第17話
「朝岡、お前はとんでもない事をしでかしたんだよ!お前はドリーまで巻き込んで、アンジェリンに酷い思いをさせたんだよ。もし食堂の奴に警察に通報されてたら、お前達は連れて行かれて、今頃は警察にいるんだよ!今ここにはいないんだよ!こっちは日本なんかよりも、もっと色々と厳しいんだからな!おいお前、分かってんのか?!」 朝岡は黙っている。 「そしてお前等のせいで、うちの学校はもう此処を利用できなくなったかもしれないんだぞ?!そんな危険な事をする生徒がいるなんて、この大学だって困るし、恐いからな。自分達の生徒にも暴力を振るわれたり、何かされるかもしれないと思うからな!それに学校の評判だってある。そんな警察沙汰になる様な大学に、誰が行きたいし、子供を行かせたいと思うんだよ?!だから、うちの学校は直ぐに契約を取り止められて、全員が帰らなきゃならなくなったかもしれないんだよ。全部、お前とドリーのせいでな!!」 皆が驚いて不安そうな顔をしながら、朝岡を睨み付けた。 「そうしたら、皆に金を返さなけりゃならないんだよ。この留学費の、残りの分を。何しろ、途中で帰らせられるんだからな。」 朝岡が驚いた顔をした。 「何を驚いてるんだよ?そうに決まってるだろう?そうしたらそれを誰が払うんだよ?!学校はそんな金は出さないし、そんな返す金なんてないぞ?!何しろ、全員に返金しなきゃならないんだからな。だから、お前とドリーが出すんだよ!ドリーはまだ高校を出たばかりで働いた事が無いから、だから親が払う事になるんだよ。」 朝岡の顔は引きつっている。 「お前、そんな金あるのかよ?何十人分の、残りの金を。ドリーの親も払うとしても、 そんな金がお前、あるのかよ?だからお前は自分の貯金を下ろして、そしてお前の家族も一緒になって払う事になるんだよ。」 皆は恐ろしいといった顔をしたり、朝岡をそのまま睨み付けたりしていた。 「だけど性がねーよなぁ?お前はアンジェ リンにそんな酷い事をしたんだからなぁ。 あいつの母親が、お前のした事を知ったら何て思うよ?どんなに心配するかよ?どんなに悲しいし悔しいかよ?自分の娘が何にもしてないのに、付き合わないってだけで、そんな事を何度もされたんだからよ?!」 居達さんはそして聞いた。この中の男で女の兄弟がいる者はいるかと。手を上げて見ろと。何人かが手を上げると、その中の二人に聞いた。誰がいるのかと。片方は妹、もう一人は姉だった。 居達さんは、もしその姉妹がアンジェリンと同じ理由でそんな事をされたらどう思うかと聞いた。 姉がいたほうが、既に既婚者だからと言ったので、もし独身で同じ事をされたらどんな気持ちだと聞いた。 そして二人共が、そんな事を許せないし怒り狂うと言った。 ではもし謝ったら許して、その男と付き合っても良いかと聞いた。どちらも絶対に嫌だし許さないと言った。 次に居達さんは、女の生徒達に聞いた。もし自分がアンジェリンがされたのと同じ事をされて、ディズニーランドにどうしても連れて行く為に、騙しうちを食らって連れ出されたらどうしたか。又、そこで行かないと言って帰ろうとしたら、女友達がしがみついて来たらどうしたか。もし無理に車に乗せようとして引きづって行ったらと。 居達さんは聖子とロイスに聞いた。 どちらも絶対に行かないし、しがみつかれたら振り払うと言った。アンジェリンと同じ事をすると言った。 ではもし振り払った相手が転んだり、かすり傷を負ったら、自分は悪いと思うかと聞いた。 どちらも悪くないと答えた。しがみついて離さない方が悪いのだからと。 ではその男が自分に飛びかかり押し倒してから、無理矢理にその突き飛ばした相手の所に引きずって行き、謝らせようとしたら謝ったかと聞いた。 どちらも自分は悪くないから謝らないと言った。 ではもしその男が自分を好きだと言ったらどうか。許して付き合うかどうかと。 二人共絶対に許さないし付き合わないと言った。 「そんな、ふざけるんじゃないわよ〜!!何馬鹿言ってんの〜?!」 そう聖子が叫んだ。 「そんな事をされて許す訳ないし、何が付き合いたいよ?!しがみついたヤツだって、 そんなの友達なんかじゃないでしょう?!本当に友達なら、絶対にそんな事はしないから!!」 「そうだ、聖子。その通りだ。分かったか、朝岡?皆がそう言ってるぞ。女は皆、自分がされたら、絶対にやった事を許さないし、付き合わないと言ってるぞ。男も皆、自分の姉妹がそんな事をされたら絶対にそんな奴を許さないし、付き合わせないとな。お前も警察にいた癖に、そんな当たり前な事も分からないのかよ?アンジェリンは犯人でも何でもないし、お前に暴力を奮った訳でも何でもないんだぞ。