第4章 青春! 女学院文化祭 ~『殺人ゲーム』の真相~

第26話 文化祭は男子生徒との出会いのチャンス

いよいよ、年に一度の女学院の文化祭「くすのき祭」まであと1ヶ月となった。

偏差値は低いが、制服が可愛くモテ系女子が多いと評判のくすのき女学院には、多くの男子高校生もナンパ目的で訪れる。文化祭のチケットは1万円という高値で取引されているらしい。


やってくる男子は、同じ町にある『くすのき科学技術高専』の男子が多いが、マジメ系な男子が多いというのに、女学院女子にはあまり相手にされていない。もっぱら彼女たちが色気を振りまくのは隣町にあるモテNo.1イケメン進学校『慶王高校』の男子生徒だった。金持ちの子息も多く通う慶王高校の男子との交際・結婚を夢見る女学院の生徒は多い。


「くすのき祭」の名物は、部活ごとにスペースが与えられて行われる各部活の常設展示である。男子や今後の入学希望者への強力なアピールになるため、各部活がこぞって力をいれるのであった。


   ※


「みんなー!もりあがってきたねー!さあ、プログラミング部は今年、なにやるのかな?」


プログラミング部の部室。あかりがハイテンションで部室のみんなに声をかける。


「やる気ない」


「テキトーに終わらせようよ」


しのぶとルイの顔が暗い。


どうやらもりあがっているのは、あかりだけのようだ。


「え、なんで?」


「なんでも」


「でも、部として活動登録してある以上、何かの展示物は出さないといけないって…」


「じゃあ、もう部活なんてやめちゃおう」


「もう、みんななんでそんなにスネてるのよ」


「どうせならみんなで不道徳なものつくってみんな仲良く退学だな。

マルウェアの開発でもやるか」


「コンピュータウイルス作って展示しようよ!」


「今まで頑張ってきたのにそんなことしたらまた廃部でしょ。それにまたいろんなものの犯人なんじゃないかって疑われるでしょ!」


あかりは頭を抱えた。


「はあ…みんな学校に恨みつらみとトラウマありすぎのはみだし者なんだからー。どうしたらみんなのやる気が出て、しかも学校に出してもオッケーな展示物ができるかなあ・・・」



「まあ、ルイちゃんが拗ねるのは今に始まったことじゃないんだけど、今回ばかりはほんとに嫌そうなんだよね、文化祭の展示」


「あかり…去年の文化祭での事件、知らないの? 例の『殺人ゲーム』、去年のプログラミング部の文化祭の展示だったのよ」


教室で、あかりが事の顛末をクラスメイトである新聞部のミチルに相談すると、ミチルがあきれたように言った。ミチルは、学校一の情報通である。


「去年は、それが校長先生に見つかって、”女学院の風紀を乱す内容”ってことで大問題になっちゃったのよね。ルイもしのぶも、それがトラウマだから、今年の文化祭の準備に乗り気じゃないんだろうね、きっと」


「そのゲームの噂はしょっちゅう聞くんだけど、ルイちゃんたちは全然話してくれないんだよね。一体、どんなゲームなの?」


「しのぶがキャラクターデザインしてルイがプログラムした、主人公の女子高生がくすのき女学院そっくりの学校を舞台に、生徒同士が殺し合って最後の1人になるまで殺し合うっていうゲーム。ゲームとしての出来はいいらしいのよ。だからネットではちょっと話題になって、しのぶの3Dモデルも一部の好事家に売れたらしいの。だからよかれと思って文化祭で展示してみたら大問題になっちゃったってわけ」


それを聞いて、あかりはルイの考えていることがありありと想像できた。

悪いのはわかったけど、もっと技術的なことを評価してほしかったってところなのだろう…。


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