第27話

こうしてハクは学校から消えた。一つの悪が、KBS校の癌が追い払われた。     ハクの手下の二人、五味川と加須山はまだ残っていた、だが親玉が消えた事で、何か威勢が少し弱くなった様だった。       だが相変わらず二人でつるみながら、アンジェリンを見ると寄って来ては嫌がらせを言ったりしてかまった。           アンジェリンは余り相手にしない様にして無視したり、軽く言い返したりしていた。だがある時強くこう言った。         「ねー、一寸いい加減にしてよ!!私にもうかまわないでくれる?!」        真面目な顔で強く言ったので、二人共一瞬怯んだ。だが直ぐに五味川の方が反論した。「何言ってるんだよ?!俺達は俺達が好きな時にアンジェリンにしゃべるよ!それで俺達が好きな事を、幾らでも言うよ。俺達の勝手だからな!」              この二人はアンジェリンへ話す時は何故か、標準語を話していた。これはハクとは違った。                  アンジェリン呆れ返って顔を凝視したが、相手にできないと思い、離れようとした。するとすかさず五味川が加須山に叫んだ。   「アンジェリンの前に立て!!びっちりくっつけ?!」               驚きながらも言う事を聞く加須山はアンジェリンの前に張り付いた。         すると五味川も彼女の真後ろに立ち、二人で挟み撃ちにした。            「何するの?!どいてよ!!」      二人は身体をびっちりとアンジェリンに張り付く様に立ち、彼女を凝視する。何も言わない。                  アンジェリンは再びどく様にと強い口調で言ったが、二人は無視しながら彼女をそのまま挟み撃ちにする。            廻りには生徒が誰も近くにいなかった。  すると五味川が言った。         「いい、アンジェリン?これからも俺達と口を聞くんだよ。無視するんじゃないよ。分かった?!」               アンジェリンは返事をしなかった。    ハク同様に汚い事をするこの二人を馬鹿に しながら、逃げ道は無いかと廻りを見回した。                  だが近くには誰もいない。小さな大学だ。だからキャンパスには人が多くいない時間帯がある。                 仕方ないから彼女は分かったと返事をした。でないと絶対にどかないだろう。なので仕方ないからそう返事すると、五味川は再度同じ様に言い、又彼女の返事を待った。    アンジェリンが再び分かったと承諾すると、二人は嬉しそうに笑顔になった。     「そう、それで良いんだよ!そうしないと 俺達は絶対に許さないから。それじゃあね!」                 五味がそう言って離れた。        「おい、行くぞ?」           すると加須山もニヤニヤしながらアンジェ リンから離れた。そして二人は帰って行った。                  アンジェリンは物凄く腹が立ったのと、もうこんな事は続けられないと思った。ハクの時にも言い付ければ良かったのだ。そのハクも今はもう日本へ返されたからいない。   アンジェリンは、まだ恐らくは食堂でお茶でも飲んでいるであろう五味川と加須山のクラスを教える女教師、ジュディスを探しに行った。ジュディスに頼んで、二人に注意をしてもらおうとしたのだ。          二人はBクラスだから、英語は殆ど読み書きも話すのもできない。でも自分の名前を出せば、二人も何を言いたいのかが分かるに決まっている。そんな下らない虐めをしているのだから。                居達さんに言えば良いのだろうが、彼はいつも大学に来ている訳ではない。だから一刻も早く言い付けるには、ジュディスの方が早い。いちいち居達さんの住む借家へ電話などしていられなかった。まだ携帯電話などない時代だ。                だからアンジェリンはまずはカフェテリアへと急いだ。               中へ入ると案の定、彼女はもう一人の教師、ダイアナとコーヒーを飲みながら話していた。                  ダイアナはAクラスを教えていたが、この二人は交互にだとか、その時のスケジュールに寄って、互いのクラスを教え合う感じだった。AクラスからCクラスまでの教師は  そんな感じだったのだ。         それで、アンジェリンは急いで二人の方へと歩いて行った。

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