あいつは一般人の、唯の女だ。まだ高校を出たばかりの、世間知らずな19歳の娘なんだよ。お前は警察にいたからしつこく質問したり、答えるまで行かせなかったり、体を掴んだり押し倒したり、そんな事を当たり前にずっとやってきたんだろうが。だが もう違うんだよ!!もう警官じゃないんだ。だからそんな事はもう通用しないし、する権利なんて無いんだよ。そして相手は犯罪者でも何でも無い、只の一般人なんだよ。だから付き合いたいと言って断られたからって、そこで理由を言うまで詰問なんてできないし、力強くで言う事なんて聞かせられないんだよ!お前はもう民間人なんだから、そんな事を無理矢理にできないんだよ!分かったか?!」 朝岡が居達さんを睨んだ。 「何だよ、その顔?じゃあ何の権利があるんだよ?あいつがお前に自分をどう思ってるか聞いたのかよ?教えてくれって言ったのかよ?自分を好きかどうか聞いたのかよ?違うだろう?!お前が勝手に付き合いたいって言ったんだろう?相手はそんな事をしてくれなんて頼んで無いんだよ。迷惑なんだよ!だから断られたんだよ。だったら何が理由だよ?!理由なんて聞いてどうするんだよ?そんなもん、聞いたって性がないんだよ!じゃあもし顔が嫌だって言ったら顔を変えるのかよ?身長がもっとデカい方が良いって言ったらどうするんだよ?身長を伸ばせられるのかよ?できないだろう?じゃあ彼氏がいるって言ったら良かったのかよ?結婚してたら良かったのかよ?諦めたのかよ?!例えそうだとしたってそんなもん、やっぱり関係ないんだよ!いたって本当にしたけりゃ幾らだって付き合えるんだよ。そんなのはいちいち相手に分からないからな。それに別れる事だってできるんだよ。離婚だってできるんだよ。何も一度付き合ったり結婚したら、絶対に別れちゃいけないし別れられないなんて決まりは無いんだからな!だったら、理由なんて聞いたって無駄なんだよ。そんなもん、特に理由なんて無いんだよ。嫌なだけだよ!只、好みじゃないだけなんだよ。なのに腕を力ずくで掴んだり、押し飛ばして押さえ付けたりしやがって!!腹が減ってるのに飯も食わせてやらないで!理由を言うまで食わせないで、何がそんな物は後で良いんだよ?良くねーだろ?!お前は先に食ったんだろう?だからそんな事を言いに行ったんだろう?お前、好きな相手に飯位食わせてやれよ?なんでお前が駄目だって言ってあいつが我慢しなきゃならないんだよ?そんな事をする、どんな権利があるんだよ?あいつは食堂に飯を食いに行ったんだぞ。もし飯の後に用があったら、お前のせいで遅刻したり駄目になって、あいつの予定を潰したり、困らせたかもしれないんだぞ?お前、本当にアンジェリンが好きなのか?好きじゃないだろ?お前、只あいつの顔が好きなだけだろ?だから自分の自由にしたいだけだろ?だから、自分が気に入った女を誰か他の奴に取られたくないだけだろ?違うのかよ?じゃなきゃどうしてそんな事が色々とできるんだよ?乱暴な事ができるんだよ?普通なら絶対にそんな事できないぞ。自分の事ばかり考えてないで、もっと相手の事を考えてやれよ?お前、自分の気持を押し付けてるだけだろうが?!それにお前、あいつと付き合いたいのに本末転倒だな?そんな最低な事を色々として、余計に嫌われるのに!そんな事をすりゃああいつはお前が尚更恐くて、もう絶対に近くにいたら逃げて行くぞ!食堂にお前がいたら入らないで後から行くか、うんと離れた席で急いで食べて逃げる様に出て行くぞ。一度断られているのにまだしつこくつきまとって、ディズニーランドに連れて行こうなんて考えて騙し討ちしてよ!お前が考えたのか、それともドリーか?!ドリーだって、何でお前に協力したと思う?お前、分からないか?あいつは自分の為にしたんだぞ。」 皆は凄く驚いて、不思議そうな顔をした。「あいつはお前に協力してアンジェリンとお前を付き合わせたら、お前に感謝されて自分の味方にできると思ったからしたんだ。だからそこまで協力して、食堂に連れ出したり無理矢理に車に乗せようとしてしがみついたりしたんだよ!そうして連れて行って一日中乗り物なんかに乗せている内に、お前がアンジェリンを好きにならせる様にできると思ったんだよ。そうしたらお前は喜んで、あいつの言う事は何でも聞く様になる。そしてお前を自由にコントロールできりゃ、誰かと喧嘩してもお前にかばってもらえる、助けてもらえる。そう思って手伝ったんだよ。元警察官のお前なら心強いし、皆も変な事をしないと思ってよ。だからなんだよ!!でなきゃ何でわざわざそんな事に協力しなきゃならないんだよ?!そんな事も分からないで、喜んで仲間だなんて思ってよ!