第20話 みことの過去~前編~
いつ天井を見上げても、真っ白な景色があるだけで
なにひとつ、変化が無く退屈。
霧崎みことは、幼少期よりある病気により
ほとんどを病院のベッドで過ごしていた。
遊び盛りのみことにとってはこの病院での日々は
退屈なもので、ベッドに横たわり天井を見上げだけの日々に
飽きあきしていた。
時刻通りに来る定期検査を受け。
また、個室に戻り一日を終えて行く。
検査は毎日行われており。
みことの入院している病院は通常の
病院より規模が大きく、重篤な患者も入院している
大学病院であった。
ここがどんな場所かなんて事は、当時のみことにはわかるはずもなく
自分がなんで、この病院で入院して検査を受けているのかも、
理解出来てはいない。
それもそうだろう。
みことは、生まれてすぐにこの病院に連れてこられていた。
そう、彼女は一般家庭に生まれるも。
生まれて直ぐに一般的ではない事態が2つ判明していた。
彼女の両親・病院の先生は彼女のそれを見て
なにがどうなっているのか不明であった。
そう。
彼女は生まれた時に薄い膜を生成し羊水を
自分から流れ出ないようにし、また、生まれやすいように
摩擦係数も極力減らす。
卵状の物体に入って生まれて来た。
生まれてからは卵状のそれはすぐに壊れ産声と共に
呼吸を初めた。
当時、彼女の両親は。
特に母親は自分の身体がおかしいのか、それとも
娘に異常は無いかと心配になったが。
母親の方は特に問題は無いかった。
羊水の方を覆っていた膜状の卵は医師たちにも不明で
あったが、身体的な問題は確認されなかった。
問題はむしろ、別のところにあり、羊水の方を覆っていた膜状の卵を
調べる過程でみことに身体をMRIにかけた際に見つかった、副次的な
ものであった。
みことは生まれながらにして心臓病を患っており
10歳まで生きられない身体であったのだ。
みことは生まれながらにして、過酷な運命を背負わされおり
ドナーを探しながら、10年以内に心臓移植を行う必要があった。
自宅での育児もそこそこに
都内にある大学病院にみことは入院することになる。
母親は毎日のようにみことのもへ通い、
時には宿泊して、少しでも娘の傍に居られるように
していた。
そんなある日、母親は自分の娘の異常に気付く。
そう、彼女は自分の入っているベッドから
おもむろにウサギのぬいぐるみを取り出して
遊びだしたのだ。
まだ、1歳にもなっていない娘がぬいぐるみで
遊んでいたからではない。
その、ウサギのぬいぐるみは両親はプレゼントしたものでは
無かった。
もちろん、すぐに病院内の先生や看護師にぬいぐるみの
存在について尋ね回った。
もしかしたら、誰かがプレゼントしてくれたものかもしれないから
娘の為に頂いたのならお礼をと思い。
当然の対応をしようとした。
だが。
娘にウサギのぬいぐるみをプレゼンとしてくれた
人物は見つからず。
誰に聞いても知らないとの事であった。
普段みことを見てくれている看護師たちも、
一同に首を傾げウサギのぬいぐるみを見た事が無い。
そもそも、この病室にぬいぐるみを持ち込む事が
出来ないのだと。
そう告げられた。
そして、次の日母親が再びみことの病室を
訪れると、ウサギのぬいぐるみはどこを探しても
見つからなかった。
昨日看護師が、ぬいぐるみは持ち込んではダメと
言っていたからどこかへ保管されたのだろう。
そう思って。
いつもの看護師に聞きに行くと
「あっ。すみません。ナースステーションで預からせて
貰ってます。」
「昨日お伝えすればよかったですね」
「いえいえ、大丈夫です。」
いま持ってきますねと。
看護師はぬいぐるみを取りに行ってくれた。
「ごめんなさい、ぬいぐるみ見当たらなくて。」
「どこ行ったんだろう?」
そこにいる皆が首を傾げてした。
ぬいぐるみは確かに置いておいたのを
多くの看護師が目撃していたし、記録にも
残っている。
再び不思議に思いながら、みことの病室に
担当の看護師と一緒にもどる。
ぬいぐるみはダニとかが寄生しておりアレルギーが出る可能性がある為、
常に持っている事がダメらしかった。
一応、アレルギー検査をして問題無ければ
一時的にぬいぐるみで遊ぶ分には問題は無く。
看護師たちはアレルギー検査後に遊び用として
例のウサギのぬいぐるみを使おうと考えていたそうだ。
まぁ、心臓移植にはリスクがあるため
それを少しでも軽減するために色々と制約があるが、
ストレス軽減も必要なことは確からしかった。
そして、みことの待つ病室へ戻ると
そこには、ウサギのぬいぐるみを抱きかかえている
みことの姿があった。
母親と看護師は驚いた。
ウサギのぬいぐるみがあることにもそうだが。
明らかに昨日のウサギよりデカい。
昨日のはせいぜい20㎝程度だったと思うが。
今、みことが抱いているのは50㎝はある。
抱いているより、みことがウサギのぬいぐるみに
抱かれている状態に近いだろう。
私たちはその微笑ましい状況に若干笑いながらも
どうなっているのか不思議で堪らなかった。
それからと言うもの。
ウサギのぬいぐるみを片付けては
翌日にはみことがウサギのぬいぐるみを抱いている
そんな不可思議な日々が過ぎて行った。
そんな、不思議ではあるが微笑ましいある日
政府関係者となのる人物が病院へみことの家族を。
いや、みこと自身を訪ねて来た。
「初めまして、工藤と申します。本日は娘さんのことで
お伺い致しました。」
ご安心下さい。
非公式ではありますが私は政府の研究機関に所属する者
で御座います。
と丁寧に工藤と名乗る大柄の人物はそう告げる。
研究機関との不穏な単語を残して。
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