第9話 3人の日常
朝、みことが起床するとリビングからいい匂いがしてきた。
リビングに入ると、そこには木崎がキッチンに立っており、朝食を
作ってくれていた。
「おはようございます」
「おはよう、彼は?」
「まだ、寝てますね。」
そうれもそうか。まぁ自然と起きるまでそっとしておこう。
それにしても、豪華な朝食が並んでいる。
スクランブルエッグにソーセージ、マッシュポテトにこんがり焼けたトースト。
オレンジジュースとホテルのバイキングで子供が欲しがりそうなメニュー
綺麗に盛り付けられていた。
「相変わらず、おいしそうね」
「ありがとうございます。」
「さあ、彼が起きる前に食べてしまいましょう。」
みことは、小谷周平が起きる前に食べてしまおうと悪だくみをする。
ここら辺は、16歳らしい彼女の一面だ。
彼女も異能が無ければ、普通に学校に通い女子高生として
日常を過ごしていることだろう。
みことと、木崎が朝食を食べ終わたあとに、小谷周平は眠たそうな
表情でリビングへ入ってきた。
「おはようございます」
「おはよう」
「あなたの朝食無いわよ」
えっ、起きてきて、いきなりか。
そんなぁと小谷周平はお決まりのリアクションをとり、一同の笑いを誘った。
さすがに可愛そうに思った木崎が、「うそです、ちゃんとありますよ」と
小谷周平用の朝食を差し出した。
小谷周平が朝食を食べるのを見ながら、みことはおもむろにPCを
立ち上げ始めた。
なにをするのかと思って二人はみことの方をみる。
「なに」
みことは、あまりに見られている事を不思議に思い尋ねた。
「いや、何するのかと思いまして」
小谷周平が尋ねると。
「学校の宿題よ」
学校か。
そうか、彼女は16歳だったか。
うん?学校行ってるのか?
「何?私が勉強しちゃ悪い?」
学校と行っても普通の学校ではない、研究所では定期的に
未成年の異能者向けの授業などが開かれていた。
一応、認可も受けている為、しっかり単位を取れば
高校卒業となる。
みことは、その異能の力と過去の実績から、実行部隊として早くから
現場に出て、事態に対処することが多いが、時間のある時には
授業を聴き、宿題もできる範囲で行っていた。
彼女はいたってまじめな生徒だ。
先生は基本、研究所の研究員や職員が担当する。
また、普通の学校と違い異能の使い方や異能者と非異能者の違い。
異能とはそもそも何か。
など異能に関する授業もある。
授業は各研究所で開かれており。
先生によってはオンラインで全研究所の全未成年者が集う授業もある。
また、みことも実践経験が豊富と言うことで授業を受け持ったことがある。
それも、かなり人気授業だ。
その年し、直近で解決した事件、異能者などの話を臨場感たっぴりに伝える為
異能の現場の大変さや、異能犯罪についてリアルに伝えてるため、皆真剣に聞き入っている。
みことは、この日はほぼ一日かけて宿題をやり終えていた。
木崎は買い出しや家の掃除、研究所との連絡、ニュースのチェック・時折
みことへの報告と相談を行ていた。
そして、小谷周平は朝食を食べた後は二度寝をし、昼食に木崎に起こされ
昼食を食べ終わり三度寝をかました。
「木崎、彼。」
「さすがに寝過ぎじゃない」
「疑いでも」
「いや、そうじゃなくて、何かするでしょ。普通」
「助けてもらってたらさ」
あぁ、ぐーたらしている小谷周平に対して嫌気がさしていたのか。
それは、今回ばかりは仕方がない気もするが。
普段の彼がどうかはわからないわけだし。
そうしたら、夕食は彼にお願いしましょうか。
木崎の提案にみことも乗った。
二人は料理は出来るし、最悪はどうにでもなる。
でも、果たして小谷はどうだろうか。
まずは、彼が起きるまで待つことにしよう。
そして、みことは再び宿題をし、木崎は本を読んだりしながら
数時間を過ごしていた。
正直、二人の体力は異常で、普通の人間なら小谷周平のように
一日眠るようになるだろう。
それを考えると、みことの判断は正しかった。
そして、小谷周平が起きて来たのは18時を回った頃だった。
「気持ちはわかるわ。でも」
「さすがに寝過ぎではないかしら」
そうみことに告げられた、小谷周平はハッとして時計を見る。
”18:05”
確かに寝過ぎだ。
すみませんと良いながら。
小谷周平はなにか、嫌な空気感を感じていた。
「そんな、寝坊助さんには、夕食をお願いすわ」
まじか。
小谷周平は寝ぼけながら、行きなり出された課題に固まってしまった。
正直、料理は全く出来ない。
一人暮らしも長いけれど、普段はコンビニで済ませているし、
二人のあんな凄い料理を見た後では、多少できる程度でも萎縮するだろう。
「いや、出来ないっす」
「は?」
「いえ。がんばります。」
小谷周平はみことの圧で、謝ることも、弁明も出来ず、
いそいそとキッチンへ向かった。
心配な木崎は遠巻きに見守ってくれていて、包丁の場所とか調味料の場所とかを
教えてくれていた。
みことは、ニヤニヤしながら見守っていた。
やるしかない。
そう、無駄に決意した小谷周平はちょうど見つけたパスタを使って料理を始めた。
まぁ、お世辞にも手際が良いとは言えないが彼なりに頑張っているようだ。
「どうぞ」
出来上がったパスタは、それなりにおいしそうだった。
どれどれと、味見をするようにみことがパスタを口にする。
まるで料理の審査をされているように、小谷周平はドキドキしながら
みことの口に入るパスタを応援し、一言目を。
「甘っぁい。なにこれ」
えっ、そんなんはずは。
「確かに、かなり甘いですね」
木崎も冷静に返す。
「あんた、砂糖入れたでしょ、しかも多過ぎ」
はぁ、まさかこんなベタな失敗をするなんて。
小谷周平は肩を落とし、みことは小谷をしかり、木崎はそんな二人を笑いながら
見て、夕食の作り直しを行っていた。
そんな、騒がしい夜も終わりを告げ。
30時間後、AM4:00。
「さぁ、行くわよ」
みことの号令から、一同は研究所を目指して再び移動を始めた。
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