だから、現にそうなっただろう?ドリーをアンジェリンが突き飛ばして逃げたら、お前は飛びかかって押し倒して、ドリーに謝らせようとして引きずって行って無理に謝らせようとしただろ?!アンジェリンと付き合えなくても、そうして自分に協力した奴の為にやっただろ?だからあいつの思い通りになったんだよ!思う壺に!!どうだ、分かったか?馬鹿だよなぁ、そんな事も見抜けずに。だったら、そんなにドリーが大切で言う事を聞きたいし助けたいんなら、ドリーと付き合えよ?お前はきっとあいつが好きなんだよ、アンジェリンじゃなくて!だからそんな事をするんじゃないかよ?付き合いたいと思ってる女より、そっちが大切なんだろう?そいつが、自分が気に入った女を無理強いして困らせてても、お前の為にそうしてるんだから嬉しいんだろう?だったらお前等は互いに合ってるから、アンジェリンよりもドリーにしろよ?その方がよっぽど上手くいくぞ?!」 朝岡はドリーが自分を利用しようとしたから手伝ったと言われると、非常に驚いた顔をした。だが周りも同じだった。 「だけど…。」 聖子が言った。 「何だよ?!」 「自分に売春させようとしたと思って、アンジェリンは断ったんだよね?我がままで甘やかされてるからか、馬鹿だからそんな言い方をするんだよ!だって、そんな風に言えばさぁ…。」 「だからさっきから何聞いてるんだよ?あいつが色々と辛い、大変な思いをしてきたからだろ?じゃあ逆に、そんな事を相手に言わなきゃならない気持ちが分かるかよ?そんな事を自然に思って、売春はできないからそうした店に行ってくれだなんて。そんな事を本当は言いたくないに決まってんだろ?だけどそう思うから、困るから、断る為に仕方無く言うんだろう?例えもしそれが本当だとしても、そんな事を言われたら相手は腹が立つに決まってるんだから。それが分かっていても、言うしかないからだろう?」 「でも、もう少し上手く断ればいいのに。馬鹿だよね〜!」 「おい、さっきから何が馬鹿だよ?馬鹿はお前だろう、聖子?お前の方がよっぽど馬鹿で頭が悪いよ。」 「何だって?!」 すると居達さんは聖子にいきなり色々と質問をし始めた。先ずは海外の高級菓子の名前を幾つか言って知っているかを聞いた。次には日本の高級菓子や、又は誰でも普通なら知っているその土地の有名な菓子の名前を幾つか言って、知っているかを聞いた。又はそうした海外や日本の菓子の名前を言ってみろと言った。 彼女はどれも一つも知らなかったし、又答えられなかった。 それから、蛙や兔を食べた事があるかと。又はフランス料理を食べた事はあるかと。日本の高級ホテルのレストランや、そうした料理屋や寿司店へ行った事があるかと。 勿論そんな物を食べる筈が無いし、ましてやフランス料理なんて無いと、聖子は半分困りながらも、馬鹿にした風に答えた。 すると今度は色々と海外文学や日本文学の作家や作品の名前を出して読んだ事はあるか、又は聞いた事はあるかと聞いた。彼女はどれも知らなかった。 では、海外や日本の歴史や歴史人物についてを幾つか出して、それらを知っているかを聞いた。 聖子は何も知らなかった。 時事問題についても聞いたが何も知らず、答えられなかった。 海外旅行をして、外国ヘ行った事は過去にあるか?ハワイやアメリカに前に行ったか?他の国はどうだ?今回こっちに来る前にディズニーランドヘ行った事があるかを聞いた。(この時には、まだ日本のディズニーランドは無い。もう直ぐ日本にできると言う噂はされていた時代だ。) 聖子は一度も無いと答えた。 では英語の他に外国語ができるか?習って、多少は読み書きができたり話せるかと聞いた。ピアノは弾けるかと聞いた。答えはノーだった。 高校は一等地にあったか、と聞いた。誰でもが知っている、有名な観光地も幾つもある、一等地にある学校ヘ通ったかと聞いた。 勿論無いと答えた。 他人に、美大生に絵のモデルに頼まれてなった事はあったり、写真を撮らせてくれないかと聞かれたことはあるかと聞いた。 ある訳が無いと答えた。 居達さんは他にも幾つも質問をした。 聖子の答えは全て否定だった。 すると居達さんは聖子に言った。 「何だよ聖子、お前?何にも知らないし、何にもやった事が無いしできないじゃないかよ?!」 聖子が怒って猛反発反した。そんな事を聞くのはおかしいし、知らなくても、した事が無くても当たり前だと。 居達さんは言った。これらは全てアンジェ リンが知っていたり、経験して来た事だと。だから自分の上司と自分とドリーと一緒に、四人で食事をした時にアンジェリンが話した事柄で、ドリーにそれらについて興味を持たれて質問されたりすると、丁寧に教えたと言った。 