第30話 任せられる人達
所長とみこと、木崎。それに小谷周平を乗せた車は
お台場方面に向けてスピードを上げて向かって行った。
「みんなは、アクアシティって行った事あるの?」
みことは、この状況下でもペースを崩さずに、皆へ
観光にでも行くかのようにと抱いていた。
当然、小谷周平と木崎は過去に来た事があり
工藤所長も「昔にカミさんと来たよ」と
意外な真実を口にだした。
「カミさんと?」
所長、結婚されていたんですか。
木崎は工藤所長の普段の行動から自分と同じく未婚で
あると勝手に思い込んでいたようで、かなり焦っていた。
自分と同類がまたひとり減ってしまったとでも思ったのだろうか。
「うん、昔ね。もう離婚しちゃったけど。」
この仕事をしていると、秘密事項が多く、家に帰る暇なんて
殆どないから、警察をやめるタイミングで離婚し養育費などの
支払だけをしている生活をしているようだった。
そうか、所長にもちゃんと守るべき人がいるのか。
みことは、当然と言えばそうかもしれないけれど
今回の戦い、誰一人死なせずに、皆を守り切って帰ろうと
改めて誓い、前を見据えていた。
「もうすぐ、アクアシティへ着きます。皆さん戦闘準備を」
小谷周平は車内の以外に軽い雰囲気に誤魔化されており
これが、高輪真へ突撃する移動車である事が頭から
抜けていたようだった。
戦闘準備の木崎の声を聞いて咄嗟に自分がここへ来た事を
後悔しながらも、この戦いは最後まで見守るとき決めたからには
と腹を括った。
「いい目ね。さぁ、最終決戦に臨みましょう」
みことは勢いよく、小谷周平を中心に皆に声を掛けた。
そして、アクアシティの正面に目をやるとそこには
2度戦闘をしたリュウが待ち構えていた。
「ようやく殺されに来てくれたね」
相変わらず気の抜けた感じで、怖い事を言ってくれると
考えながら、臨戦態勢に入ろうとしたとき、みことの
後から声がした。
「ここは任せて、みこと君は先へ」
工藤所長はここで、全員足止めを食らうより
みことを
内部へ送り出してリュウは自分が相対するほうが良い。
そう考えての工藤所長の行動であった。
「任せていいの?」
「もちろん。僕を誰だと思ってるんだい?」
二人は、この殺伐とした場には似合わず少し
笑みを零しながら、ハイタッチをしてみことは先を急いだ。
小谷周平はみことに続き、木崎は所長の所へ残ることにしたようだ。
「木崎君は残るかい?」
「えぇ、お一人では寂しいでしょうから。」
「男に言われてもねぇ。」
と苦笑いをしながら、談笑していると。
リュウは「行かせるわけないじゃんか」と自身の
腕をみこと達へ突き出し、行先を妨害しようとするが。
所長の複製体一体が犠牲となり、リュウの触手を
防ぎみこと達を先に行かせる事に成功した。
「おじさん邪魔。」
リュウは自分の行動が邪魔された事に相当腹が立ったようで
工藤所長に対して明確な怒りを露わにして、睨みつけて来た。
「そう怖い顔しないでよ。」
所長は、怒りを露わにするリュウに対しても
軽口を叩いている。
正直、木崎はリュウの異能に対して最初に相対した経験が
ある為、印象は最悪で恐怖の異能でしかなかった為、所長の
態度には驚くばかりであった。
但し、前回と違いみことサイドも2回リュウとは戦闘をしており
彼の異能についても大方の原理の予測は着いている。
それは、みことの戦闘経験と研究所での戦闘の監視カメラ映像の
分析から、かなり正確な分析結果を得て、答えを導きだしていた。
そう、所長は完全にその答え合わせをしたがっているのだ。
「君の異能、単純に言えばただの迷彩でしょ。
違うかな?」
リュウは所長のその発言に過敏に反応していた。
内心、自分の異能力の確信を突かれかなり動揺して
いるのだろう。
「タネが分かったから、どうなんだよ。
見えなきゃ無意味じゃんか」
とリュウは声を荒らげ、見えない触手を複数本作り出し
所長と木崎へ向かって攻撃を仕掛けた。
リュウとしてはこの一撃を持って二人とも。
最低でも所長だけでも殺したいと事だろう。
「それが、見えてるとしたら。」
所長は複数本の見えないはずの触手を生成した複製体た
確実に掴んでいた。
一体、どうなっているのか。
そして、所長の正面には今までには見た事のない
大柄な男性の複製体が出来ており、その目は人間の者とは
違い不思議な目をしている。
彼の異能は可視光線を透過する物体を作り出し
それを用いて、あたかも触れていいないように
攻撃をする事と断定していた。
それなら、透過出来ない光を当てるか
透過していない範囲のすべての光線を
見れる目を持てばいい。
監視カメラの通常映像をサーモカメラモードに
切り替えて、彼の異能力を分析した際に、その触手は
はっきりを写っていた。
それで、あればヘビのように赤外線で温度を検知出来る
目を持てば彼の異能を見る事が出来るのではないか。
複製体に人間の持つ以上の機能を持たせる事が
泥人形の異能者で既に実証済みの為、そのような
機能を持つ複製体を作り出すのはさほど難しくなかった。
「どうして、そんな事できんだよ」
リュウは自分の異能に絶対の自信があったのか
先程までとは打って変わって、かなり荒い口調で
感情を露わにして攻撃してくる。
但し、タネの分かった異能と感情的な攻撃は
所長に届くはずもなく、ヘビの目を持った複製体が
リュウへ渾身の一撃をお見舞いして、この場を収めたのであった。
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