第28話 宣戦布告

 みことをはじめとする4人は小谷周平の測定が完了してから

病院の食堂で食事をとりながら、次の動きに対して話あっていた。


「それで、これからどうするかね。みこと君」

所長の問いかけに対してみことも考え込んでいる様子で

中々、次の行動についての案が出てこない状況のようだ。


小谷周平の異能は本来想定されていたものよりかなり強力な

異能力の可能性が非常に高い為、このまま高輪真を捜索して

直接、反撃に出るのは得策とは言えないのでないか。


 基本的な路線は決まりそうだが、具体的な行動が考え付かない

そんな状態の話し合いが続いていた。


 小谷周平が狙われている以上、彼を同行させて高輪真へ攻め入るのは

効率は良いが、まだ彼女を倒すための具体的な作戦が無い状態では

かなり危険である事は、百も承知であった。


その為、万が一の事態になる事を想定しなければならない為

中々行動案が出てこないという、ジレンマに陥っていた。


「他の政府側の異能者は?どうなってますか?」

みことは、以前の襲撃の際に依頼した応援について確認をする。


「研究所があんな状態になってしまったからね。一度取り止めになってしまって。」

「そうですか。」

みことは要請していた、応援が期待出来ない事に落胆の表情を浮かべていた。


新たな異能者無しで彼を守り切るには今のメンバーではかなり辛い状況が

容易に想像出来る為、気を落とすのも無理はなかった。


 それほどまでに、高輪真タカナワシンの異能は強力であり作戦無しに

突っ込めば、帰り打ちに会う可能性が高く、最悪は全滅の上、小谷周平が彼女の

手中に落ちてしまう。


政府はこの状況に対して追加策を出さず救援もなしで何とかしろと言うのか。

みことはイライラしながら状況を整理しようとしていた。


その時、BGM替わりに着けていたテレビより

若干のノイズと共に、先の戦闘で嫌と言う程聞いた声が

スピーカーから聞こえて来た。


「高輪真≪タカナワシン≫一体どうなてるの?」

みことは、現状把握が追い付かず混乱しているようすであった。


みこと以外のメンバーもこの状況には追い付いておらずテレビに

釘付けに成っている。


「皆さん初めまして、私は高輪真タカナワシンと申します。」

高輪真は非常に落ち着いた声で話始めた。


 始めた彼女を見る人間からしたら彼女の容姿と相まってその声は

万人を虜に出来るレベルであろう。


「いきなりで申し訳ないんですが、これから都民全員の魂を救済し

 肉体からの解放の義を執り行うことに致しました。」

高輪真タカナワシンからは突拍子も無い言葉が飛び出した。


このテレビを見ている一般都民はなにが始まっているのか分からず。

何かしらの番宣、映画の広告程度としか捉えられていなかった。


「では、手始めに。魂の解放をご覧いただきましょう」

彼女がそう告げると。


テレビを見ていた数千人いや数万人かもしれない

人物が次々に倒れて行った。


「それでは皆さん、終末まで良い日々を。」


都内では、次々の倒れる者たちをテレビや雑誌の取材者たちが

こぞって取り上げている。


この状況は一体何なのか。


みこと達も、高輪真タカナワシンの暴挙に対して

数日間何も出来ない事を悔やんでいた。


この数日、みこと達は何も出来ず。

高輪真はあの戦闘以降用意周到に次の計画を進めていたのだろう。


そして、彼女の計画は誰にも気づかれる事なく実行の

段階まで来たようだ。


 そして、東京都民人質にとり、宣戦布告を行ってきた。

小谷周平と東京都民の命を交換せよと彼女は言っている。


直接的な表現こそなかったが、彼女の狙いは間違えなく

小谷周平であり、恐らく彼の異能力の本質にも気づいている

と考えられた。


高輪真タカナワシンと小谷周平の異能力は共に魂そのものへ影響を

及ぼす為、相性は良いのだと思われる。


これでもう、のんびり作戦練っている時間は無くなった。

このままでは、日に日に被害者が増え続けるだけである。


「まずは高輪真タカナワシンの居場所の特定が急務ね。」

みことは、いきなりの高輪真タカナワシンの宣戦布告に対して

当然といえば当然ではあるが、居場所を特定し自ら高輪真に

対して、攻撃仕掛ける事を提案した。


「居場所を特定した後はどうするのかね」

工藤所長はやはり、高輪真タカナワシンの異能力がどんなものかはっきりして

居ない現状を不安視しており、前回の研究所襲撃と同様の結果に

なる可能性を示唆する。


確かに、高輪真の異能力は詳細が不明であり、どのようにして

倒すべきかはここにいるメンバーにはわかっていない。


ただ、みことに自身の考えは違っていた。

「例え、相手の異能が詳細不明でも大丈夫。勝つ算段は付けているから」


みことは、三人に対して自分と高輪真が戦闘した際の経験から

彼女打破する方法を説明した。


三人はみことに説明した方法ならば確かに、攻略可能かもしれないと

考えてたが。


「危険すぎませんか?」

小谷周平は提案された方法の危険性について心配していた。


みことが提案した、攻略方法は確かに成功すれば確実に

高輪真であっても倒す事は可能であろうと思われるが。


失敗した際のリスクが高すぎるように感じられる。

それは、まさしく自らの命を懸けて行う戦法であった為

よけいだろう。

いや、正直作戦と言えるかも怪しい。


「大丈夫って言っているでしょ。

 そんなに心配しないで、必ず勝つから」

みことは、皆の心配をよそに自身有り気なもの言いで

強引に皆を納得させ、高輪真タカナワシンの居場所特定を

急ぐように指示を出し、動き始めた。






 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る