第46話

居達さんは手錠を持っている片方の娘を呼んで横に立たせると、それを前に出してよく 見える様にしろと言った。彼女は黙って言う通りにした。              彼は両親に、これは貴方の娘が買った物だと言った。それを自分が気に入らない娘に付けて連行する為にと。その娘を毛嫌いしている男子生徒の所へ連れて行き、苛める為だと。                   典子は大騒ぎで反対した。そんな物は知らないし、そんな物はその二人が勝手に買った物だと言った。                すると手錠を手にした娘は猛反撃した。それは典子が、あの外人に付ける為に買った物だと叫いた。皆でふざけながらセックスショップに行った時に典子がそれを見て、これを アンジエリンに付けてハクの所に連れて行こうと独断で決めて、喜んで買った物だと。        典子は、そんな事はしていないしそんな物は知らない、自分達が勝手に買った物だと言い張った。                 その娘は怒りながら又同じ内容を力強く繰り返した。横にいる娘も呆れた様に、真っ赤な顔で典子を睨み付けた。                居達さんはその娘に、外人なんて言う名前やあだ名の奴はうちの学校にはいないぞと言って怒鳴りつけ、ちゃんとに名前を呼ぶ様にと叱った。                「そんな呼び方をするならお前らは一体何なんだ、タコ焼きとお好み焼きか?!なら、そうこれからは呼ぶぞ?」、と言うとう二人は 凄く嫌な顔をした。           そしてその娘は、今度はちゃんとにアンジェリンと言い直してから又同じ内容を繰り返した。                  だが典子はそれをを聞くとクスクス笑い始めた。二人がそうした事を言われたのが面白いからではなく、タコ焼きとお好み焼きと言うあだ名を付けると言った居達さんを馬鹿に して笑ったのだ。             何故なら大阪や大阪の物に対して何かを言われると、例え自分や自分達に原因があっても異常に反応するし、怒るからだ。            それを知っている居達さんは無視しながら 言った。                  「おい、もっと言ってやれよ、亜紀。親の前でそいつが何をしたか、何をしようとしたかを言えよ。ちゃんとに親に教えてやれよ!!」                 亜紀はすると又典子のした事を詳しく語ったが、典子は相変わらず違うと、凄い剣幕で 言い放った。                   それで亜紀が興奮しながら言い返す。              「何言うてんの?あんたがそれ、買ったんやろ?!」                 「そや、この嘘つきが!!」                もう一人も叫ぶ。                  「そうだよ、良枝。お前も言ってやれよ!」                居達さんが励ます。                        亜紀は、「おじさん、おばさん、聞いて下さい。」、と言って両親に話しかけた。典子は アンジェリンが人形みたいな、外国人の顔をしているのと、英語が出来て一番上のクラスにいる事を聞いて反感を抱いたと。それで 苛めようと食堂へ彼女を探しに行き、初対面なのに色々と嫌がらせを言った。だが相手に言い返されて激怒した。それで彼女の悪口を凄く言っている、彼女を毛嫌いしている同じ大阪出身の男の所へ連れて行く為にその手錠を買ったのだと。

典子が嘘を言うなと又怒鳴り、亜紀は顔を 真っ赤にしながら、嘘をついているのは自分だと言い返し、良枝も加勢した。       そうしてわあわあと娘達三人は、二対一で 罵り合い、典子の両親は複雑な顔をしながら只困り顔で黙っている。                 それで居達がついに三人を止めた。そして 手錠を亜紀から受け取り、近くの台に置いた。                  「典子、もういい加減にしろ!お前が買ったのは分かってるんだよ。お前がアンジェリンを食堂で待ち伏せして言い掛かりを付けた 事は、ちゃんとにこいつらから聞いてるんだよ。あいつにもそれは確認している。初めて会ったあいつに、お前がそうか?、と言って色々とあいつの顔にいちゃもんを付けた事をな。」                  典子は黙って返事をしない。横を向いて知らん振りしていたが、又クスクス笑い出した。「何だ、お前笑ったな?又笑ったな?!」  居達さんは驚いて、典子をジッと見つめる。   だが典子はそのまま馬鹿にした様にクスクス笑っている。               「何が可笑しいんだよ?!おい、何がそんなに可笑しいんだよ?!」         居達さんは完全に怒り出した。        「お前の方が可笑しいだろう?!お前の方が、そんな馬鹿な下らない事をしてんだよ!手錠なんて、そんな物を買ったんだよ!違うのかよ?!」                 典子はやっと笑うのを止めた。        「お前はこんな物を買ってるんだよ!普通なら絶対にしないぞ。まだ高校を出たばかりの女が手錠なんて、何で買うんだよ?!普通誰が買うんだよ?!お前、幾つだよ?!まだ18か、でなきゃ19だろう?なのにそんな若い女が、こんな物を買うのかよ?自分が使うのかよ?違うだろう、他人に付ける為だろう?!なあ、どうなんだよ?この馬鹿が!! お前がそうやって可笑しいから、馬鹿だからこんな物を買うんだよ!!」              典子は悔しそうに黙っている。       「だからお前は日本に帰されるんだろう?  こんな物を買って、それを他の女に付けようとしたから!違うのかよ、この馬鹿?!なのに何の反省もしないで、本当に馬鹿な奴だよ。だからお前は、物凄い馬鹿なんだよ!!」                   居場達さんが何度も馬鹿と言ったので、典子の父親が段々と腹を立て始めた。母親は嫌な顔をしながら下を向いている。だが頭のてっぺんが少し薄い、黒縁眼鏡をかけた、見た目は大人しそうな父親はいきなり大声を張り上げた。                 「おい!お前、ええ加減加減にしろ!!」       「えっ、何だ?!」               居達さんは父親の方を見た。父親は凄い形相で居達さんを睨み付けながら、叫き始めた。「おい、何を人の娘を馬鹿馬鹿言うてんだだ?!」                「何だぁ?!」              二人の男は、どちらも顔が真っ赤になりながら睨み合った。

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