第6話 試験結果は・・・?
2週間の特訓はあっという間に終わった。
今日は入部試験当日だ。昨日も遅くまでScratchを見ながら復習をした。定期試験前でもこんなに必死で勉強をしたことがない。
「みんなそろってるかー」
部室のドアが開く音がすると同時に先生が入ってきた。
「じゃあ、早速入部試験をはじめるか。お題を発表する。今日、星野さんに作ってもらうのは『シューティングゲーム』だ。」
「えぇぇ、シューティングゲーム!?」
先生はホワイトボードに、入部試験のシューティングゲームの条件を書いた。
「これから1時間で、この条件を満たすシューティングゲームを作ってもらう。」
どうしよう、特訓で作ったことがないゲームだ・・・。
あかりは泣きそうになって、しのぶとルイの顔を交互に見た。
狭い部室で、先生の声が続く。
「ここからは1時間、星野さんだけがパソコン操作をしてプログラムを作るんだ。2人が手を貸したら試験失格だよ。最後に伝えておくことはあるかな?」
しのぶが口を開いた。
「ゲームの基本は同じだよ。シューティングゲームでも特訓で作ったゲームでも、ルールをしっかり理解すれば勝てるよ。ねぇルイ、こんなの楽勝だよね?」
部室に来てからルイが初めて口を開いた。
「分解だ。シューティングゲームを分解すれば、これまでやってきたことの組み合わせでできる。」
手元のキーボードの視線を落としてたルイは視線をあげて、あかりの目をまっすぐ見てはっきりと言った。
「だから、大丈夫。」
先生が合図をして試験が始まった。あかり一人でプログラミングしているはずなのに、3人でパソコンに向かっている気持ちだった。今日までの2週間で、ルイとしのぶと一緒にプログラミングをしてきたことを思い出す。3人の会話はだいたいちぐはぐだったが、それでも楽しい毎日だった。
シューティングゲームは特訓で作ったことがなかったが、しのぶの言う通り基本は一緒で、ルイが最初に教えてくれた通り「分解」すれば作り方の道筋は見えた。
まず、このゲームにどんなスプライトが必要か考える。そのあとに、どんな機能をつけたらいいか整理して考えると「プレイヤーの動かし方」、「敵の動かし方」、「プレイヤーと敵がぶつかったらゲームオーバー」など特訓のゲームで作ったのとほぼ同じコードが使えそうだ。でも、この動きはどうやって作る・・・?
あかりは必死に頭と手を動かした。
「はい、じゃあそこまで。」
1時間の試験時間が終了した。パソコンを先生が回収し、合否のチェックをし始めた。
「どうだった?」
ルイとしのぶがあかりに近寄ってきて顔を覗き込んだ。
「2人とも、ごめん。私のせいで廃部だ。やっぱりだめだったよ。」
あかりの顔は青ざめている。最後に時間ギリギリまで考えていた敵の動きがどうしてもうまくいかず、プログラムが動かないまま時間ぎれになってしまったのだ。
「ま、まだわかんないよ。後ろから見てたけど、途中までゲーム動いてたしさ。結構コードいっぱい書けてたみたいだし。あの変数はたぶんいらなかったけどね」
しのぶがいつもより早口で、励ましているんだかそうでないのかわからないことを話し続ける。ルイは無表情で先生の方を見ていた。
「はい、採点終了。」
恐る恐る3人は先生の方を振り返った。
「この入部試験の結果は・・・」
あかりは目をとじて心から合格を祈った。
「合格だ。」
え?と3人で顔を見合わせた。
「星野さん、この短期間でよくここまで作れるようになったね。まだまだコードに間違いは多いが、基本的なことは理解できていると、見させてもらったよ。入部資格ありだ。」
「やったーーーー!これでプログラミング部、存続だーー!!!」
しのぶに両肩を叩かれながらあかりが隣を見ると、ルイが今まで見たことのないような優しい顔で笑っていた。
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