先の変更を告げた。
何か、私たちのプラスになる情報があるかもしれないと
考えたみことは、このまま、新しい犯行現場へ
向かうように指示をだした。
この判断が後に、自身の苦労を跳ね上げる結果になるとも知らずに。
三人は一度行き先を変更して、今しがた
連絡の入った犯行現場へ向かう。
状況は定かでは無いが、今回も痕跡のない
絞殺死体のようで、特に犯行を決してずける
要素は見当たらないようだ。
みことは、事前に渡されたのは資料を思い出しながら
現場で起きた事を、頭の中で推考し少しの違和感も見逃さないよう、
集中力を、高めていった。
みことのスイッチの切り替わりを同乗者の二人も感じ取ったのか車内は、
三人が乗車しているとは思えないほどに静まり返っていた。
「もう直ぐ、到着します。」の声と同時に
みことの目に、遠巻きではあるがパトカーなど
緊急車両の存在が見て取れていた。
現場では多くの警察関係者が現場保全に全力を上げてくれていた。
この手の事件は、彼らの管轄外にはなるけど
協力が無ければ成り立たない。
昔は、そうではなかったらしいが。
そのおかげで、人払いなども完了しており現場確認をじっくり行うことが出来る。
遺体にかかっている、ブルーシートをめくり遺体状況を確認する。
「鑑識の方、遺体の状況を教えてもらえる」
みことは、鑑識からの説明を受け、目の前の遺体に目をやり自分での
状況を確認する。
確かに、何者かによって確実に殺害されているが凶器などの物証は
認められない。
今までと同じように、指紋などの証拠も発見はされていない状況だった。
みことは変更現場をグルリと見渡し何か、ヒントになるものは無いか
注意を払い観察していた。
そんな中、ふと、みことが横を見ると小谷周平はかなり緊張した面持ちで、
現場を見つめてたいた。
無理もない。
いきなり、連れて来られた場所な殺人現場なんて
自分なら絶対に嫌だ。とみことは心の中で思いながら、
小谷周平に「大丈夫よ。安心して」と声をかけた。
小谷周平が返答をしようとした時、かすかに、うめき声が聞こえた。
みことが、声のする方に目をやる。
そこは、ブルーシートにかけられた遺体がある場所だった。
ブルーシートへ駆け寄りみことは、再びシートをめくりあげると
そこには、先程確かに死亡確認をした男性が息を吹き返していたのだった。
「大丈夫ですか?」
と警察関係者が声をかける。
男性は小さく頷いた。
なぜ?
死者が蘇生したの。
もしかしたら元々死んではいなかった?
だとしたら、この犯行自体が...と思考していると。
みこと達の後方から”ドッカーン”と何かがぶつかった
鈍い音が響き咄嗟にみことが後ろを振り向くと。
「木崎ィィィィィィ」
そこには、運転手を務めていた木崎が何かによって宙吊りになっていた。
先程まで冷静だった、みことが叫んだのにたじろぎながら、
小谷周平も後ろを振り返る。
絶句している小谷周平をよそに、みことは
木崎の奥にいる人物へ銃口をむけていた。
「やはり、異能者か。」
「せいかぁ―い」と緩い声が聞こえて来た。
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