第22話 技術力はないが口がうまい女
ついに、ルイの天敵で競プロ界のアイドル・下条ともみが率いる都立日比岡高校パソコン部のプレゼンが始まった。
暗い会場内に立っている女性にスポットライトが当たる。制服をきちんと着こなした、かわいらしい女子高生ーーー下条ともみその人だ。
「みなさん。私たち人間は、自然環境を破壊しながら生きています。また発展途上国には、1億人もの貧困で悩む子供たちがいるといわれています」
プレゼン画面には、途上国で搾取されている工場や、山火事の現場や、アフリカの貧しい子供たちなど、かわいそうな画像が続々と映し出されている。
「この世界の問題を、技術の力で解決することはできないでしょうか? 私たちは、世界の環境問題に身近なところからアプローチするアプリを開発しました」
ともみが、情緒のこもった声で聴衆に訴えかける。ともみがプレゼンしているのは、カメラに映ったゴミが、燃えるゴミや燃えないゴミかどうかを認識するという『ゴミ仕分けアプリ』だ。ゴミから世界の環境問題とは、少々、話が飛躍しているようにも思われるが、ともみの深刻な表情と声色、巧みなスピーチの構成力で、聴衆はすっかり聞き入っている。
「…これにより、世界の貧困問題・環境問題が解決します。地域の人々、ひいては世界の人々がより幸せになります。またこの企画は、クラウドファンディングにより実用化に挑戦します。詳しくは私達のホームページを御覧ください。」
はっきりとしたよく通る声で、ともみのプレゼンは1分ぴったりで終了した。
その瞬間、聴衆から大きな拍手が沸き起こった。完璧なプレゼンテーションだ。
「あー、くっだらねー。意識高杉のいつものお花畑だ」
ルイがイライラしている。
「ともみさーん、サインください!」
演台から降りたともみの前に男子高校生たちのファンが群がり、写真撮影をねだっている。
「中身は大したことないのに口ばっかり。あいつはいつもそうだ。思ってもないくせにお花畑みたいなこと言いやがって…」
ルイが悪態をついた。
「…って、あかりお前もかーッ!」
あかりがポーッとした恍惚の目でともみを見つめながら、サインの列の前に並んでいる。
「下条ともみさん...かっこいい...あんなに可愛くてお化粧も上手で素敵なプレゼンもできてコードもかける女の子なんて...!!」
「ク、クソっ」
「ふ〜ん、何〜?あかりをともみに取られて嫉妬してんの?」
見ていたしのぶがルイを見てからかった。
「ち、違うっ///」
「こらこら、もうあと少しで女学院の出番だぞ。みんな準備はいいか」
玉木先生がみんなをなだめる。
「そーれではエントリーNo.30、くすのき女学院高等部プログラミング部による「魔法のステッキ」です、どうぞ!!」
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