第27話 スピリットスコア
みことは、通常の身体測定等の検査を一通り終え
病院の地下で待機している。
小谷周平を待っているのもあるが、ここへ来るのは
なぜか一人の方が良かった。
過去、この病院で長い時間を過ごし心臓移植をされ
研究所で生活するようになるまで幾度となく通った
場所ではあるのだが、みこと自身も知らず知らずの
内に、この場所へは一人で訪れるれていた。
それがなぜかは、みこと自身も分かっていないが
なぜか一人で来る方が落ち着く感じがしていた。
そして、当時からだいたいの場合、職員や木崎達が後からみことを
追ってやってくるのが恒例行事になっていた。
今回もその通例通りの形となり、工藤所長を先頭に
木崎、小谷周平、病院職員と続いて地下へやってきた。
「さぁ、始めましょうか。
異能の検査を。」
みことは、そう告げると職員達は機敏に準備に取り掛かり
各自持ち場に着いて行く。
この地下の闘技場は異能者専用の検査・測定が出来る作りに
成っており、使用された異能力を数値化し測定する事が
可能と成っている。
異能を使用しその放出量から魂の強度を測定し
異能力を測定可能な単位へ換算することにより数値での
測定を可能としている。
その測定単位はスピリットスコアと言い。
日本政府や研究所内ではSS《スピリットスコア》と表記される。
みことのSS《スピリットスコア》前回の測定時800SSであった。
ちなみに所長のSSは500SS。
異能者の平均値は300SSとみことは実に平均の2倍近い数値を
記録している。
「周平さん、何してるんですか。
早くおりておりて来て下さい。」
みことに促され小谷周平は渋々闘技場への階段を下っていく。
正直、彼としては闘技場でみことと戦闘をする羽目になるとは
微塵も思っていなかった。
戦闘向きの異能力には見えないが小谷周平の異能の特性上
研究所での測定より、ここでみこと自身と対決した方が
より正確に測定出来ると考えての行動であった。
みことは、闘技場へおりて来た小谷周平に対して、
いつものように大鎌を出現させて構える。
「霧崎みことのSS値330」
と職員の声がマイクを通して聞こえてくる。
SS《スピリットスコア》は異能者の魂に反応して測定される為
みことの場合出現させた程度では、そこまで数値は高くは
成らない。
みことは、小谷周平に向かって走りだし目の前まで来ると
大鎌を大きく振りかぶり小谷周平目掛けて切り裂いた。
周平はギリギリの所でこれを何とか交わしていた。
「ほら、反撃しないと死んじゃうわよ」
みことは、それは楽しそうに小谷周平は追い打ちをかけるように
攻撃を仕掛ける。
小谷周平はみことの攻撃を何とか回避しているものの
じりじりと追い詰められていく。
周平の手には、彼の事を考えて所長から拳銃が手渡されたいた。
「その拳銃はなに?ただの飾りかしら」
みことは小谷周平を挑発しながら、攻撃を繰り出す。
小谷周平は何とか、攻撃を回避しこのままではと思い立ち
拳銃をみことへ構えて発砲した。
みことは、即座に壁を作り出し弾丸をガード。
小谷周平の攻撃を見事に防ぐ。
「霧崎みことSS値上昇、520」
マイクからは現在の戦闘によりテンションが高くなってきたおかげか
順調にSS値は上昇していた。
「小谷さんの方はどうなの?」
みことは、大声を出して職員へ尋ねるも返答は芳しくなく
戦闘開始からモニターでチェックはしているものの
数値は測定されず。
「小谷周平のSS値はゼロ」
との声がみこと達へ届く。
危機的状況に成れば数値は何かしら反応すると踏んでいた
のだが、まさかゼロとは流石に予想外ではあった。
昨日のように木崎の腕を切るような真似をすれば多少の
数値を見て取る事は出来るだろうが、上昇曲線もどのようになるかを
見てみたいと所長やみことは考えていた。
「小谷さん、昨日木崎の腕を治した異能を攻撃に
転用する事は可能ですか?」
「正直分からないです。」
小谷周平はみことに対して正直に答えた。
それならば、命の危機を認識させ異能力の発動を促す他に方法は
無いとみことは考えていた。
「では、ここからは本気で行くわよ。死なないでね」
みことは、そう告げると小谷周平の真後ろに黒い球体を
出現させ、その場所へ一瞬で移動した。
小谷周平の目の前ではみことが消えそこには、黒い球体が
瞬時に出現したように見える。
そうこれが、みことが今まで使えなかった異能”置換”の能力で
物体と自分自身を入れ替えたりする頃が可能。
これにより、相手には瞬間移動したように感じられるだろう。
小谷周平は一連の流れに何が起こったのか分からずに思考停止していた。
そして、自分の首には大鎌の刃が迫っておりまさに命の危機に
瀕する状況にある。
その瞬間、眩い光が小谷周平から発せられた。
そこで、みことは大鎌の動きを止め職員にアイコンタクトを
送る。
「小谷周平のSS値2000。歴代最高値です。」
みことは小谷周平のSS値を聞いてから大鎌を収めた。
「お疲れ様です。これで周平さんの測定は終了となります」
なんとか、命を繋いだ小谷周平は安堵からかその場にへたり込んでしまった。
「それで、私の数値の変化はどうなの?」
みことの問いかけに対して、職員はマイクを通して
みことの数値を伝える。
「みことさん、すみません。図り間違えかもしれないのですが
瞬間的な数値は3000SSなのですが。」
「???」
みことや一同ハテナが並ぶ。
歴代最高は小谷周平ではないのか。
「いえ、一瞬だけ数値が跳ね上がりすぐに1200SSで安定しましたので
3000SSは二人の数値が混ざってしまった可能性があります。」
そうか、それは残念がもう少しで歴代最高になれたのに。
みことは少し悔しそうな顔をしながら一連の異能測定を終えたのであった。
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