第23話

アンジェリンはしばらく扉の陰から様子を伺っていた。居達さんとハクは揉み合っている。                  だがハクの物凄い抵抗に、居達さんはハクを離してしまった!するとハクは居達さんに飛び付き、腕を後ろに捻伏せた。            アンジェリンはその様子を見るともういても立ってもいられなくなった。そして思わず飛び出して行った。            「ハク!!居達さんを離せ!!」     物凄い大声でそう叫んだ。        ハクが振り向いた。           「お前、まだいたのか?!」       居達さんが驚いて叫んだ。        「心配だから、隠れて様子を見てたんだよ!」                 アンジェリンもハクを睨み付けながら叫んだ。                  「おい、居達さんを早く離せ!!お前、何やってんだ?!」             ハクはアンジェリンを馬鹿にした様に見ながら嬉しそうに言った。          「何でお前なんかの言う事聞かなあかんのや?」                 「良いから早く離せ!!お前、何やってるか分かってんのかよ?!」         ハクが言った。             「嫌だって言ったらどうするんや?お前に何かできんのか?」            「こっの野郎?!」           アンジェリンはハクの両親の方を見た。  「おじさん、おばさん、何を黙って見てるの?!何で止めないの?!ねー、息子に言って止めさせてよ!!」          二人共黙って唯アンジェリンを嫌そうに見つめるだけだ。              「おい、お前なんかが俺の親に口聞くんやない!!お前みたいな外人が!」      「アハハハハ、馬鹿かお前?!お前の方が外人だろ?!私は日本人から生まれてるの!母親が日本人で、父親がアメリカ人。だから混血なんだよ!外人じゃなくて混血なの、ハーフなの。だから外人は自分だろ?朝鮮人のおまえだろ!違うのかよー?!」      

アンジェリンがまくしたてるとハクがたちまち悔しそうな顔になった。        「なんや、コノヤロー?!お前、やる気か?!」                アンジェリンは恐いと感じたが、怯まなかった。                  「何だよ、又暴力か?!又暴力振るうつもりかよ!ふざけんな!!」         そしてハクの無能な、こんな事を子供がしていても平気な、ろくでもない両親に向かって又叫んだ。               「おじさん達!!こいつは私に前に暴力を奮ったんだよ?!私が通るといつも必ず側に来て嫌がらせを言うから、その時は無視して行こうとしたら動くなって命令して、それでも行こうとしたら凄く怒って走って来て腕を掴むから抵抗しようとしたら、暴れたら腕を折るって何度も言ってからいきなり地面に叩き付けたんだよ!物凄い力で!!それで喜んでそのまま行っちゃって。周りに人がいなくてどうしようもなかったけど、もうあんまり痛くてしばらく起きられなかったんだよ!私を痛め付けられるんなら警察に捕まる方がよっぽど良いし嬉しい、なんて何度も言ったんだから!だから居達さんか警察に言おうかと思ったけど、恐いから言わないで黙っていたけど。ねー、最低でしょ?!こっちは女で何にもしてないんだよ?!なのに、私ががハーフだから気に食わなくて、いつも外人外人って言って騒いで!!外人は自分だし、だからって私とは何の関係もないのに!!それに他にも色々変な態度を、食堂の従業員やクラスの先生にしたりして!!そう言う事、全部知ってるの?!」              両親はもっと嫌そうな顔をした。そして相変わらず黙っている。           「なあんだ!この親あってこの子供有りだね。情けない親!!自分の子供がそんな事を色々してたのに、叱りもしないんだから!」アンジェリンは呆れ返り、馬鹿にしながら 言った。そして怒鳴った。        「似た者同士とはこの事だよ〜!!」    居達さんは口をポカンと開けてアンジェリンを見ている。いつも大人しい彼女の豹変した態度に驚いていた。           「何やと〜、人の親に向かって!!」    ハクは怒り狂っていた。         「何だよ?本当の事だろ?何怒ってんだよ?!」                「お前みたいな外人が〜!」       「馬鹿!外人はお前だろ?私は混血だってさっき言ったのにま〜だ分からないのか?!何で日本人から生まれた私が外人なんだよ?じゃ何で日本国籍なんだよ?言ってみろよ?理由を言ってみろよ?」          ハクは凄い形相をしながらも黙っている。 「何だよ、お前?人を外人なんてしつこく言うけど、お前は日本人なのか?日本の国籍あるのか?それに何だよ、さっきからその言葉?!何を方言なんか使ってんだよ?聞き取り辛い!ちゃんとに標準語話せよ?こっちは使ってるぞ、違うか?!お前、標準語話せんのかよ?できないんだろう、なあ?!アハハハハ。」                 アンジェリンは言葉の事は本当は気にしていなかった。だが再三外人呼ばわりをされて、馬鹿にされたり意地悪い事を言われたり、暴力を振るわれてきたのだ。だから相手が嫌がる事が分かっていたからこうした事を言ってやった。                 大体外人呼ばわりされていても自分は日本国籍だ。日本人の女が母親として自分を産んだから自然とその戸籍に入ったからだ。だが、自分に嫌がらせをいつもして騒ぐこの男は違う。両親共日本人ではない。       ならハッキリとそう示してやろう、何故なら自分の発している事柄は事実なのだから。 ハクは怒り狂いながら「何やと〜?!」、と何度も繰り返した。だが他には何も言わなかったし言えなかった。          だがやっと悔しそうにこう発した。    「俺はお前が〇〇の親戚だなんて思ってないからな!お前なんかが〇〇と関係あるなんて認めないからな!」           〇〇とはは安土桃山時代の、戦国時代の武将である。居達さんが前に朝岡を皆の前で叱った時に、その武将とアンジェリンは血縁関係があるかもしれないし恐らくそうだと言った事だ。ハクはその時の出来事を聞いた時にその話も聞いたのだ。           アンジェリンはプッと吹いた。それから笑い出した。                「ああ、そうだった!忘れてたよ。」    そして又おかしそうに少し笑うと言った。 「そんな事、忘れてたよ!だけど、確かにそうだ。私、そうなんだっけ。前におばあちゃんが言っていたから。だけどそんなの何にもお前に関係ないし、認めてくれなくてもかまわないけどね。」             ハクはあっけなく片付けられてしまい、拍子抜けした。それで次には何を言おうかと悩んでいる様だった。            アンジェリンは居達さんの顔を見ると英語で言った。

「Don't worry.I'll save you!!」                     居達さんは黙って聞いている。アンジェリンは又繰り返した。だが気持は焦っている。どうやって彼を救うのか。何か方法はないのか?!                 その中途半端な時間帯から言って食堂で食事をしている人間は殆どいなかった。いても皆生徒ばかりで、本当の大人、大学教授等はいなかった。               もしいたらいつまでもこんな事になってはいなかった筈だ。自分だって唯コーヒーを飲もうと思い、来ただけだ。発泡スチロール制のコップに入れて飲む無料のコーヒーを取りに来ただけだ。              それでも周りを見回しながら、後ろを振り返りドアの方を見た。誰か知り合いが入って来ないかな?!              すると知り合いの大学生が入って来た。  アーレンは台湾出身の男子で大学一年生だ。アンジェリンの寮の建物の上の部屋に住んでいる。アンジェリンは彼を見ると駆け寄った。                   「Allen!Good I found you!!」     アーレンは驚いてアンジェリンを見た。そしてやはり英語で答えた。         「アンジェリン、一体どうしたの?!」

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