第12話 予期せぬ事態

研究所への襲撃。


その報告を聞いた瞬間からみことの表情は一変し、

凛々しい戦闘モードへと切り替わっていた。


「状況は。」


そう、みことが告げると

銃火器を持った職員が「敵人数は2名、共に異能者。」


「壁を何かしらの方法で突破。現在一階のロビーにて交戦中」

と報を受ける。


「了解した」

一般職員は至急、裏階段から地下シェルターへ移動。


戦闘職員はインカムでの情報共有の徹底、一般職員の安全が

確保されるまでの足止め、迎撃を。


「木崎は、一般職員と小谷さんを連れて地下へ」


「所長、申し訳ありませんが、戦闘の手伝いをお願いします。」


そう、的確にこの場にいる全員に指示を出す。


気付くといつの間にかみことは黒いローブに包まれていた。

あれは、異能で作ったものだろうか。


そんな、事を考えていると、みことから。


「小谷さん、早き木崎に続いてシェルターへ」

と俺の方を振り向き伝えてきた瞬間。


なにかによって、みことの体は宙に浮き、

所長室の壁に激突した。


みことには、瞬時に状況を理解し、壁側に防御用の盾を出し

その盾と自分の間には衝撃吸収用の物体をジェルを作り出して、

衝撃を極限まで緩和していた。


「壁をすりにけて来たの?以外に厄介ね」


そう、告げるみことはの手にはすでに例の大鎌が握られており

十字に切り裂いた。


空を切っただけに思われた大鎌は刃のついている方だけを伸ばして

居たようで、みことの正面の壁事切り裂いた。


「いきなり失礼ね、リュウ。」


切られた壁が、落ち若干の埃が待っている中から、

フェイクの犯行現場で襲ってきた、リュウが顔を出す。


「やぁ、久しぶりだね。殺しにきたよ」


みことは臨戦態勢をとったまま、木崎へ早く

移動するように促す。


リュウも特にほかに気を留める事なく、みことしか見えていないようであった。


ただ、彼がここにいると言うことは、一階のロビーはどうなっているのだろうか。

一階では、2人の異能者と交戦中との報告と食い違う。


「所長、なにかおかしい気が。」


所長は、みことの言いたい事を理解したようで、最後で言い切る前に

任せなさい。と言わんばかりの表情で、自身の異能で小動物などを作りだし

研究所内の各所へ向かわせる。


本当に情報収集や調査にはうってつけの異能だと、

ここに来てみことは感心していた。


そして、一人人間の複製を作成して木崎の命令を聞くようにセットした。

所長はそのまま、室内から出て、一階の迎撃班の所へ応援に向かう。


所長が、前線に立つなんて、普通の組織ではあり得なだろう。

でも、ここは違う、所長は常に前線を意識して業務にあたっている。


今回のような有事の際は特にそうだ。


率先して、所長自らが動くので、職員もみな常に所長へ協力的だった。


「そんなに、周り気にして大丈夫?」


「えぇ、あなた程度なら」

みことは、リュウの挑発に挑発で返す。


この状況は芳しくは無いが、リュウの異能は一度見ているので

対処はさほど難しくはない。


そもそも、襲撃があった瞬間からリュウがいる可能性は考えていた。

その為のこのローブだ。


これは、特別性でかなりの時間を要して創造した代物で

耐火性、耐刃性、耐衝撃に優れている。


それを、形状記憶のように覚え、ほぼ自動で展開出来る

までに、仕上げたお気に入りだ。


先程の壁への衝突もローブのお陰で、一から盾を創造するのではなく

ローブを盾のようにし、その間にゲルを発生する方法で凌いでいた。


一から、盾を作っていたのでは間に合わなかっただろう。


「壁をすり抜けられるのは、想定外だったけど」

ほんとこれだけはびっくりした。


まさか、物体をすり抜ける事が付与されているとは思いもしなかった。


「最初は出来なかったんだけどね」

リュウは少し、自慢げに笑いながらそう話しかけて来た。


こいつ、意外にみ努力家なのかもしれない。


そこから、リュウとの戦闘は続いていく。

リュウの見えない攻撃は全身に纏ったローブを当たる瞬間に

高質化し伸縮自在の鎌で攻撃する。


たまに、前回のようにギロチンを出したり、新たに創造した

刃物を投げつけたりとバラエティーに富んだ攻撃と防御を繰り返し

少しずつリュウを追い詰めて行った。


「なんで、攻撃が当たらないんだよ」


リュウも中な当たらない攻撃にイライラしているようであった。


それでいい。


そもそも、みことの今の戦闘は時間稼ぎだ。


一般職員が全員、地下シェルターへ移動し安全が確保されるまでには

それなりの時間がかかる。


自分が移動しながら戦うと当然危険に晒される職員が出てくる為、

まずは一般職員の安全確保の為、敵を現在位置にて足止め。


その後、安全確保が取れた段階で本格的に迎撃を行う。


しばらく、硬直状態が続いている中、みことは作戦の概要を

頭で反芻しながら、安全が確保されるのを待っていた。


「一般職員の移動完了、OKですみことさん」


それは、木崎からの通信だった。

お互い、別行動となった場合を考えてインカムを用意しておいてよかった。


研究所内であれば、ほぼノータイムで通信可能だ。


まぁ、こちらの会話も丸聞こえなのだが。


「もう、終わりよ。」

そう、みことは告げ、本気の一撃をリュウにくらわす。


大鎌がリュウの見えない触手ごと一刀両断した。

かに思われた。


「危ないですよ、リュウ君」


次の瞬間、聞きなれない女性の声が聞こえた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る