第36話
結局アンジェリンの事で日本に帰らされたり、本当は警察沙汰になる人間が何人もいた。 ここには記さなかったが、アンジェリンに興味を持ち、連れ去ろうとしてアメリカ人の学生に警察を呼ばれ、危うく連れて行かれそうになった者達二人もいた。 だが、この件ではそれを見たドリーが必死にアンジェリンに止める様に頼み、又半分脅かした。 そんな事になれば居達さんも困り、アンジェリンに冷たく当たり、何か理由を付けて彼女を日本へ帰すだろうと言って。 勿論アンジェリンは信用しなかったが、万が一とも思った。何しろドリーが又彼女の母親宛てに嘘の下らない手紙を出して、それを馬鹿な母親が信じて連れ戻そうとするかもしれないと思ったからだ。 そうして恐くなった。母親は一旦決めたらまず考えを変えない。自分と自分の母親、つまりアンジェリンの祖母以外の事ではだ。 だから彼女は警察に彼等を連れて行かせるのを止めさせた。 彼等は高校を出てから来ていた、アンジェリンよりも1歳年下の少年達だった。中味はまだ世間知らずな、我が儘なガキ共だった。 だから放された途端に謝りもせずに走って逃げた。ドリーも安心すると、アンジェリンを無視してその場から去った。 彼女は誰でも良いから男を自分の味方にして、何も分からないし知らない事がバレた時に彼等に助けてほしかっただけだ。だから何度も、嫌がるアンジェリンに無理矢理に男をくっつけようとしたのだ。 なので結局、ハッキリ言えばこの学校は失敗だった。生徒達の殆どが高校を出た者達ばかりが圧倒的に多く、まだ二十代前半から中間位の人間達がその次に、そして二十代後半から三十前半の人間達が多少いただけだ。 つまり殆どの生徒達はまだ社会に出ていないか、又は社会人になってはいてもまだ数年から五年前後位しか働いた経験がなく、十年も働いた事のない人間達ばかりだった。責任者の居場さんでさそうだった。 そして、アンジェリンに特に執拗に執着して色々と酷い事をしてきた朝岡に至っては、元が警察官だった。だがどうせ何か問題を起こし、辞めさせられたのだろう。恐らくは何かしたとか補導した未成年者に暴力を振るったか何かだろう。 だから兎に角この学校はまとまりがなく、皆殆どが自分勝手だったのだ。だからそうした変な事柄が頻繁に起きた。 だからもう次は無くなった。一回こっきりだった…。 居達さんは日本に帰ると、色々と起きた出来事について報告をしたし、彼自身もう二度と、又アメリカに来てこうした学校に関わるのを嫌がった。 そして彼には更に嫌がる理由があった。それにはある秘密があった。それを、アンジェリンにだけ彼は話した。
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