第40話
それで彼は決心すると、一枚渡されたそうした写真を持ち、寮の部屋から出た。 そして彼は大学の一番上の人間にその写真を見せて、全て起きた事を報告した。 学校側は騒然となった。そして直ぐにその生徒達三人は退学になった。 だが、彼は学校中で有名になった。彼は男子生徒達の餌食になった、可愛そうなアジア人留学生だと知れ渡った。 しばらくの間はそうして噂されたが、彼は我慢して大学に居続けた。嫌だからとそのまま帰れば泣き寝入りだ。 そうして最終的にはそこを卒業した。そしてアメリカの名門校の卒業生になった。 だが日本へ帰っても、彼の望む大手企業には入れなかった。どこもが嫌がった。 幾らアメリカの一流大学を出ても、彼等にはそれは大した事ではなかったからだ。同じ一流大学でも、自分達が聞き慣れた大学名ではない。彼等は彼にそうした旨を伝えたり、又は日本で有名な一流大学を出ていたら話は違ったと言う様なニュアンスで伝えたそうだ。 それで彼は仕方なく小さな会社に就職して、その後何カ所かを転々とした。 そうして今いるKBSに入り、そこから又アメリカへとやって来た。生徒達の付添人としてだ。 だが本意は、彼は来たくないアメリカへと舞い戻ったのだ。恐らくはあの時の屈辱や不快感を乗り越える為に。 居達さんがアンジェリンにそうした話をした時、彼の目は悔しさと悲しみに血走っていた。そしてその時彼はハッキリと何度も、外人は嫌いだ、大嫌いだと興奮しながら言った。 そして他にも色々と打ち明けたのだが、彼はやはりそうした辱めを受けるだけの、我が儘で嫌なお坊ちゃん気質だったのだ。そんな酷い事をする奴等も奴等だが、彼にも人間性にかなり問題があったからだ。 例え一見分からなくても、そうした人間は普通にいる。そして、実は彼もその一人だったのだ…。
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