第51話 母の願い
談笑する皆の中でみこと
そして、小型化した
懐かしい声が響いた。
―――これからは、幸せに、その人を大切にして生きてね
愛しの我が子よ―――
母は今あなたが見ている景色も、抱いている感情も、そして生涯大切と思える人間も最後まで見つけられなかった。
いや、正確にはいたのだがが裏切られた。
それでも、私は人を信じたかった。
いつの日かきっと、化物としてではなく一人の意思ある生物として人間と分かりあえる日が来ると、そう願っていた。
それは、自分の勝手な願いなのだから、私1人がいだいていれば良かったのだろう。
例え、人に裏切られ、そして死を迎える事に成ってしまったとしても、母1人が抱いていれば良かったのだ。
でも、私はあなたに母だけが抱いていれば良かった願いを押し付けてしまった。
死する瞬間、私は最後まで願いを捨てきれなかったのだ。
いっそ怨んでしまえば良かったものを、死の瞬間まで、人間を理解し、私を理解されそして共に歩む事が出来る人間が現れると。
そう信じ続けてしまった。
いや、死んでしまった後であっても、未練たらしく母は人間を信じ続けていたのだ。
でも、それが、愛しの我が子を縛り、苦悩させてしまった事を母は後悔した。
ずっと、母が死んでからの数百年間、ずっと。
あの子を縛ってしまった、罪悪感だけが母の中に残り続けていたのだ。
それでも、あなたは、恨むこと無く母の願いを信じ、母の為に人間を信じようとし続け、挙句の果てには母である私より酷い状態と成ってしまった。
惨い状態の我が子を数百年と見続け、どうすることも出来ない状況に
なんとも言い表せない歯がゆさが大きくなり、母もまた苦悩し続けていた。
それでも、人間への思いと何よりも我が子への信頼は消える事は無く
母は、自分を信じる我が子を見続ける事で何とか耐え続ける事が出来ていた。
そして今、数百年間に渡る一人の母親の願いは成就の時を迎える。
霧崎みこと、あなたが現れた時、私はまさに天にも昇る思いだった。
彼女がこの地を訪れたことは、まさに僥倖で私はこの上ない程の喜びに溢れていた。
”彼女であれば、あの子を救えるかもしれない”
そんな、感情で胸がいっぱいになった。
もう、私には彼女へ頼る以外に道はない。
そして、私は一つの懸けに出た。
いくら霊獣とは言っても肉体的な死のあと数百年も霊体で活動していれば限界は来る。
もし、彼女が想像と違った魂の持ち主であれば、次までは私もそして、あの子ももう持つまい。
だから、これが最後の賭けだった。
そして―――。
「ここから、先はもう知っているわね」
「私の時は叶わなかったけど、あなたの願いが叶いそうで良かったわ」
そう、母はあなたに、想像出来ないほどの幸せを知って欲しいだけ。
でも、それは凄く難しく、一人では決して叶える事が出来ない願いだ。
「彼女と共に歩くのであれば、きっとそれは叶うと信じてるわ
だから、これからは、その人を愛して、守り通してね。愛しのわが子よ」
きっと、彼女と共にならその願いも成就出来るだろう。
―――ありがとう全てはあなたのおかげよ
そして、あの子をよろしくね、みことさん―――
「みこと、どうかしたか、先から固まっているぞ」
みことは先ほどから動かなく何か考え事でもしているのか
ぼーっとしていた。
「いえ、ただ、声が聞こえたような気がして」
みことは、何か傍で話し声が聞こえてきている感じがしていた。
「そうか、気のせい程度なら我もあるぞ、あれは母様の声だ」
「我とお前が同じものを聞いていたのならだがな」
「そっか、きっと同じよ、だってとっても優しくて、温かい声だもの」
「それはそうだろう、我の母様だからな」
みこともそんな
「ねぇ、思ったんだけど、
「我が子供だと?霊獣として三百年は生きてるぞ」
「そう?だって先から―――」
みことは、
ただ、その温かな声の主は、みことへも感謝とそしてこれから
みことの聞いたその声は、どことなく三鷹アキハの声に似ている感じがした。
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