第41話

居達さんがアンジェリンに話した内容と

取った行動にについて、彼女は驚愕した。                         彼を一番最初に見た時に、とても冷徹な感じの人に見えて、苦手に感じた。だがそうした第一印象は、やはり当たっていたのだ。               彼は親切にしてくれたり、よく最初の頃は寮の部屋に様子を見に来て、他の女生徒達に、アンジェリンを好きなのだろうとからわれたりしていた。                実際に彼は寮の近くで、人が普段余りいないベンチに彼女を呼び、そこでキスしようとしたが通り過ぎた大学生数人に見られて急いで止めて帰った事があった。その時アンジェリンはとても戸惑ったから、助かったと思った。                  結局、この居場さんは最高に女好きだったのだ!!恐ろしい位に…。                  見た目は堅そうなインテリサラリーマンだったが、こうした男に限ってかなりの女好きだったりする…。              彼はアンジェリンを見た時から、そのうちに必ず肉体関係を結ぼうと決めていたそうだ。   そして彼がアンジェリンに話した内容はこうだ。                  彼は上司の石黒が、彼女を見て物凄く気に入り、彼が生徒達と渡米する迄、一緒に行けて羨ましいだとか年中彼女を話題にして、アメリカへの電話でもそうした事をよく言っていたので利用しようとした。                  そして石黒がその大学に、彼女と会う為に適当な口実をつけて来たのを利用した。結局、二回来たのだが…。             なので一度目は、居達さんは石黒を連れて食堂へ来た。その時間帯にアンジェリンとそのルームメイトのドリーを食堂に呼び、共に食事をした。アンジェリンだけでは嫌がると思い、ドリーも呼んだ。                    石黒は非常に喜び、数ヶ月後には又理由を付けてアメリカに来た。             そしてその時、居達さんはアンジェリン一人だけに来る様に言い、その時はおしゃれな装いをして食堂へ来る様に言った。     アンジェリンは喜び、何を着るか悩んだ。そして綺麗な、まだ新しいオシャレなジーンズとそれに合う綺麗なトップを身に付けようとした。だか部屋を出る寸前に心変わりした。ジーンズの短パンを履いて行く事にしたのだ。                  理由はこうだ。実は彼女の脚は、ふくらはぎが割と太かった。欧米人の足の太さで、足首は引き締まっているが、ふくらはぎは子持ちししゃもの様だった。ガッチリとした、立派な脚だ。                だから日本にいる時は、年頃になってからは母親に脚を出さない方が良いとたまに言われていた。                それでも夏には流石に暑くて我慢出来ず、短パンをよく履いていた。足が太い事を気にはしていたが、暑さには耐えられなかったからだ。                  だがその脚について、アメリカに来てから 大変に驚く事があった。それは、脚を出して歩いているとよく男から声をかけられた。脚が綺麗だとか素晴らしい脚をしていると赤の他人に、スーパーやモール等で言われた。                  

                       何故こんな脚にそんな事を言うのかと最初は信じられなかった。だが少ししてから分かった。アメリカでは太い脚は悪くないのだ。むしろ好まれる。             なので彼女は段々と脚に自信を持っ様になり、石黒が日本人だから少し不安ではあったが、そこまで自分を気に入っているし、なら大胆に脚を出して行ってみようと決めた。勿論トップも、短パンに合う可愛い物を選んだ。                  そして食堂へ行くともう二人は来ていた。だが思いもよらない事が起きた!      嬉しそうに待っていた石黒だが、アンジェ リンの脚を見ると、あっと言う間に落胆と不快な表情へと変わった!!         横にいた居達さんも彼女の脚を見ると、驚愕してあんぐりと口を開けてしばらく見つめていたが、やはり同じ様な不快な顔付きになった。                  アンジェリンは失敗をしたと気付いた。  困っていると、居達さんは石黒を促しながら違うテーブルへと近付いて行った。    そこには聖子とロイスがいて、二人で食事をしていた。彼女達に、一緒に座っても良いかと聞き、二人がかまわないと応えると、彼は石黒と共に食事を取りに行き、戻ると石黒を紹介しながら、仲良く彼女達と会話をし始めた。                                                                                                                                        落胆しているアンジェリンは一人取り残された。だが仕方ないから食事を奥に取りに行き、一人で空いたテーブルに着くと食べ始めた。                  惨めな食事だった。本当なら、三人で楽しく会話しながら食事をしていた。そう思った…。                       最も、後から思えばそれで良かったのだ。何故なら、居達さんは三人で食事をした後に、場所を変えようとしていたのだ。     彼はロサンゼルスの何処かのホテルのバーに三人で行き、当時まだ酒を飲まなかったアンジェリンに酒を勧めて大量に飲ませて酔わせ、石黒の為に部屋を取り、彼とアンジェリンを泊まらす事を企てていたのだ。        アンジェリンの具合が悪いから寝かせた方が良いと言い、自分は明日は用事かあるからと言って帰り、様子を見ていてくれと頼んで石黒を残す。アンジェリンを好きな彼は戸惑いながらも喜んで承諾する。        アンジェリンは気を失っているが、二人きりになれば恐らく石黒は彼女に手を出す。そして二人は結ばれ、石黒を気に入っているアンジェリンは嫌がらない。         そして、必ず黒川は又何か口実を作り渡米して彼女に会いに来る。             だが、そんな事はいつまでも続かない。何度かはするだろう、恐らく数回は。だが、面倒臭いし大変だ。石黒には妻子もいる。  又、段々とアンジェリンに飽きても来るだろう。気に入っているのは、見た目と若さだけなのだから。                 そうしたらどうなる?石黒は来なくなる。 アンジェリンにはどうにも出来ない。だが彼は生まれて初めて付き合った、そして肉体関係を結んだ男だ。            なのでアンジェリンは荒れ狂い、おかしくなる。TOEFLの勉強も手につかなくなる程にだ!!                                                                                                                                                                                                         その時、正義のヒーローの様に居達哲男は現れるのだ!そして傷付いて心がぼろぼろになったアンジェリンを慰める。        彼女は優しくされて居達さんを慕い、好きになる。当然関係を持つ。         彼ならいつも傍にいる、同じアメリカにいる。安心してTOEFLの勉強にも集中出来る。そしてTOEFLで良い成績を取り、アメリカの大学に入学する。               その頃にはKBSも1年間の留学期間が終わり、生徒達も彼も日本へ帰る。      だがアンジェリンは平気だ。大学生になれるし、居達さんが帰っても、彼がセックスの初めての相手ではない。だから黒川の時の様に半狂乱にはならない。          これが先ず一つ目の、居達哲男の企みだった。アンジェリンの二番目の男になる為の筋書きだ。                  そして、二つ目もあった。          それは、彼女を日本でモデルとして売り出そうとした事だ。夏休みを利用して日本に連れて行き、知り合いの芸能事務所に籍を置かせて、夏の間だけ雑誌やコマーシャルの仕事をさせる事だ。                彼には芸能人や芸能関係者が知り合いに多くいたからだ。彼の妹が女優だったからだ。 コマーシャルのキャンペーンガールになった娘で、後に女優になった芥川靖子だ。                                                                     だが何故アンジェリンをモデルにしたいと思ったのか?又ここにも彼の細かい策略があった…。    

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