第38話 鉄仮面ライダーと昆虫ドレス

「オシャレな鉄仮面ライダーのファッションショー~!?!?」


「そう。鉄仮面ライダー主演俳優がメイカーフェアに出ることにちゃっかり合わせて、女の鉄仮面ライダーが着るっていう設定の、昆虫ドレスをつくろうよ。

胴体の模様は今までチア部やみんなが作ってきたプロジェクションマッピングで描いて、その本体にさらにヘッドドレスとアーマーと触手を追加でDIYして組み合わせる、っていうのはどうかな」 


プログラミングアイドル・下条ともみがいきなり押し付けてきた、意識高いテーマ『SDGs』にあわせたメイカーフェアの出展物として、あかりが提案した新しいプラン、昆虫ドレス。

そのアイデアに、プログラミング部のメンバーたちはどよめいた。


「私は悪くないと思うけど、チア部はなんていうかな。キモイとか絶対言ってきそう…」


しのぶが心配する。


「チア部にウケが悪そうなのは、分かってるよ。

でもさ、昆虫っていっても、色々いるじゃない?

探せば、女子ウケしそうな、カワイイ見た目の奴もいるじゃん」


「たとえばどんなだ」


「えー、えっとー、…うーん、チョウチョとか、てんとう虫とか、いるじゃん」


「オケラとか、カイコもいいぞ」


生き物オタクのチエが、助言をくれるが、あまり役に立ちそうにない。


「へー、どんなの?....げ、げえっ...」


ネット検索したあかりの顔色が悪い。


「と、とにかく。鉄仮面ライダーがせっかく、ライダーの鎧の昆虫風デザインをテーマにわざわざメイカーフェアに来るんでしょ? なら、これに乗っからない手はないじゃない。もしかしたらライダーを演じた火川きよし本人がうちらのブースに興味をもって、来てくれるかもしれないじゃん!!」


「…そもそもその鉄仮面ライダーと昆虫ドレスがどう『SDGs』とか環境問題に関係あるんだ?」


「よくぞ聞いてくれました。これはわれらが昆虫博士・チエちゃんの知恵を借りたアイデアなんだ。ね、チエちゃん」


「そうだ。われわれ、くすのき市のここ30年間の環境汚染は深刻で、その被害は昆虫たちにも及んでいるッ。そんな環境でも…強く生き抜く昆虫たちの強さを表現すべき時が来たッ…」


「…ってことなの! 過酷な環境の中でも力強く生き抜く昆虫たちの美しさを昆虫ドレスで表現する! かつ、代々男の子が主人公の鉄仮面ライダーに、女の子を追加するっていう意味をこめるの」


あかりの口調がだんだん、下条ともみ風のやり手婆になってきた。


「持続可能性のある地球環境問題をテーマに女性に勇気をあたえる昆虫ファッションショー…??? 要素が多すぎて目が回ってきたぞ。 まあ、やるしかないか…」


ルイが無表情でそうボソッとつぶやいた。


「うーん、うちらはいいけど、あとはやっぱりチア部をどう説得するかだな」


しのぶが心配なのはやはり、ようやくやる気になってくれたチア部の支持をどう取り付けられるかのようだった。


「ほら、例えば、ルイ・ヴィトンだってさ、いろんなデザイナーとコラボして、ちょっと違った色使いのパターンのバッグを発表したりするじゃん?

それと同じで、ルイ・ヴィトンとテントウムシとうちら女学院がコラボしたオリジナルデザインを、私達が作ればいいんじゃないかしら」


あかりが務めてポジティブにそうアドバイスする。


「ほら、テントウムシもよく見れば、赤と黒のコントラストがけっこうオシャレだし、まるっこくてかわいいじゃない?」


いわれてみればそうかなあ、と、しのぶが首をひねった。


さて、このアイデアをどうチア部にプレゼンして説得するか。メイカーフェア当日までに残された時間は、もうあまりなかった。









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