第22話
寛也達が居達さんに言いつけた事で、ハクはとんでもない事になった。 居達さんはハクの所にすっ飛んで行き、起きた事に付いて厳しく追求して、叱った。 居達さんは言った。 「お前、何を女に暴力奮ってんだよ?!それに何を連れ去ろうとしたんだよ?!お前、一体アンジェリンをどうしようと思ったんだよ?!」 「うるせえ、俺はあんな奴大嫌いなんや!!」 「何が嫌いだよ?!あいつが一体何をしたんだよ?お前に何もしてねーだろ?」 ハクは悔しそうに黙っている。 「お前、いい加減にしろよ?あいつとお前とは何も関係ないぞ?お前、あいつにヤキモチ焼いてるだけだろ?!」
「ヤキモチ?何や、それ?!」 「フフン、お前も可愛そうな奴だよなぁ。 あいつがこの学校にいるのを、外人のクセにいるんじゃねーとか、外人外人なんていつも言って馬鹿にしてるけどよ!じゃあお前は何なんだよ?!お前、じゃあ日本人かよ?どうなんだよ?おい、返事しろよ?」 ハクは相変わらず悔しそうに黙っている。 「良いか、あいつは日本人の母親から産まれてるんだよ。国籍も日本なんだよ。お前はどうなんだよ?違うだろう?だからあいつに ヤキモチ焼いて、悔しくて仕方ないんだろう?だが良いか?お前とあいつとは何の関係もないんだよ!クラスも違うし、国だって何の関係もないんだよ。あいつは半分アメリカ人で、混血なんだよ。そして日本国籍なんだよ。だから、日本人なんだよ。立場は普通にそうなんだよ。だから外人じゃないんだよ。ならうちの学校にいて、何が悪いんだよ? アメリカにいて何が悪いんだよ?それならお前こそ、どっちの国とも何の関も無いのにいるんだろ?だから、外人なんて言うんならそれはお前なんだよ。お前が外人なんだよ!!日本でも此処でも、どっちでもお前がそうなんだよ。外人はあいつじゃなくて、お前なんだよ!だけどお前はそれが悔しくて仕方ないから、あいつに嫌がらせばかりをしてるんだよな?だけど、あいつとお前とは何の関係もないんだよ!!お前だって本当はそれを分かってんだろう?あいつは真面目に一生懸命やってるよ。TOEFLの勉強をして、大学に入る為に頑張ってるよ。お前は、こっちに来て何やってたんだよ?真面目に授業に出てたか?ちゃんとに勉強してるかよ?お前、日本で辛い思いをしていたからそれが嫌で、逃げて来たんだろう?なぁ、違うかよ?そうだろう?だけど甘えるんじゃねーぞ?!お前がそんな思いをしてきたからって、アンジェリンをはけ口にして虐めてるんじゃないよ!!自分と何の関係もない、ましてや女なんかを自分の勝手な理由で虐めるんじゃねーよ!!情ねーなぁ〜。男なら、もっとしっかりしろよ?!強くなれよ!!」 居達さんはハクを日本に返すと言った。何しろもう犯罪になる事を2度もしたのだ。 ハクは困った顔をした。すると居達さんは ある提案をした。紙に一筆書いたら許してやると。そして日本には返さないと言った。 その内容はこうだ。今回の、寮まで行って アンジェリンを連れ去ろうとした事は全て 五味川と加須山の考え出した事で、それを自分にやろうとしつこく持ち掛けた。だから余り気乗りはしなかったが、誘われてした事だ。自分は本当はそんな事はしたくなかった。 そう書いて署名したら許すし、学校を辞めて日本へは帰らなくて良いと居達さんは言った。
ハクは嫌がったが、そうしないと必ず直ぐに辞めさせて日本へ返すし、両親にも直ぐに連絡をすると言われたので、本当にそうするかを何度も確認した。嘘ではないかと。 居達さんは絶対に嘘ではないと請け負った。それで渋々承諾して、仕方なく居達さんの 言った文章を紙に書いて、サインした。 そして言った。 「これでええんやろ?」 「ああ、良いよ。後は、お前の親に連絡するだけだ。迎えに来てもらって、お前は日本に帰るんだよ。」 「何やてー?!お前、ふざけてるんか?!」ハクが叫んだ。 「ふざけてなんかねーよ。」 