そしてアンジェリンがその時はテーブルを仕切ったと。皆に色々と話題を振ったり、質問したり、冗談を言って笑わせたりして、上司をとても喜ばせた。そしてその上司の好きな事を引き出し、趣味の話をさせた。それについても色々と興味を持って聞いたと。だからとても和んだと。だから自分もアンジェリンがそんな事ができたのを驚いたし、楽しかった。 今この場にいる生徒達の中でそんな事ができるのは、恐らく数人しかいないだろうと言った。 「この中で誰か、先物取引について知っている奴はいるか?」 皆がざわめき始めた。互いの顔を見合わせたり、不思議そうにしている。 「知っていたら手を上げてみろ。」 仁平さんとアオモリーノが手を挙げた。 「たった二人だけか?あぁ、でもお前等なら知っているか。仁平は何年もサラリーマンだったし、アオモリーノはW大学を出てるからな。」 居達さんはアオモリーノにそれが何だかを言う様に言うと、アオモリーノが、小豆の取引についてだとかを説明し出した。 「そうだよ。この中にはもう社会人の人間が何人もいるが、知っているのはたった二人だけだな。隆も、リョウも知らないか?だが アンジェリンはその話をしたぞ。知っていたぞ。だから俺も凄く驚いたが、俺の上司もだよ!後から言っていたからな。"あの子、可愛いだけじゃなくて随分と色んな事を知っていて詳しいんだね。先物取引の事まで知っていたりして、あの年で凄いね。"、そう言って驚いていたよ。」 リョウさんは悔しそうな顔をした。皆も驚いていた。 「だから、"あの子がチラッと言ってた、先祖が戦国武将の○○らしいと言うのも、本当かもね?あの子ならそうかもしれないね。" 、そうとまで言っていたよ。俺も聞いて、そうだと思ったよ。だとしてもおかしくないなと。」 「何よ、さっきからアンジェリンばっかり褒めて!何かあったんじゃないのー?!」 聖子が悔しそうに言った。 「ある訳が無いだろう?あんな純情なアンジェリンがどうやって男を誘惑するんだよ?できっこないだろう?お前ならそんな事は朝飯前だろうがな。いいか聖子、お前はアンジェリンを馬鹿にしてるし、したいんだろうが、あいつの方がお前よりも教養があるし、常識もあるって事だよ。気配りもできるよ。だからあいつの方が全て上だって事だよ。今のお前じゃあな。あいつが話した事は、普通に常識的な内容も幾つもあるよ。だけどお前はあいつが話した事を何一つ知らなかったじゃないか?何一つ話せないだろ?だから、もっと勉強しろよ?教養を身に付けろよ?本を読めよ、ニュースを見ろよ。もっと色々と学べよ。アンジェリンは本が好きだし、新聞も嫌だけど読んだりすると言ってたぞ。ドリーにも、何も知らないと人に馬鹿にされるし話に付いていけなくなるから、だから勉強をした方が良いと言って、色んな雑誌や本を読んだりしろと勧めてたぞ。そしていちいちお前みたいに相手を馬鹿にしたりしないで、丁寧に説明したり、そうやって勧めていたぞ。俺にも、"これから先一年間をどうぞ宜しくお願いします。そして、どうか私を差別しないで下さい。迷惑をかけない様にしますからお願いします"、と頭を下げたよ。上司やドリーの前でな。俺に宜しく頼むだなんて本人が頭を下げたのは、まだ19歳のあいつ一人だけだったよ。だが、もしあの場にお前がいたら、お前があいつだったら、さぞや威張っただろうな。又は、自分が物を知らなきゃ頭に来て席を立って、皆に不愉快な思いをさせていた筈だよ。」 「一寸いい加減にしてよ!!何で私ばかり攻撃するの?!私が何をしたのよ?!」 聖子が興奮して叫んだ。 「何がだよ?普段お前がしてる事だろ?」「何よ、それ?!」 「お前はいつもやってるだろう?さっきもしただろう?いないアンジェリンの事を馬鹿にしたよな。悪く言ったよな?そしてお前は いつも廻りの人間を、誰かしらを馬鹿にしたりからかったり、足を引っ張る事ばかりしているだろう。」 「何虐めてるのよ〜?!」 聖子は真っ赤な顔で、泣きながら叫んだ。「何で怒るんだよ?お前が普段、皆にしている事だろ?なのに、自分がやられたらなんで嫌なんだよ?何で自分は駄目なんだよ?おかしいじゃないかよ?」 「そんな事してないわよ!!」 「してるだろう?図星だろう?なのに本当の事を言われたらそうやって泣き叫ぶのか?興奮して顔を真っ赤にして、赤ン坊みたいに 泣き喚くのか?そんな事しかできないのか?」 聖子はもうおいおいと泣いていた。顔はぐしゃぐしゃだった。 皆黙っている。 居達さんが言った。 「聖子、良いか?お前は他人の痛みが分からない。理解できない。