第30話

こうして私の敵の男達は、私ことアンジェリンから離れていった。そしてそれからは、この英語学校の生徒達の一部の、つまらないゲスな男達に悩まされたり、危険にさらされる事は無くなった。            だが、この話をしながら徐々に又思い出す事柄も出て来たのだ。それはやはり酷いし、恐ろしい内容でもあった。それらを記してみたい。                  まずアンジエリン(私)のルームメイトはドリーと言うあだ名を自身で付けた、長崎県出身の娘だった。この娘が何とも奇妙な育てられ方をしており、それは私よりも遙かに不自然で酷かった。                 彼女の事を居達さんは、精神年齢が6才だと言った。この話には出さなかった場面だが、彼が朝岡を皆の前で叱り飛ばした箇所だ。                  あの時に彼は何度も公言した。ドリーの頭の中は6歳の子供と同じで、何も変わらないと。だから学校内では仲良くしても、絶対に外へ一緒に言ってはならないと。行けばとんでもない危険な思いをするかもしれないからと。                  アンジエリンが居達さんに朝岡の件をついに打ち明けて助けを求めた時に、当然それに加担したドリーの事も色々と知らせて、ずっと困っていた言った。言う事ややる事が丸で幼稚園児か小学一年生と何も変わらないからと。自分が子供の時によく遊んであげた四つ年下の女の従兄弟と、その時の従兄弟と仕草が何も変わらないと。          それらを聞いた居達さんは、驚いてアンジエリンを凝視した。そして呆れ果てた!!   父親が船の船長をしているドリーは独りっ子で、父親が航海に出ると中々戻らない。だから父親が家にいる期間は少ない。普段は母親と二人切りだ。                だから母親は、娘がグレて不良になると困るから、小さな頃から何も教えず、又何もさせかった。だから彼女は丸で浦島太郎状態か、無人島で育った様な人間に成長したのだ。        その結果、テレビも殆ど見た事がない、漫画本もアニメも見た事が無い、ぬいぐるみや着せ替え人形を買ってもらったり遊んだ事が無い、極普通に皆が食べる食事やお菓子も食べた事が無い等の、そうした人間になった。   つまり何もかも知らない事ばかりだ。独りで買い物もした事が無い。本当にこうした人間が存在していた!!            そしてその何も経験した事が無い為に、精神年齢がかなり低くなってしまったのだ…。 そしてその事は、人に分かってしまっては大変だ。馬鹿にされたり面白がられたりと、かならずろくな事にならない。       だから彼女の母親は、娘の為に幾つかの策を考え出した。その中の一つが、アメリカに一年間行かせる事だった。         それは、他人から色々と学ばせて世間的に通用する様にする事だ。世俗的にさせて、日本に戻す事だ。自分では何もせず、高校を出してから赤の他人の中に入れて、廻りの人間達から色々学ばせようとする方法だ。    非常に無責任で図々しいやり方だが、母親はそうした女だった。そして父親は普段いないから、そうしたごとが分からない、又は分かっても年に何回かいるだけなので、仕方なかったのだろうか?! 

このやり方が、アンジェリンに色々と危険な打撃を与えて来たのだから!!朝岡の件が、その一例だった…。

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