第28話

アンジェリンは急いでジュディスに話しかけた。そして五味川と加須山に付いて、今さっき起きた内容を話した。そして普段から二人が自分に色々な嫌がらせを言うので、担任として一度注意をしてもらえないかと頼んだ。アンジェリンは話しながら涙が出て来たが、必死だった。              話を聞いたジュディスはダイアナ同様に驚いた顔をしていたが、無言だった。そしてとても嫌そうな顔をしていた。        アンジェリンは黙っている彼女に又繰り返し頼んだ。ダイアナも期待をしながら、彼女を見た。                 だがジュディスはハッキリと嫌な顔をすると,アンジェリンを無視して立ち上がると歩いて行ってしまった。          アンジェリンは呆気にとられたが、ダイアナも驚きの顔をした。彼女は直ぐにアンジェリンを同情的な目で見たが、急いで後を追って行ってしまった。            アンジェリンは信じられなかった。あぁ、もう駄目だ!!がっかりしながらそう思うと物凄く悲しくなったが、何とか気を取り直して寮へと帰った。             だがこの教師達は毎日必ず、居達さんと共に食堂でミーティングをしていた。そして生徒達の事や、何か困った事等を話したり相談したりするのだ。それがこの英語学校のルールだった。                だから翌日、全クラスの担任教師達が集まった時にダイアナが前日アンジェリンがジュディスに言った内容を話した。ジュディスは黙っていたが、ダイアナは割と良い人間だったからだ。                それで居達さんは驚き、ジュディスに詳しく聞いた。ジュディスは仕方なく、アンジェリンから打ち明けられた事を自分の口から話した。                  居達さんは直ぐに話さなかった事を叱り、あの二人は前からそんな事をハクと共にしていたから、辞めさせるべきだと言った。前から問題があったのだから丁度良いと言った。 そしてミーティング後に直ぐに注意をしに行って、二人をこっぴどく叱った。二度とアンジェリンにかまうな、虐めるんじゃないと厳しく言った。もし又やれば直ぐに日本に戻すとも言った。彼は本気だった。      二人は居達さんの剣幕に驚いて恐れた。居達さんは本当は直ぐに辞めさせたかったが、彼等が以前に問題を起こした時に日本へ連絡すると、しっかりと注意をしてからもう少し様子を見る様にと言われたのだ。だから今回は取りあえず、脅かしただけだった。    だが五味川と加須山は叱られた事に対して腹が立った。居達さんが怒りながら何度も二人を小突いたり頭を叩いたからだ。     それでモーテルヘ戻ると酒を買い、部屋で飲み始めた。ずっと飲み続け、そしてわあわあと夜中になると騒ぎ始めた。                  それは余りにうるさかった為に、モーテル側ヘ他の宿泊人から苦情が入った。又翌日には怒ったEクラスの、アンジェリンと同じクラスの20代後半のテリーさんが居達さんへ怒り心頭で言いつけた。          照道と言う、普段は物静かな元ホテルマンの男だった。彼はうるさくて眠れなかったので怒りが爆発したのだ。          これを聞いた居達さんは喜び勇んで直ぐに二人の元へ駆けつけた。そして有無を言わせずに荷物をスーツケースに詰めさせた。   往復の航空券の帰りの飛行機の便を、モーテルヘ行く前に既に電話をして決めたのだ。それは、その日の夕方の便だった。     そうし嫌がる二人を無理矢理に車へ乗せると、ロサンゼルスの空港ヘと連れて行った。そして無事に搭乗入り口へと姿を消すまで見届けてから戻った。           二人の呆気ない最後だった。まだ残りの日まで余裕でいられると思いこんでいたのに、いきなり帰らされてしまったのだから。バチが当ったのだ。ハク同様に…。       だが何故ジュディスはアンジェリンを無視して助けなかったのだろう。それには2つの理由があった。正直馬鹿馬鹿しい理由だった。

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