第6話

五味川と加須山の両親が居達さんに呼ばれて話をする時に、事前に来る様に言っておいた仁平さんが部屋に入って来た。そして自分の事を関西弁で自己紹介した。       五味川達の両親は嫌な顔をした。何で関係ない男がこうして来なければいけないのか?幾ら同じ大阪の人間でも。しかも年は若いじゃないか?!それに彼等はきっと思ったのだろう。この男は居達さんの仲間、味方だと。 とにかく仁平さんは、彼等の息子に付いての日頃の状態を説明した。そして彼等が大学内の食堂の従業員に凄く嫌われているし、授業にはろくに出ないし又出ても遅刻して来たりふざけた態度をとったりする。もう少し年上の生徒と共に売春婦を買いに何度か行く事もした。又、アンジェリンと言う日米の混血の女の子がいて、彼女をもう一人のハクと言う、やはり大阪出身の青年と共に、見る度に嫌がらせを言って虐めている。相手は何も していないし大人しくて可愛い良い子なのに、毎回丸で小学生並みに虐めていると。 だからとにかく学校側では皆が、先生方が 非常に迷惑していると。だからもう酷いし、最低だと言った。            すると黙って聞いていた二人の親の片方の 父親がいきなり怒鳴った。何を人の子供を 最低呼ばわりしているのかと。そうして、 興奮しながら立ち上がった。       それで仁平さんも怒った。顔を真っ赤にしながら、本当の事を言って何が悪いのかと凄んだ。                  そしてそんな事をしているのは、他にもまだ高校を出たばかりやそれ位の若い男子生徒も多いし、基本そうした年頃が一番多いが、彼等は誰もそんな事をしていないときっぱりと言った。                だから同じ関西人や同じ大阪の人間として、物凄く恥ずかしいと。そんな事ばかりをしていると、皆自分達も同じ様に思われてしまうと何度か言って。「もうホンマ恥ずかしいわぁ!!」、「ごっつう恥ずかしいわぁ!!」と言って。                すると立ち上がって文句を言った父親も困って、恥ずかしそうに又座った。親達は全員が嫌な、困った顔をしてうつむいていた。  仁平さんは頭に来ていてもっと何か言いた かったが、居達さんがもう良いと言って彼を止めた。そしてもう良いからダンを呼んで 来いと言った。             仁平さんは部屋から出て、ダンを呼びに行った。                  此処はKBSが、大学の寮には入り切らなかった生徒達を収容する為に何部屋もまとめて 借りていた寮代わりのモーテルだ。    大学の寮には大学生達が基本住んでいるから、全員は入り切らなかった。だからモー テルの、全室ではないが何部屋かを一年間 借りて一部屋に二人ずつを入れていた。  そして、アンジェリンは運良く大学の寮の部屋をあてがわれていた。         仁平さんが急いで部屋から出て行こうとした時に、居達さんが後ろから怒鳴った。   「おい待て、仁平!!もしあいつが来な  きゃ、直ぐに俺に言いに来い!分かったな?!」                「はい!!」              少しするとダンが部屋をノックした。   「入れ!!」              ダンが嫌そうに部屋に入って来た。まだ朝 早いからダンは眠そうだった。入ってから、入り口近くに少し驚きながら立っている。「こっちヘ来い!」           居達さんが怒鳴った。          五味川と加須山の両親、計四人はダンを憎らしそうな顔をして見つめた。これが自分達の息子を売春婦を買いに連れて行った、その とんでもない男なのかと言う風に。

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