お前はアンジェリンが甘やかされたり、我がままに育ったと言ったが、それはお前だ。お前なんだよ!!あいつじゃないんだよ。あいつは親から厳しく育てられてきたんだ。あいつのうちは母子家庭だ。父親は最初からいない。だから、母親が小さな時からかずっと働いている。産まれる前からそうだよ。だからいつもいないよ。祖母と三人暮らしだから祖母が面倒を見てたんだよ。その祖母も凄く厳しくしたし、うんと小さな時はいつも、家の中に飼っていた牝犬と置いて、留守番をさせていたそうだよ。一時間から数時間を、殆ど毎日。赤ン坊の時からな。まだ小さな子供が犬と二人だけでな!そして叱る時は徹底してきつく叱ったし、あいつが言っていたが、小さな時は怒るといつも母親は、一時間は必ず自分を打っていたそうだ。たまに布団叩きを使ったりもしてだ。大きくなれば、持ち物を捨てたり壊したり、誰かにやったり、罰として遊びに行かせずに風呂場や便所を掃除させたり、やり直しをさせたりと、色々とやらせたそうだ。女だけの家庭で、毎日働きに行って家族を養わなければならない。そのストレスから一寸の事で年中そうして子供に当たっていたんだ。だから、そんな家庭で育ったあいつのどこが甘やかされて、わがままなんだよ?あいつは凄く苦労してるよ。苦労して生きてきたよ。恐らくここにいるお前等全員よりもあいつはもっと苦労して生きて来た筈だよ。お前こそ、殆ど叱られなかったんじゃないのか?叱られたらしょっちゅう殴られたかよ?何時間も座らされていつまでもごちゃごちゃ言われてたかよ?そんな事をされてないだろう?」 皆が又驚いたり、その場にいないアンジェ リンに対して同情的な顔をした。 「だから人なんて見ただけじゃ分からないんだよ!見た目やイメージだけじゃ分からないんだよ!だから、知らないで勝手な事を言ってんじゃねーよ?!あいつは可愛いとか綺麗だとか言われて、唯チヤホヤされてきただけじゃないんだよ。そんな事はあり得ないんだよ!そうして普通と違けりゃ嫌な事なんて山程あるし、あってもおかしくないんだよ。だから、変わっているよりも普通が一番良いって事が、よく言われるんだよ。」 そして居達さんは、アンジェリンには動物的な感があり、犬ともいつも頭の中で会話ができていた事が昔はあったり、分かり合えると言った事を話した。そして、カフェテリアに入って来る連中を3回、どういう人間かを当てたり、キッチンから食べ物を運びながら出て来た人間がどこの席に着くかをやはり3回当てた事を教えた。そしてそれ以上はもう疲れて集中できないからと、もっとやってほしかったドリーに言った事を。(アンジェリンの物語Iの中のエピソード) 皆は仰天した。だが居達さんは、そうした事をたまに、動物を相手に仕事をする人間が言う事があると極普通に言った。 そして聖子に、余り他人を馬鹿にして良い気になっていれば後何年かして20代半ばにもなれば、段々と人に相手にされなくなって嫌われるし、今度は必ず自分が馬鹿にされると言った。 自分が可愛いと思い、良い気になっている。だからそうした態度を取る。甘やかされてきたので余計にそうだと。だからそうして自由奔放に行動できるのだから、そんな風に自由に育てられて苦労しなかった事に、親にうんと感謝しろと言った。 聖子は物凄く興奮して泣いていた。 「どうだ、分かっただろう、聖子?人前で嫌な事を色々と言われたり馬鹿にされたりして、恥をかかされるのがどんな気持か?だったらもうそんな事をするんじゃない。お前は他人が自分よりも良いと悔しくて頭に来る。だからいない相手の悪口を言う。いれば相手をオーバーに馬鹿にしてからかう。皆の前で変な事を言って見下す、そうして恥をかかせる。そうして相手が皆からも馬鹿にされる様に持って行く。皆、お前のその大袈裟に騒ぐ態度に面倒臭いから合わせる。本気でやってる訳じゃない。しなきゃお前が騒いだり、今度は自分もやられると思って嫌だからだ。だがお前はそんな事が丸で分からないから、その相手を笑い者にして満足する。だがいつまでもそんな事は通用しないぞ。最後には自分が皆から嫌われて馬鹿にされる。そして友達は皆お前から離れていく。お前はアンジェ リンが自分よりも顔が良いと思ってヤキモチを焼いている。だがそんな事で焼くなよ?あいつは混血だ。半分白人だ。だから目鼻立ちがハッキリした、ああした顔をしている。あいつだけじゃない。混血なら他にも幾らでもいる。あいつは親戚がブラジルで柔道を教えているから、その叔父夫婦の所に母親と会いに行った。中学の時にだ。さっき、あいつはブラジルに親戚がいるから行った事があると言ったら、お前はどうせ出稼ぎで行ったんだろうと馬鹿にしたが、叔父は道場をやっていて生徒を沢山教えている。