第23話 欲しがる理由

 高輪真タカナワシンは薄暗い部屋に置かれている

ソファーに腰をおろす。


傍らにはリュウが佇み、ボスからの次の

言葉を待つ。


「二人やられたわね」

つばさと檜山のことだろう。

檜山は泥人形の異能者だ。


「はい」

リュウは短く返事をした。


高輪真タカナワシンは自分から切り出しておきながら

二人の存在など意に介していないようすで話を続ける。


「では、予定通りに事を進めましょうか」

彼をこの手中に納めるために」


高輪真タカナワシンの次なる計画が動き出す。


全ては小谷周平を手に入れるため。

正確には彼の異能力を、だ。


彼、小谷周平と出会えた事はまさに高輪真タカナワシンにとって暁光だった。


当時の高輪真タカナワシンはまだ、異能に目覚めたばかり

これからの目標も無く、異能の使い方もまだわかっていなかった。


そんな時、小谷周平に出会った。


また、小谷周平は高校生で特別な予備学校に通っていたときに出会い、彼の魂に触れた。


それは、とても心地よく。


会うたびに私は彼の魂に触れることを

日課にしていた。


魂に触れることは、高輪真タカナワシンの異能の一部

であり、当時の彼女も扱える力であった。


そして異能によって、魂を触られたからと言って

小谷周平にバレる事が無かった。


ほどなくして、高輪真タカナワシンは自分が主催する

生き方セミナーのようなものを始めていた。


これは、人の魂に触れその願いから

人を導くアドバイスをしようと小谷周平の魂に

触れてから思いついたことだった。


費用は生活出来るギリギリに抑えて、

予備学校と並行して進めていった。


ある日、彼女は多くの魂に触れる中

ありことに気づいてしまった。


そう。


人の願いの根底にあるのは己の利己的な部分のみで

満たされている事が多く。


表面的に良い魂でも探っていくと、

より深いところでは皆、汚れきたない願いで

満たされている。


高輪真タカナワシンは、もしや小谷周平もそうではないかと

疑い。


彼の魂の深層部分にまで手を伸ばしてみた。


 そうしたら、そこはどこまで深く探っても

全く澱んだ部分が無く美しいままであった。


この時から、高輪真タカナワシンは彼が欲しいと

考えるようになっていった。


淀みのないその魂は彼以外ありえない。


そんな彼が異能に目覚めたならどんな

力を開放してくれるのだろうか。


そしてそれが、強い絶望の果てであれば。


異能者の覚醒は本人の願望と魂の願望にプラスして、

願望が生まれる際の周囲環境にも影響されることが

高輪真タカナワシンにはわかっていた。



 特に、殺戮系の異能は絶望の淵にあるときに

目覚めることが多い。


仮にその人物の願望が人類救済であってもだ。


そんなは状況に追いやられた時、

彼の魂は、彼の願望はどのような、異能を

開花させてくれるのか。


それが見たくて堪らなくなってた。


そして、彼の入信をきっかけに、彼を

絶望させる計画を実行していく。


全ては彼を。


そして、あまりにも美しい彼の魂から生まる

異能が欲しいがために。


「真様、どこかご気分でもすぐれませんか?」

リュウは珍しくぼーとしている高輪真を

見て心配して声をかけた。


「いえ、大丈夫です。」

「すこし、昔を思い出していただけですので」


高輪真タカナワシンはそう言って、再び考え込んでいた。


これからどうするか。


みことが、まさかの復活を遂げた為。

計画の修正が必要になってきた。


霧崎みことの事は色々調べ上げ対抗したが、

小谷周平の異能がまさか死者蘇生とは。


不死身の人間になっている可能性はあったが

いや、恐らくは自分が死んでも蘇生可能だろうが。


まさか他者をも蘇生させる事が出来るとは、流石の

高輪真タカナワシンも予想していなかった。


高輪真タカナワシンは、小谷周平の経験と

自身が起こした事件から他者への絶対殺戮や超速再生といった類の異能が出現するものと考えていた。


まぁ、小谷周平がどのような異能を出現していたとしても

彼を欲しがる事には変わりはないのだが。


そして、彼。


 小谷周平の異能が死者を蘇生出来ると分かった今

彼を手に入れる要素は強くなるばかりであった。


さて、小谷周平は後何回蘇生可能か。


それさえ分かってしまえば、小谷周平の異能さえ

さして脅威ではないと高輪真≪タカナワシン≫は考えていた。


そう。


彼女の異能。


”解放”の異能の前では。


 小谷周平を守るであろう霧崎みこと達を葬り

私は救世主メシアをこの手中に納める。


全ては...


「リュウそれでは、次の計画に」


高輪真がそう、リュウに伝えると彼は

部屋を出て行く。


次の計画。


かの救世主メシアを自分のものにするには

まずは邪魔者を始末しそして、その後ゆっくりと。


彼を再び洗脳して行けば良い話。


さぁ、再び始めましょう。


今度は、無事じゃすまないわよ。

霧崎みことさん。


高輪真はまたしても、不敵な笑みを浮かべながら

次なる計画へ動き始める。


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