「書いたらもうええ言うたやろ?!汚ねー、嘘ついたんか!!」 「な~にが汚ねーだよ?じゃあお前がやってた事はどうなんだよ?!汚くないのかよ?何もしてねー女に暴力奮ったり、寮まで行って無理矢理連れ去ろうとして!汚くねーのかよ?!なぁ、もし上手くアンジェリンを連れて行ったら、何しようとしてたんだよ?何か酷い事を色々させようとしてたんだろ?なら、どっちが汚いんだよ?!お前なんかがいたら又同じ様な事をするに決まってるんだよ!だったらこっちは困るんだよ。学校から犯罪者や被害者を出すのが。アンジェリンがお前なんかにとんでもない事をされたら可愛そうだし、凄く困るんだよ!!」 居達さんはハクが書いた紙を五味川と加須山に見せた。自分は何も悪くないし、二人にそそのかされたから寮に行ったと言ってハクはこれを書いたと言った。 二人はハクに対して裏切られたと思い、嫌悪感を抱いた。本当はハクの考えで、自分達は仕方なく付き合わされただけだからだ。 ハクが後から直ぐに二人に弁解したが、二人は聞く耳を持たなかった。 居達さんはこうしてハクと手下二人を引き離した。
それから、ハクの両親が大阪から呼ばれた。そしてその日空港に3人を車で送る事になった居達さんは、食堂へと3人を連れて来た。そこへ、キッチンからコーヒーを持ってアンジェリンが出て来た。アンジェリン達、生徒はフリーでコーヒーを飲んで良かったから、授業がその日終わった彼女はコーヒーを飲んでから部屋に戻ろうとしたのだ。 アンジェリンは、白い発泡スチロールの コップにコーヒーを入れてキッチンから出ると、入り口に近いテーブルに居達さんとハク親子三人が立っているのを見た。 すると居達さんがアンジェリンに声をかけた。 「おい、アンジェリン!」 アンジェリンは驚いた顔をした。 「おい、アンジェリン!ハクが日本に帰るぞ?!お前、何か言ってやれよ?」 アンジェリンは困って黙っていた。 「どうしたよ、アンジェリン?お前、散々嫌な思いをさせられたんだろう?だったらこれが最後だよ。こいつは帰るんだから!だから何とか言ってやれよ。」 アンジェリンは尚も黙っていたが、居達さんはしつこかった。最後だから、何かを言わせようとしていた。 「おい、何か言ってやれよ?こいつに凄く嫌な思いさせられたんだろう?だったらもう 言うチャンスなんてないぞ?!早く、何か 言ってやれよ!!」 アンジェリンは居達さんにそう言われている内に、段々とその気になってきた。だがこの事がとんでもない事態になった。 居達さんは油断していたのだ。ハクと言う人間を把握しきれていなかった。 「お前、こいつが帰るのどう思うよ?嬉しくないかよ?なぁ、お前だって嬉しいだろ?!」 「ああ、嬉しいよ!そんな奴、いなくなってせいせいするよ!!」 アンジェリンがハクを睨みつけて、大声で言った。 「何やと〜?!」 ハクが形相変えて、アンジェリンに向かって来ようとして走り出た。 居達さんが驚いてハクにしがみついた。ハクは居達さんを振り払おうとして思い切り抵抗した。 居達さんが焦って叫んだ。 「アンジェリン、逃げろ?!早く此処から出てけ!!」 アンジェリンが驚きと心配で立ち尽くしていると、居達さんが又叫んだ。 「早くしろ!!お前、やられるぞ?!」 アンジェリンはコーヒーの入ったコップを急いで大きなゴミ箱に投げ捨てるとカフェテリアの入り口ヘ走って、そこから飛び出した。 だが中の様子が気になった。彼女はそのまま入り口の、開いた扉の影に隠れて中の居達さんとハクの様子を伺った。 ハクの両親はどちらも知らんぷりだ。父親なら一緒に息子を押さえ付けて、叱っても良いのに。この親あってのこの息子だ!! アンジェリンは呆れながらその様子を見つめた。どうしょう、居達さんは大丈夫かな?!続く.
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