その中の一人はオリンピックにも出たそうだ。だからそのブラジルにしばらくいた時に、あいつはあの国の人間を沢山見た。ブラジルは人種のるつぼと言われていて混血の国でもある。だからあいつは笑いながら言っていたよ。前は自分を凄く可愛いと思っていたけど、ブラジルに行ったらもっと可愛いとか綺麗な顔の人や子供がいるから驚いたし、今は自分はそんなに大した事は無いと思っていると言って、ブラジルの話をしながら笑っていたよ。だから聖子、お前だって日本人としては可愛いんだよ。だから自信持てよ。そして他人の顔なんかと比べてヤキモチを焼いて、怒るんじゃねーよ。そんな馬鹿らしい事をしてんじゃねーよ。逆に、あいつと友達になれよ。あいつとお前なら合うぞ。お前だって本当は優しい面があるんだよ、俺には分かるよ。そしてお前とあいつは背も高いし、年も近い。あいつは慎重で用心深い。あいつの長所だ。お前は軽はずみで深く考えない。だがその代わり直ぐに他人の輪の中に入っていける。あいつにはそれができない。だからお前ならあいつをその輪の中に入れてやれる。そしてあいつはお前の軽率な所を注意してやれる。だから互いに一緒にいれば安心だし為になる。ロイス、お前も年が近い。そしてお前も顔は悪く無い。だからあいつの顔や英語力に焼かないで、一緒にいたら、あいつに英語を聞けば教えてくれるぞ。あいつは必ず嫌がらないで丁寧に教えてくれる筈だ。だからお前等の親ももしあいつの事を知れば、必ず友達になれと言う筈だよ。あいつにはこの大学で話したり飯を食う人間もいる。一緒に遊びに行く友達もいる。だから一緒にいればお前等もそうした奴等と行動ができるんだそ?あいつはそうした事を嫌がらないから、必ず仲間に入れてくれる様にするよ。せっかくこっちに来たのに、いつも日本人とばかりいて、習った英語もろくに使わないでそのまま日本に帰るのかよ?それじゃああんまりにもつまらなくないか?」 聖子とロイスは黙って返事をしなかった。 居達さんは朝岡を又見た。 「朝岡、お前はアンジェリンが混血でああした顔でも付き合おうとした。やっぱりお前も九州の人間だな。」 朝岡も廻りの人間も不思議そうな顔をした。 居達さんは言った。アンジェリンが、いつかもっと年を取って自分の家族ができた時には、一度九州ヘ観光に行ってみたいと何度も嬉しそうに話したと。九州の薩摩藩や西郷隆盛を頭が開けていて凄いし、その当時からそんな風だったのだから凄いと感心しながら、嬉しそうに話していた事を。 居達さんは続けた。薩摩藩は江戸幕府に喧嘩を売って内乱を起こした。今で言う日本政府にだ。一つの藩がそんな事を普通は絶対にしない!しかもそれに勝って日本を開国させた。その指揮を採ったのが西郷隆盛だと。だからもし九州が無ければ日本はまだもっと開国が遅れて、下手したら他国の植民地になっていたかもしれないと。 この場にいた九州人達は真剣に聞き入り、朝岡も九州出身だからジッと聞いていた。 そして朝岡以外の彼等は、元々アンジェリンにネガティブな感情が無かった様だったから(朝岡に合わせてアンジェリンをわざと笑った綾子も含み)、アンジェリンに好意を持った。彼等は後にアンジェリンに優しくした。そして(綾子を除いては)、朝岡を無視したり、見ると睨んだりした。他の生徒達もそうだった。 後日、朝岡がドリーとした事は学校中の噂になった。だから朝岡はこの犯罪未遂がバレてからはKBSの生徒達の殆どから村八分になる。彼に近付いて話すのはハクの手下の二人に綾子と、同じCクラスの大人しい18歳の青年位だった。 そして朝岡より多少はマシだったが、ドリーもそうだった。彼女と話す者も極録減った。 こうして居達さんが話していると、教師のダイアンがやって来た。(ダイアンはAクラスを教えていたが、他のクラスも曜日に寄っては教えていたから、このCクラスもたまに教えていた。) 彼女は居達さんがいて、一体何をしているのかとこの状態に驚いた。そして何かを言おうとしたが、居達さんが急いで怒鳴った。 「ダイアン、黙っててくれ!今、大事な話をしてるんだ。朝岡が犯罪になる事をしたから、話しているんだ。皆にも色々と注意しているんだ。」 犯罪と聞いてダイアンは物凄く驚いて黙った。 そして居達さんは急いで付け足した。 「大丈夫、すぐに終わる。そして延長料金は払うから。」 居達さんは続けた。 「アンジェリンは日本じゃあ色々と大変だったから、こっちの大学に行きたいんだ。どうしてもな。だからあいつはお前とは付き合わない。あいつは今、男なんて関係ないんだ。それより、TOEFLに受かって大学に入る事しか考えてないよ。