第44話

今直ぐになるかならないかを決めろ、と又 言った。そして、なるなら今直ぐにホテルへ行く、関係を作るからと言った。もしならないのなら直ぐに車から降りろ、そしてこの 話は二度と無いと言った。             アンジェリンは、こんな暴力を振るう男など、幾ら将来アメリカにいられる様に店を させてくれると言っても嫌だと思った。             だから降りると言うと、居達さんは非常に 驚いた顔をした。              本当に良いのかと数回確認したが、アンジェリンはきっぱりと同じ返事をした。    居達哲男は半信半疑な、そして残念そうな顔をした。彼には、これが凄く良い条件なのに何故それを蹴るのか分からなかった。彼は、全てお金が解決する、お金で物事が自由に なると言う考え方だった。             だから、大学生の時にピザを毎日廻りの生徒達多数に奢っていた事で反感を買い、人種 差別も加わり、生意気で許せないと言う理由から男子生徒達にレープされたのだ。     だがそれでも、彼の根本的な信念は変わってはいなかったのだろう。                アンジェリンは車を降りると部屋に入った。この頃にはドリーは和之と外のアパートに 住んでいたから、うるさく色々と聞いてくる相手がいなくてすんだ。                           さてこの出来事の前後には、ハクにそそのかされた香苗が日本へ返されたり、もう一人の、やはり大阪出身の違う三人組の娘達の中心の子が、やはり日本へと同じ理由で帰らされた。                 その娘は香苗達三人組よりも先に来ていた娘で、やはり違う大阪の娘達二人とつるんで いた。                 KBSは最初に来た生徒達の後に、すぐに二次募集をしたので、又二十人程の生徒が入った為、合計で計八十人人近くにはなっていたと思う。                  そしてアンジェリンのいる一番上のクラスにも二人の男子が入って来たが、彼等は九州出身の二十代前半だった。他は皆、もっと下のクラスに割り当てられた。          なのでハクはこうして後から来た生徒達の 関西人に、ことごとくアンジェリンの悪口をあること無いこと言った。           一番上のクラスにいるからいい気になって いて皆を見くだしているだとか、人形みたいな顔をしているからと物凄くうぬぼれているだとかの勝手な話を作った。               なので十代後半で、高校を出たばかりの大阪出身の生徒達全部の計十人程の男女は、殆どが彼女への言いがかりや嫌がらせをした。    そしてそのせいで、ハク張本人をも含め、 彼等は退学させられて日本へと帰らされた。             なので忘れていたのは、その最初に来たグループの大阪の三人娘でそのリーダー的な娘が、やはりカフェテリアでアンジェリンに 言いがかりを付けて来た事だ。          やはり初対面で名前も知らなかったが、香苗達同様にいきにり来ては三人で彼女を取り 囲むと文句を付けた。           「あんたがアンジェリンか?聞いていた通りに本当に外人みたいだなぁ、人形みたいな顔だなぁ!」、と笑った。               黙っていると、日本語が話せるのは分かってるのだから何とか言えとしつこく言い、誰だと聞くと、外人なんかに名前を教えられないし教える必要もないと言った。残りの二人も彼女に合わせて、凄みながら同意する。                   そして最初の娘は、外人が日本語を話すのは面白いだとかを又しつこく言うので、アン ジェリンも言い返した。               外人ならこのKBSにはいないし、日本から 来たし半分日本人だから日本語は当然話す。名前も言わないしそんな失礼な態度のあんた達に、つまらないいいががりを付けらる筋合いは無いと。                するその娘は又同じ様な事を繰り返したのでアンジェリンは、自分こそそんな凄い訛りで、方言を話すのだから面白いと言ってやった。                  すると半狂乱になった。そんな事を言われる覚えは無いとか、外人の癖に何を生意気な事を言ってるんだとかを喚いた。                 何度言ったら分かるんだ?外人ではないから話しかけてくるんだろう。大体、目の色が 少し違う位で、こんな顔のハーフなら他にもいる。だから外人外人とうるさいし、自分達が此処では外人だ。だから、此処の言葉も どうせろくに話せないのだろうと言った。