第24話 発動条件はなに?

 霧崎みことは、初めに小谷周平を迎えに行った

病院のベッドで目を覚ました。 


 研究所で小谷周平の過去や異能の特異性について

ひとしきり話をしていたのだがどうやら、途中で気を失ってしまったようだ。


寝ている間に少し昔の懐かしい夢を見ていた気がする。


 死者蘇生の異能に関しては、情報が少ない為

自分の身体に何が起こっているのかはよくわかっていないが。


それに、身体が以前にもまして馴染んでいる事は間違いない。


研究所で少し話はしたが、今の状態なら、”置換”の異能も

確実に使用可能だ。


いや、既に使用している。


研究所の地下シェルターでの高輪真との戦闘に

蘇生後の最終局面でみことは確かに”置換”の異能を

使用し彼女を撃退した。


まだ、まともに使用できるようになって日が浅いため

色々と試す必要はあるのだけれど、それは小谷周平の

異能の実験と兼ねて行えばさして時間を掛けずにわかるだろう。


 特に、”置換”でどうやって高輪真の腕に傷を負わせたのかは

正直、みこと自身も良くわかっていなかった。


恐らくの可能性は考えられるが。


それは、実証をしてみないと何とも言えない。


ただ、かなり強力な異能であることには違いはない。


そんな事を、寝起きの頭で考えているときに

ドアがノックされた。


「どうぞ」

と、ノックして来た人物を病室へ招き入れる。


「おはようございます。みことさん」

「ご気分はいかがですか」

そこには、木崎とその後ろに小谷周平が立っていた。


どうやら、みことは皆で話ている途中で電池が

切れたように倒れてしまったらしい。


そして、そのまま研究所へドクターヘリを飛ばしてもらい

緊急搬送。


異能者収容可能なこの病院で寝ていたようだ。


「私どれくらい寝てたの?」

みことは、感覚的にはそんなに時間は経っていないように

感じたが、なんとなく訪ねてみた。


「3日間です」


木崎は軽く返す。

「三日?」

そんなに寝ていたのか。


通りで、点滴の管が刺さり腕から何かしらの

液体が体へ送られているし、気づいたらお腹も

かなり空いている気がする。


「本当に大丈夫ですか?」

小谷周平はかなり心配そうにして訪ねて来た。

それもそうか。


自身の異能で復活しても、もしかしたら、異能が完全ではなく、

蘇生に失敗している。


その可能性も考えられたのだろう。


彼の顔もかなり疲れており、目の周りはクマが出来ている。

私が倒れてからあまり寝れていないのだろう。


「大丈夫よ。少し疲れてたんだと思うから」

それに、一度死んでから、蘇生し身体も休息を

必要としていたのだろう。


身体の調子も悪くないし、頭も冴えている。


「みことさん、申し訳ないのですが、一度精密検査をお願いします」

「政府からも、研究所からも正式に要請が来てますので」

木崎の伝える事はもっともだろう。


 戦力のみことの身体の状態の確認と蘇生した人間の前後で

恐らくデータを取りたいのだろう。


「わかったわ。いつから検査?」


「みことさんが目覚めてから、翌日に出来るように準備が」

まあ、検査と言っても、定期的に何度も受けているし、逆に

起きて直ぐに実施でなくて少し驚いているくらいだ。


そうしたら、少し時間はある訳か。


「彼の検査は実施したの?」


小谷周平の方を向いてみことはおもむろに尋ねた。


そう、彼の異能の調査はどうなっているの

だろうか。


「はい、一度研究所で行ったのですがなかなか、再現しなくて」


「周平さん自身の感じはどう?」

みことは命の恩人でもあるので今までと少し違い

下の名前で、どことなく木崎や所長と同じトーンで話しかけた。


「多分、出来るとは思うんですが、発現の条件がいまいち分からなくて」


きっと彼が、研究所などで、うまくいかなかったのは

過去の発動がかなり危機的状況であった為、通常時での

発動やその力加減が分からないためだろう。


「まずは、発動条件の検証ね」

誰かに生贄になってもらうしかない。


「嫌ですよ、私は」

木崎は何か嫌な空気を感じ取ったのだろう。


みことの考えを読んだかのように

口に出して拒否していた。


なにか方法はないだろうか。


研究所では、動物の蘇生を実験として

なんどか行ったらしいが、動物の蘇生には

至らなかった。


 動物もその為に命を奪った訳では無く実験の過程で

致し方なくなくなってしまった動物たちを使用し

蘇生実験を試みていた。


だが、結果は振るわなかった。


 もう一度、彼の異能の発動時をあの場にいた人たちに

聞く必要がありそうだ。


「そういえば、みことさんを蘇生したとき、傷とかか最初に

 治ってから、心臓が動き出しました」


小谷周平は異能発動時を振り返りそう伝えて来た。


いきなり、復活したのではなく、徐々に治ってい行ったのか。

もしかすると彼の異能の本質は...


「わかりました、いくつか試して見ましょう」


みことは、再び木崎の方へ眼をやり何か思いついた顔を

見せる。


木崎はその目を見て嫌な感覚の襲われる。

完全に実験に使われるとそう思ったい部屋を

後に使用かと考えたが時は既に遅く。


「じゃ、木崎。腕出して。」

これはもう逃げられない。木崎はそう感じながら

渋々自らの腕を差し出した。


万が一の最悪の事態を想定して、利き腕とは反対の

左腕を差し出す木崎。


「賢明ね。」

その、木崎の行動を見てみことは、かなり冷静に

返答を返した。


じゃ、始めるわとみことは言いながら、

自らの異能を使用して刃物を創造した。


木崎はそれを見て、改めて最悪はと自ら差し出した

左腕の犠牲を覚悟したのだった。


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