第53話 校長の講演を、メディアアートでジャック!?

「うーん…」

新聞部のミチルが探している、中等部時代に不登校のため退学した保守田校長の一人娘である「保守田マヨコ」についての情報はまったく出てこない。


そんな中、ミチルは別ルートからある新情報を入手していた。


「『自然派教育会議ちゃんねる』っていうコンサバな教職員コミュニティーの間で有名なYouTubeチャンネルがあるらしいんだけどさ。

そこに、今度くすのき女学院から生中継で、保守田校長が生講演を行うらしいの」


プログラミング部の部室で、ミチルが新情報について熱弁している。


「そんなチャンネルあるんだー。で、それがどうかしたの?」


あかりが無邪気な顔で質問する。


「その講演をハッキングして、校長に恥をかかせるのよ」


「どどど、どういうこと?」


そこそこの数の視聴者を集めている、オーガニックな自然派教育関係者たちが集うYouTubeチャンネル。そこに来週、くすのき女学院の新校長・保守田絹子教諭が生配信で出演するという。

くすのき女学院からの生中継で、電子機器を排した自然派教育の実践者として講演を行うというのだ。講演の途中には、校長派である「女学院憲兵隊」の生徒も出演。その教育の成果について発表するのだという。


「コンピューターを使わない教育効果についての生講演中に、コンピューターを使ったメディアアート作品の展示を突然開始して、講演をハイジャックして校長に恥をかかせる作戦よ」


「ええっ!? てかそんなことして校長先生に恥をかかせて、退学とかにならないの?」


「学校をコントロールできていないという評判が定着すれば、校長退任まで追い込める可能性はあるのかもしれないが、たしかに退学とか停学、何らかの懲罰を受けるリスクは大ありだな」


「誰がやったのか、ばれないようにやればいいんじゃないのかなあ」


突然、部室のドアがガラガラと開かれる。

そこには、先日、退部届を提出したはずのしのぶがいた。


「しのぶ・・・!?」


「中退した校長の一人娘のことなら、私が知ってるよ」


「しのぶちゃん…なんでここに戻ってきてくれたの?」


「その話、のった。やってもいい人がやったようにすればいいんじゃないのかな。例えば、校長の娘。校長の娘がそのメディアアートを仕掛けた張本人にしてしまえば、校長の娘はもう退学済みなわけだから、誰も懲罰を受けずに済む」


「その校長の娘ってまさか…」


ミチルが、期待するような声色でしのぶに尋ねた。


「そう。保守田マヨコ。中等部2年のときに女学院を不登校で中退した、校長の娘で、私とは今も連絡をとりあってる友達。

それに、私は女学院憲兵隊に入隊したのは、スパイ目的だったの。校長に近づけるから、いろいろな必要なものを調達することもできるよ。


…なんとかして、あの校長先生に、自分の娘がネット上では居場所があるってことを知らせてあげたいんだ」


しのぶという強力な協力者が現れてからは、話が早かった。校長の講演をメディアアートでハイジャックするという作戦会議が、放課後毎日行われるようになった。




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