第43話 人ならざる者の願い
みことは
そこは、周囲より一層濃く木々が生い茂っており、日の光もあまり届かない為
薄暗い、とてもミステリアスな雰囲気の林であった。
こんな夕暮れ時には特に、それを強調させる。
「どこに行ったのかしら。」
みことは、林の中を走りながらぼそりと独り言をつぶやく。
「あの子、なんとなく怯えていたように見えたけど」
林は広く、山に面している為、いくら巨大であるとは言ってもそう簡単には見つけられるものでも無いだろう。
《なぜ、追ってくる人の子よ》
突如みことの頭の中に直接声が響いた。
それは、どこからとも無く聞こえ、とても威厳に満ちているような話方をしていた。
「あら、意外と優しいのね。
そっちから出てきてくれるなんて」
みことは、中々見つけられずにいたイライラを八つ当たり気味に
「なぜと、問うている、答えよ」
それは、神と言うよりはどちらかと言えば、悪魔とかに近い、禍々しささえ感じられるほどに。
「良い。答えよう。」
「これは、そちらの。人間の憎悪そのものである」
「そう。私たち人間が憎い?」
「あぁ、憎いなんてものでは無い、我の体もそうだがそれ以上に我が母を死に至らしめた、貴様ら人間の憎悪が憎くて堪らん。」
「だから、襲うの?それって楽しい?」
みことは、自分の身の丈の2倍はあろう
「食事は必要であろう」
次の瞬間、
「今ので死なぬか」
「えぇ、私もあなたと似たもの同士だから。」
みことは、いつものように構える大鎌を構えて臨戦態勢を取る。
ただし、木への激突の衝撃を完全には吸収出来ていなかったのか
頭からは血が流れている。
それは、
「そうか、では参るぞ」
攻撃行動を取る。
先程の攻撃から目では
「っう。」
「その程度で、攻撃を防げると思うたか」
「いえ、思ってないわよ防げるなんて。」
みことは薄い膜を近接戦闘のみを行って来る、
これは、膜を付着させる事により、
「多少、動き辛いか。だが、この程度問題ではなかろう」
「じゃ、試して見る?」
みことがそう言い、再び膜を生成し再び臨戦態勢を取ろうとした次の瞬間
何処からともなく銃声が鳴り響いた。
「みことさん、お怪我は」
そこには、大勢の警察が部隊を編成し武器を取り周りを取り囲んでいた。
みことを呼ぶ声の主はその集団の中に同行して来た木崎のそれであった。
「待って、SATがなんでここに」
みことは警察の特殊部隊がここにいる情報は入手していなかった為、驚きと
この状況が自分と
「図ったな人の子よ」
「貴様となら、もしくはと思ったが」
「やはり、変わらぬか」
「違う、待って
みことが言い切る前にSATの部隊は再び発砲し
皆の前から姿を消した。
「木崎、説明して、どういう事?」
みことは一体、自分のいなかった隙に何が起きたのか把握出来ずにいた。
「それには及びません、霧崎みことさん。」
みことへ説明をしようと口を開きかけた木崎を押しのけ一人のSAT隊員が姿を表す。
「私はこの部隊の部隊長を務めている、大槻と言います。
今回の部隊遠征は偶然も重なりましたが、非公式ながら正式な命令にて行動しておりますので」
そうか、邪魔をするなと、そう言いたい訳か、みことは言葉には出さないものの
大槻と名乗った部隊長の言いたい事の真意を汲み取り、それに対して一瞥をくれよろよろとしながら歩き始めた。
「みことさんどこへ、まずは怪我の手当を」
「待ってられないわ、私は彼を―――」
みことは全て言い切る前に、意識が朦朧としその場に倒れ込んでしまう。
「みことさん、すぐに病院へ」
「いいえ、ホテルでいい」
みことは病院への搬送は断わった。
そして、自分を呼ぶ木崎の声、駆け寄るSAT隊員の姿、そして
”大丈夫、きっとあなたの願いは叶えられる”
そこで、みことの意識は一度完全に途切れてしまった。
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