第24話 技術力はあるがかわいげのない女

『高校生ハッカソン』の優勝チームはやはり、プログラミングアイドル・下條ともみが率いる都立日比岡高校のチームだった。

くすのき女学院プログラミング部は、惜しくも2位。

入賞ではあるものの優勝を逃し、プログラミング部の面々は落ち込んでいた。


しかし1ヶ月後、吉報が飛んできた。なんとくすのき市の市報に、ハッカソンの様子と、女学院が入賞したことが大きく掲載されたのだ。そのうえ、プログラミング部は、『くすのき市マスコットキャラ『スノッキー和尚』をくすのき市PRに有効活用した好事例』として、『スノッキー賞』をくすのき市から授与されることとなったのだ。


これで、プログラミング部の活動実績を疑っていた校長先生に対しても、チームでの実績を堂々とアピールできるようになった。あとは文化祭展示など、今年に残されたいくつかのイベントをチームでこなせば、おそらく廃部は免れるだろう、というのが顧問の玉木先生の見立てだった。


プログラミング部の廃部騒動は、こうしてまた回避されたのであった。



ハッカソンからの帰り道、ともみはルイに声をかけた。


「ルイ、発表お疲れ様。まあ私達、都立日比岡高校パソコン部が余裕で優勝したわけだけど。私達のいい感じの噛ませ役として華を添えた今の気分はどう?」


「そうだな、空虚な気分だ。あいかわらず環境問題だの人権だのSDGsだの、意識が高いお花畑すぎて、見るに耐えない中身の無さすぎるデモを見させられたからな」


「そっちだって、大したことなさそうな新入部員ちゃんの手作りデモと、最後はゆるキャラ頼みだったし、大したことなかったわね、ホホホッ」


「おい、あかりをバカにするな」


「あら~。なんでそんなにあの新入部員ちゃんの肩を持つのかしら―。そもそも、ルイがまだ部活を続けてることが意外だわ。プログラミングなんて、ひとりでPCがあればできるじゃない。あなた、よっぽどあの部を存続させたいのね。なぜなのかしら?チームで楽しむ開発にめざめちゃったってやつなのかしら?」


「うるせー。学校での居場所として、プログラミング部の部室を確保しときたいだけだ」


「それにルイ、去年のデモで会ったときより、随分大人っぽくなった気がするわね。なーんの影響なのかしらね? もしかして…恋とか?」


「冗談をいう暇があったらコード書けよ、クソフェミ女」


2人のライバルの激しい罵り合戦を、あかりたちプログラミング部のメンバーたちが後ろから温かい目で見守っていた。


第3章おわり

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る