第18話 周平の過去
小谷周平は高輪真の襲撃後しばらく研究所で
体を休める事に成っていた。
もちろん、みことと木崎も一緒にだ。
休めるとは言っても一日中寝ているわけにも行かず
出来る範囲ではあるが、研究所の復旧作業も
手伝いながら数日が過ぎて行った。
「やっぱり話したほうがいいよな」
そう呟き、今回の首謀者である高輪真と自分の関係は
所長や木崎、みことへは正直に話した方が良いだろうと
考えていた。
今回の事件の概要はみこと達も知っているから、
自分と高輪真の関係も大方は知っていると思うとは考えて
いるものの。
一度なぜそうなったかとか、色々話しておいた方が、
少しは、今後の戦いに役立つかもしれない。
小谷周平の呼びかけにより、修復途中の所長室で
夕食後に彼の話を一同は聞く事となった。
「それで話ってなにかしら?」
「はい。彼女高輪真との関係についてお話したほうが
良いかと思いまして。」
小谷周平は話がデリケートな感じになる可能性も考えて
少し他人行儀ではあるが丁寧な言い方で話始めた。
小谷周平は、昔から引っ込み思案であまり周囲と仲良く
やって行くのが苦手だった。
学校へ行ってもいつも一人で机の前に座り
大人しく授業を聞いて、休み時間は寝たフリか
絵を描いたりして、過ごしていました。
それでも、小谷周平自身はそれなりに幸せだった。
特に波風の無い、凪のような生活だったけど
それは、静かで落ち着いていて。魅力的な生活でもあった。
少し状況が変わって来たのは、高校生になってから。
相変わらず凪のような生活をしていたのだけれど
そんな大人しい性格もあってか、急に蹴らたりと
暴力を振るわれる事が増えてきた。
小谷周平は、この静かな生活が守られれば
それで良かったのだけれど段々とエスカレートする
虐めと勉強にも中々着いて行けなくなったのとが重なって。
そして、彼自身は徐々に不登校になっていた。
ちょうどその頃だった。
彼女、高輪真と出会ったのは。
小谷周平は当時不登校生を集めて授業をしている
団体に親からの勧めで通う事になった。
そこは、自分と同じような経験をした同年代ばかりで
案外落ち着く場所であった。
そこへ、特別講師として彼女。
高輪真はやって来た。
始めは大人になってからの仕事や僕らが
いかに普通か。
いじめられる言われがないことなどを話していて。
月に2回位小谷周平の通っていたセンターへやってきては
講義をしていた。
そして、1年程度の時間が過ぎた頃小谷周平は
自分の人生をやり直すために、今置かれている
環境から解放されたいと願うようになって行きました。
「解放?」
みことは、不意に尋ねてしまった。
話の腰を折るつもりはなかったのだが。
高輪真は異能発動の際に何度かこの言葉を使っていたから耳に残っていた。
「はい」
解放それは、小谷周平もまた、良く聞く単語となった。
初めて解放の言葉を高輪真から聞いてからは
物事の進み方が小谷周平には非常に早く感じられていた。
状況や環境からの解放はやがてこの肉体からの解放。
魂の解放へと考えや思いのレベルが上がるまでさほど
時間は掛からなかった。
そして、魂の解放を考える頃にはに小谷周平は高輪真の主宰する
宗教へ入信しており如何にして肉体と魂を解放するかにのめり込んで
いっていた。
今思えば、彼女が教育センターへ来ていたのも信者を増やすためかも知れない。
もしかしたら、そこにいる先生たちは既に信者だった可能性もある。
自分がそこに居たのはたまたまだろうが、
彼女との出会いは必然かのようだった。
足しげく通ううちに、とても熱心な信者と思われたのか、
僕は彼女に認知をされるようになり、
時々、集会の始まる前に話しかけもらうことも
増えてきた。
周りの他の信者の人からは名前を呼ばれて
高輪真から話しかけられる事を羨ましがられたり
その方法は?と聞かれる事さえあった。
高輪真から話しかけられる頻度は日に日に増して行き集会の
前後は当たり前の光景と呼べるほどにまで
頻度が高きなっていた。
そんな、ある日高輪真に個人的に呼ばれ
独自の講義?を受けることになる。
その講義は、高輪真から魂の願いを聞く方法を
伝授してもらうと言うものであった。
「ちょっと待って。それって」
みことは、今の言葉に違和感と強い興味を
惹かれて聞きかえした。
「はい。今思えば、あれは魂による願望の具現化」
「高輪真は異能の発現方法を知っている事に」
その話を聞いてみことは、少し暗い顔を
しているようにみえた。
もし、仮に高輪真が願望の具現化方法を知っているなら
めぼしい人間に行い、任意に異能者を得ることが、出来てしまう。
それがもし可能であり、確立されているなら
由々しき事態になる。
「多分大丈夫ですよ。自分も特になにもなかったですし」
いや、どうだろうか。
あの、死者蘇生の異能は小谷周平自信で発現したのか、
それとも、高輪真の講義が少なくとも影響しているのか。
また、彼女に付従う異能者も。
やはり、あの宗教団体と高輪真については
改めて色々調査する必要がありそうだ。
「ところで、僕の異能ってそんなに凄いんですか?」
そうだった。
彼にはそのことを話さなければならない。
いかに突飛で人智を超えた異能なのかを。
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