だから、必死で勉強してるよ。毎日の様に食堂でな。そしてそれでももし誰かと付き合うとしたら、絶対にお前じゃない。お前にはあいつの欲しい決定的な条件が2つ、足りないからだ。だから絶対に駄目だ、平行線だ。重なり合う事は無い。だから、あいつは駄目だ。絶対にあいつだけは止めるんだ、朝岡。」 「条件?何だ、それ?」 アオモリーノが言った。 居達さんが話し始めた。 「朝岡、一つはお前の英語力だよ。もう一つは、お前はこの学校の期間が終わったらどうするんだ?帰るんだよな?お前は此処に居住していない。生活の基盤が此処に、この国に無い。だから駄目なんだよ。」 「何で英語ができないと駄目なんだ?自分が喋れるだろ?」 アオモリーノが又聞いた。 「そんなの面倒臭いだろ?!どこへ行ってもいちいち自分が通訳したり、教えなきゃならないんだぞ?レストランで注文する時はどうするんだよ?給仕が何か聞いたら分かるのかよ?全部自分が聞いて教えたり、答えなきゃならないんだぞ。普通はそんなのは男がやるんだよ!なのにそんな事をいちいちしなきゃならないし、映画を見たって字幕なんか無いんだ。横で聞かれたり、後から感想を言い合ったりもろくにできない。相手は見ていても細かくは分からないんだからな。そんなの、面白いかよ?」 「じゃ、何でこっちに基盤が無いと駄目なんだ?」 アオモリーノが聞いた。 「あいつはこっちの大学に行って、こっちで暮らしたいんだ。居着きたいんだよ。だからこっちで結婚がしたい。だからこっちの人間が良いし、でなきゃこっちに居着いて働いている人間だよ。だから朝岡、お前じゃ駄目だ。仮にもしお前と付き合ったとしても、絶対に日本へは帰らないぞ。ここが終わったら、大学に受かったら必ず行くし、親もそうさせる。お前だって、あいつがいるからってここが終われば帰るんだろ?もし仮にあいつがお前を好きになって、帰るな、寂しいから嫌だと言ってもその時はそんな事を気にせずに帰るんだろ?まさか日本に連れて行く訳じゃないよな?あいつは絶対に九州なんかへ行かないぞ。仮にもし帰るとしたら、必ず生まれ育った横浜だぞ。行った事も住んだ事も無い九州なんかへ、幾ら好きで将来行ってみたいと思ってても、それは今じゃないからな。」 アンジェリンはこの時、皆がいる場所の離れた後ろの方にいた。 カフェテリアから出て来たら、居達さんが朝岡を叱り、聖子にも注意をしているのを見て驚いたからだ。 だからそのまま離れて、死角になる箇所で聞いていた。 話はまだ続いた。 「何だよ、まだそんな顔をしてんのかよ?だったら、どうしてもあいつと付き合いたいと思うんなら、あいつと同じ立ち位置に立てよ?同じクラスになれ。Eクラスに入れよ?でないとあいつはお前の事なんて丸で眼中に無いぞ。だが頑張って勉強して同じクラスになれば、あいつと同じ場所にいるんだからな。そして謝って、もう絶対に変な小細工をしたり暴力を振るわないで、誠意を示せば、口をきいたりもできる様になるだろうよ。そうしたら友達にもなれるかもしれないし、もしかしたら付き合う事だってあるかもだからな。あいつだってお前がふたクラスも飛び超えて上がって来たら、必ずお前を認めるし凄いと思うよ。あいつもその苦労を知ってるからな。あいつは12歳まで漢字の読み書きが小学校の2年程度しかできなかったから、親が公立の小学校に転校させたんだよ。中学に上がったばかりの時に。それまでは日本の中にある、外国の学校に通ってたんだ。そこでは早生まれだから、日本の学校だと本当は6年に入る筈が、親が無理に1学年下げらせて入れた。頼んで5年の終わりのクラスに入れたんだ。ついていけないと思って心配してな。そして努力して皆と同じになった。一年もすると完全に他の生徒と同じに読み書きができたそうだよ。だからお前の事も、Eクラスに入れば必ず認める筈だ。でも、それは簡単じゃないぞ?Eクラスの連中は誰を取っても皆、本気で勉強すれば必ずTOEFLを受けられるレベルだ。そして大学に受かるレベルの人間も必ず何人かいる。アンジェリンも必ず受かる。あいつはEクラスのトップで、皆よりもずば抜けてできる。それでも、中学高校は日本の学校を出たから、必死で毎日TOEFLの勉強をしているからな。だからお前もそれ位やらなきゃEクラスには上がれないし、TOEFLも受けるレベルにはならないよ。だけどお前が本気でアンジェリンが好きで付き合いたいならやってみろよ?お前にそれだけの力が着いたら俺が上のクラスに入れてやるよ。俺はここでの責任者だからな。どうだ、やってみるか?だからどっちかに決めてみろ。やるかやらないか、お前が決めるんだ。