第21話
寛也の顔が曇った。 ハクは嬉しそうにニヤついている。 「おい、お前等手出しするなよ。ええか?」五味川、加須山はがっかりしながら黙っている。 寛也は焦った。ハクのその自信と余裕から、かなり強いのは分かる。そこでいきなり寮の方を見ると、叫んだ。 「おい、みんな出て来い!!」 寮のドアはどこも開かない。 「おい、みんな出て来いよ?!早く出て来いよ!!おい?!何してんだよ?!」 寛也が必死で叫ぶ。 すると恐る恐るドアが開いて、背が高くて細いアオモリーノが出て来た。不安そうな顔をしている。 次にはドアを1つ挟んでその横のドアが開いた。色黒で背の小さくてゴツい、オブツだ。顔立ちはハッキリしていたがチリチリパーマの短髪をした、色黒で、何となく見た目が気持ち悪いからとそうあだ名を付けられた18歳の青年だ。 そしてオブツも険しい、緊張した表情で立つ。 こうして二人がハクと寛也の方を見た。そしてハクを睨む。すると他のドアも開いて、何人もの日本人の男子生徒が出て来た。 中には年長者の小畑さんもいた。黒縁眼鏡をかけた、銀行から一年間の休暇を貰って来ていると言う冴えない中年男だ。アンジェリンや寛也とは同じクラスだ。 皆がハクを睨み付けて威嚇する。 寛也は安堵した。自信が漲ってきた。 それとは対象的にハクの顔が曇り、焦り始めた。これだけの数の男が出て来たのだから もう無理だ。幾ら強くても、五味川や加須山がいてもかなわない。押さえ付けられてしまうだろう。 「チェッ、行くぞ!!」 いきなりそう声をかけると、2匹の手下を犬の様に従えて急いで車に乗ると去って行った。 寛也が小畑さんに近付いた。深刻な表情だ。 「小畑さん。もうこれ、言った方が良いですよね?」 「ああ、言った方が良いよ。」 「じゃあ明日俺、居達さんに言いますよ。小畑さんも一緒に来てもらえますか?」 「ああ、良いよ。でないと本当にアンジェ リンが、連れて行かれるからな。」 小畑さんも真剣な表情だ。 周りの男子生徒達も互いに顔を見合わせたり、話し込んでいる。 アンジェリンはこうして救われた。だがもし連れて行かれていたら、一体何が起きていたのだろう…。
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