第49話 新入部員は、憲兵隊のスパイ!?

「し、新入部員が入る~!?」


玉木先生が、一人の女子生徒を連れてプログラミング部の部室にやってきた。なんとこのさびれた部活に、新入部員が新たに加入するのだという。突然の話に、あかりとルイが素っ頓狂な声をあげた。


「はじめまして! チア部の1年、富田ミカです。実は、ちょっと前からプログラミング部に興味があって、思い切って門を叩いてみました。得意なのはイラストを描くことで、特に、デジタルで描いた絵を動かすことに興味があります!」


チア部と兼部したいのだという。以前、ものづくりの祭典メイカーフェアでチア部と一緒に出し物を出したときに、プログラミングに興味をもってくれたのだという。


「ポートフォリオを持ってきました。普段は、こんな絵を描いてます」


 出されたのは、アニメ風のいろいろな種類の美青年が描かれている画集である。

それを見て、あかりが、おおっと歓声をあげた。


 「これ、今開発してる乙女ゲームに登場させたい男性キャラクターのイメージに近い! これ、いいかもしれない」


「ホントですか!じゃあ、ぜひ使ってください。よろしくお願いします!」


「おいおい、最初にキャラを作っていま喧嘩中のしのぶがますます怒るぞ。…それにマンガを書くのが好きならマンガ研究部に入ればいいんじゃないのか? なぜ、わざわざプログラミング部なのか、いまいち解せんがな」


ルイが渋い顔をしてつぶやいた。


その新入部員は、ニヤリ、と唇の端をゆがめた。



チア部幹部の部室で、部員の一人がニヤニヤと笑いながら、櫻井エリカのほうを見つめて言った。


「エリカ様。プログラミング部の新入部員と称したスパイを送り込むとは、いいアイデアですね」


「ふふ…そうよ。まずはいろいろなウワサをプログラミング部の部員に吹き込んで、お互いに不信感を抱かせる。そしてその隙にプログラミング部にあるコンピューターを没収して、事実上、プログラミング部を弱体化させるのが狙いってわけ」


チア部、かつ今は女学院憲兵隊の櫻井エリカも、にんまりと笑みを浮かべていた。



「しのぶ先輩って、プログラミング部、長いんですよね。確か」


ある日のプログラミング部の部室。一人、カタカタとパソコンのキーボードをたたくしのぶに、新入部員のミカがそっと声をかけた。


「そうだね…中2のときからいるから、もう3年近くになるね。ところで、何の用?」


「あの、実は…この話知ってます? 実は学校中でウワサになってるんですけど…

プログラミング部の早乙女ルイ先輩と星野あかり先輩が、実はデキてるって」


「え、ええっ…!?」


しのぶが素っ頓狂な声を上げてミカの方を見た。


「部室で2人きりになれるタイミングを見計らっては、イチャついてるらしいんですよね。

実は早乙女ルイ先輩って、不良っぽいけど、ワルっぽい感じも中性的な魅力もあって、女学院の一部の生徒には、密かに人気があるんですよ。もしかして女性が好きなのかもって思うんですよね…

それで…去年入部してきた、純粋無垢な可愛い編入生のあかり先輩をパクっとやっちまったんじゃないかって、ウワサがたってるんですよ… あのふたり、妙に仲がいい時があるじゃないですか?」


「そ、そんな…そんなハズは…」


もしや、としのぶは思った。この前、しのぶが作ったゲームのキャラクターデザイン案を2人に全否定されたのは、2人が結託していたからなのだろうか?

それに、みんなで活動する部室で、そんなふしだらなコトをしているなんて…。


しのぶの間に、ルイとあかりへの不信感がメラメラと湧き上がっていった。

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