第24話

「あれを見て?!あれは私の学校の、此処での責任者なの!彼をあの生徒が離さないの!! 日本に帰らせられるから、それが嫌だから!!」              アーレンは何が何だかよく分からずに戸惑っている。アンジェリンは手短に急いで訳を説明した。                アーレンは聞いて驚いている。そして唖然としてハクと居達さんを見比べている。   「あいつ、物凄く悪い奴なの!!散々酷い事ばかりしていたから帰させられるのに!なのにあんな事をして、抵抗して!!あいつはpunk/パンクなんだよ!!最低なパンク(ちんぴら)なんだよ!!」          アーレンはハクの憎々しく歪んだ顔を見つめながら、押さえつけられて未動きできずにいる居達さんの、弱々しく情けない顔を見比べた。そして信じた。           「お願い、アーレン!助けて?!一緒に居達さんを救って?!」           アーレンは不安そうにアンジェリンを見ながら黙っている。             「アーレン、お願い!!協力して?!」  アンジェリンが尚も頼む。        アーレンは悩んでいる。どうしよう?!そのまま苦い顔をしながら立ち尽くしている。 アンジェリンは見切りを付けると諦めて食堂の奥へと走って行った。         使用し終わった皿やナイフとフォークが入っている容器が台車に乗せてあり、それが奥の端に置いてあった。食べ終えたらその食器やカトラリーを下げる場所があった。    中には洗い場があり、その前のカウンターに置いて去る。だがそこへ行かなくてもその台車の上の、大きなプラスチックの容器に淹れて立ち去っても良いのだ。        アンジェリンは急いでその容器の中から、使用してあるナイフを一本取り出してしっかりと柄を持った。そうして又走って戻って来た。                  「アンジェリン、一体何してるの?!」  アーレンが驚いて口にした。       「助けるんだよ、あの人を!!」     そして居達さんへと叫んだ。       「居達さん!!今すぐに助けるから!」  居達さんもアンジェリンの手元を見て驚いている。                 「ハク、早く居達さんを離せよ?!でないと承知しないから!!」          ハクはアンジェリンの手元を見てニヤ付いた。                  「何やそれ?」             多少は驚いた様だが、馬鹿にして笑っている。                  すると一人の青年が声をかけてきた。ハク達が立っている所から少し離れたテーブルに着いて食事をしていた白人の大学生が、アンジェリンが手にナイフを持ちながらハクに日本語で詰め寄っている様子を見て、不審に思ったのだ。ハクが居達さんを押さえつけている様にもおかしいと思ったのだろう。    「おい、何やってるんだよ?そのナイフ、何だよ?」                アンジェリンはしめたと思った。殆ど食堂には生徒はいなかった。時間的に、まばらに生徒達が座って食事を取っていたが、いつもの混んでいる食事の時間では無く、活気はなかったからだ。              アンジェリンは何が起きているのかを又手短に説明した。だがこの生徒は今一理解がし辛い様だった。              この大学の生徒達の中には、日本から生徒達が英語を習いに来ていて、大学の敷地を使わせてもらっている事を知らない生徒達も多くいたからだ。              「日本からの生徒?!そんな学校があるのか?此処に??」            「そうだよ!だから此処の学校に教室を貸してもらって、勉強してるんだよ。私達はそこの生徒なんだよ。だけどこいつが、その若いパンクが居達さんを、そのグレーのスーツの人を、押さえつけて離さないんだよ!!日本に帰らさせられたくないから、暴れて嫌がらせをしてるんだよ!!」         「一寸待てよ?!じゃあ君も日本人なのか?」

「そうだよ。私は混血だよ、半分日本人だよ。」                 「嘘だろ?!日本人になんて丸で見えないじゃないか?」              「だから混血なんだよ、半分は、白人だから。」                 「冗談はよせよ?!」          「冗談なんかじゃないよ!嘘なんてつかないったら!!」              「ハハハ、信じられないなぁ。」      アンジェリンがムカムカしてくると、いきなりアーレンが怒鳴った。         「おい、嘘じゃねーよ!!アンジェリンはハーフなんだよ!彼女は半分日本人で、半分がアメリカ人なんだよ。俺は友達だから、よく知ってるよ!」             野球帽を被ったその青年は驚いた様にアンジリンの顔を見つめていたが、やっと納得した様だった。               「おい、何をごちゃごちゃ言うてんのや?!」                ハクが言った。             英語が殆どか丸でできないこの男は、学生達が介入してきた事に少し不安を感じたのだ。

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