(彼女達は実際に下のクラスのAかだった。)                  この娘は又怒り狂い、大声でアホだとかの 罵詈雑言を喚き始めたので、奥からスタッフのジョージが出て来た。アンジェリンを大好きだが、彼女も彼を気に入ってる、背の小さなメキシコ人の男だ。               彼は傍に来ると不思議そうに見つめたので、彼女達は彼を一瞥しながら出て行った。                  この事柄から又二回目があり、又この娘は 他の二人を連れて近寄って来ると、そんな顔で日本語を話すのだから凄く面白いし、日本人なら誰でもそう思わない人間はいないだろう、だから本当に可哀想だなぁと、上から目線で言った。でもどんなに嫌でも一生その顔は変えられないのだから、一生他人から面白がられたり嫌がられたりするのだと得意そうに言った。。               聞いていて、ハクが恐らく助言して、そう 言ってやれて言ったのだろうとアンジェリンは直感的に思った。            この娘は大して頭が良くないからだ。自分が言い返すと、直ぐに返事に詰まる。そして 焦りながら、しどろもどろになりながら悔しそうに言い返す。                  なのでこんな酷い内容をスラスラと言える筈がない。言うなら前回にとっくに言っている筈だ。                 内容的にも、ハクが自分自身の事をそう思い、非常に劣等感を抱いている内容だ。   韓国か朝鮮の人間で、日本にいる在日外国人だ。一生日本人にはなれない、血は違う。 だから同じに見た目はアジア人でも、違う 国籍だ。日本のパスポートではないし、立場も外国人だ。日本語を普段話していても、分かれば偏見や差別だとかはある。必ずでは なくてもある。顔も目が細くてギスギスした色白の恐い顔で、一つも良くない。 (勿論、今なら男でも整形を普通にする時代だし、日本人の血が入って無くても、法律的には、何世代だとかでないと駄目なのかは知らないが、日本へ帰化するのは出来るかもしれない。 だが何せこの実話は、四十数年前の 出来事だ。)                                 アンジェリンが驚いて黙っていると、何故 何も言わない?、図星だからそこまでショックで、何も言い返せないのだろう?!と笑いながら言った。                  アンジェリンは馬鹿にした風に答えた。          随分と嫌な、酷い性格だ。何もしてない人間にそんな事を平気で言えるのだから。だから、逆に凄く可哀想だと。             そう言われると又興奮して怒り狂った。だが悪態をつきながらも、渋々仲間を連れて離れて行った。                だがこの娘はこれで終わず、仕返しを考えた。訛りや方言あると言われた事が許せなかったのだ。               だから仲間の二人とセックスショップで手錠を買った。それをアンジェリンにはめて、 連れて行く為に。                たまたまそこへ行って、その時に思い付いたのか、どうした経由地かばそハクの分からない。                  だがそれをアンジェリンが食堂近くを通った時に、廻りに人がいないのを確認してから傍へ行き三人で挟み込み、押さえながら廊下の端へ連れて行く。逃げられない様にしながら手錠をかけたら、二人が押さえ付けている間に急いで自分がハクの部屋に電話をかけて 迎えに来てもらう。(安い中古の車をハクか その手下は買っていたから。)そしてハクの 部屋へ連行する。そう計画を立てていた。               だが当時の若いアンジェリンは比較的に耳が良く、特に集中すればかなり良く聞こえた。だからこの話してる姿を、偶然キャン パス内で、少し離れた所から聞いてしまった。                  運が良かった!!なのでしばらくは授業後に、食堂へ行くのを控え、たまに行くライブラ リーもにそうした。                   友達の恵梨香にも彼女達のこの悪巧みについて話したので、彼女も驚愕した。     彼女は香苗達の時に、アンジェリンを一度 助けて、居達さんに香苗達の事を話してくれた此処の大学生なので、凄く心配してくれた。                  だが結局この悪巧みは、この娘の仲間二人が、そんな酷い悪事に加担出来ないと思い、居達さんへその悪巧みを報告した。               

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