誰かに相談するんじゃなくて自分の意志でだ。でないと続かないし、してもしなくても後悔する。だから今決めろ。いちいち口に出さなくて良いから、自分で決めるんだ。良いな?」 朝岡は困った顔をしていた。 「そして決めたら、もうブレるな!それを貫け。後から変えるな。そしてもしやらないならきっぱりとアンジェリンの事は諦めるんだ。そしてやっても、もし努力しても上のクラスに上がる力がつかなきゃ、やるだけやったんだから、それでもう諦めるんだ。そしてもうアンジェリンの事は考えるな、忘れろ。お前が又変に何かしたら、あいつの勉強の邪魔になる。入れるものも入れなくなる。あいつとあいつの母親が考えて決めた、あいつの人生設計を邪魔する真似はするな。あいつの人生の邪魔をするな。そして残りのアメリカでの時間を、楽しむんだ。」 皆は真剣な顔をしたり、色々と考えている風だった。 居達さんがそれからリョウさんを見た。 「リョウ、お前はさっき俺の言葉を無視して食堂へ行こうとした。全員ここにいろと言ったのを無視して歩いて行った。恐らくドリーを探して逃がそうとしたんだろう。あいつはまだ来ていないからな。でなきゃアンジェリンを見つけて、説得して連れて来て、朝岡をかばう様にさせる為だ。だがお前は何も知らなかった。何が起きたのかを。なのにそうして余計な事をしようとした。だがお前は朝岡とドリーがした事を知った上でもやはりそんな事をしたか?どうだ?良いか、お前は直ぐに出しゃばる。いつも学校の事にうるさく口出ししてくる。そしてそれを当たり前に思っている。だがお前にそんな権限は無い。お前は只の生徒だ。只年が皆よりもっと上なだけだ。それだけだ。だから立場は皆と同じだ。何も変わらない。だから余計な事をするんじゃない。迷惑だ。皆、お前の様に年を取った女というのはそうだ。そうでもしなきゃあ相手にされない。だから当然の様に直ぐに出しゃばる。だが此処では俺が任されている。だから俺の方が学校の事は分かっているし、何かあれば俺が責任を取らされる。お前は違う。だがそれをお前は分かっていない。そしてさっきもそうだが、俺が戻って来いと言うと無視したが、戻らなきゃあ辞めさせると言った途端にお前は戻って来た。慌てて戻った。だったらどう言う事だ?都合が悪くなれば止める、考えを翻す。お前らは、皆そうだよ。」 リョウさんは嫌〜な顔をしながら聞いていた。(リョウさんは三十半ば位で、在日韓国人だった。だから居達さんが言った皆とはこの2つの内のどちらかか、両方だったのかもしれない。) 居達さんが周りを見た。 「だから良いか、お前等?お前等の何人もがリョウに色々と相談をしているのは知っている。そしてリョウもそれに親身になって答えているのを。だがもしこいつが何かアドバイスをしても、必ずしもそれを聞かなくても良い。何故ならさっきと同じだからだ。もし嫌だと思ってもリョウが言ったからとか、そうしろと勧められたからとやっても、それが結果が悪くてもこいつは責任を追わないぞ。逃げるだけだ。その時は自分には関係無いとか、何故それをやったと逆に言われるだけだ。しなければ良かったと言われるだけだ。何故なら自分も只の生徒で、お前等と何も変わらない立場だからだ。だからそれを頭にしっかりと入れておきながら相談しろ。相談をするなとは言わない、お前等の自由だ。勿論まともな意見や答えもあるだろう。だが今言った事を念頭に置いてからするんだ。良いな?!」 居達さんはそう強く言った。 リョウさんは悔しそうに床を睨み付けていた。 「朝岡、良いな?アンジェリンの事はさっき言った通りだそ?どちらかにろ。お前が決めるんだ。この2つの選択肢しかお前にはないぞ?アンジェリンを忘れるか、頑張って同じクラスになってチャンスを作るか。幾らあいつが、アメリカ人やこっちに住む男しか相手にしないと言っても、まだそうすれば距離は縮むからな。そして、もう絶対に汚い真似をしたり、乱暴な事はするなよ。逆に何かあればお前は守るんだ。お前は元警官だから本当は正義感が強い筈だ。そしてお前なら守れる。分かったな?」 「守る?何から?」 ロイスが独り言の様に言った。 「いるだろう、あいつを嫌ってる、虐めてる奴等が?」 聖子はまだ顔が真っ赤だがもう泣いていなかった。かなり懲りたみたいで、反省の色もこの時はあった様だ。 「ハク?」 「そうだよ、ハクだよ。何だ聖子?何か言いたそうだな?」 「じゃあこの間のあれ、やっぱりそうだったの?!」 「何だよ、この間の事って?!言ってみろよ。」
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