第55話 今日もモノづくりの日々は続く

くすのき女学院から生中継の講演会で大恥をかいた新校長の生放送は、驚愕する校長と田んぼロボットのダンスの様子がわかる面白画像がネットで拡散され、結局、新校長はくすのき女学院を1学期だけで退任する運びとなった。


私物パソコンやスマホの持ち込み禁止は取り下げられ、女学院憲兵隊も解散。没収されていたマンガ研究部のペンタブや生徒たちの私物PCも、無事に返還された。

こうしてくすのき女学院は、平和を取り戻したのだった。


「お前なー。だから、ここはこうしろって言ったろ」


指導役のルイがあかりにぶつくさと言いながら、プログラミング部の部室で、Unity/C#によるノベルゲーム開発がちまちまと進行しているところに、ガラガラッとドアを開けて入ってきたのは、先日仲たがいして退部したはずのしのぶだった。


「し、しのぶ…」


「退部届、取り下げる。あかりとルイが付き合ってるんじゃないかっていうウワサは、チア部のスパイの工作だったってことがわかったし。突然、あんな怒っちゃって悪かったよ。ごめん」


「しのぶちゃん…。謝るのは私だよ。しのぶちゃんがせっかく作ってくれたデザイン案を否定したりして、言葉が足りなかった。ひとりよがりじゃなくて、もっと、しのぶちゃんと話し合いをして、一緒にモノをつくるってことをやるべきだったのに。ごめんなさい。また、一緒にゲーム開発、してくれるかな?」


「あ、あかり…」


「しのぶちゃん…」


2人がじっと見つめあい、ぎゅっと抱き合った。


「おい、あかり。開発中だろ。続けろよ」


しばらく熱く抱き合う2人を見かねてルイが横目で声をかける。


「あ、さてはルイ、あかりと抱き合ってる私に嫉妬したんでしょー?」


「なッ…! ち、ちがッ…!」


「ほーら。あかりはオレのものって顔にかいてあるよ。あかりにプログラミングの指導して自分色に染め上げたいんでしょ」


「このミリオタ、おとなしくそのまま退部してろ」


「ちょっとぉ、ルイちゃん、口が悪いよー」


「お、しのぶ君復帰か? やっぱり、いつかは戻ってくるんじゃないかと思ってたよ。そしてありがとう。しのぶ君が校長の娘とつながっていたことと、スパイとして校長に取り入った作戦のおかげで、うまく校長を失脚させることができたからな」


いつのまにか部室にいたプログラミング部顧問の玉木先生が、戻ってきたしのぶに明るい声をかけた。


「ね、あかり」


しのぶがあかりの方に、改めて向きなおった。


「あの乙女ゲームの企画さ。私、まだデザイナーを降りてないよ。もう一回、どんなイケメンのキャラたちをゲームで登場させたいのか、話し合おうよ、あかり」


あかりが目を丸くし、そして、ほほえんだ。


「うん!」


プログラミング部の部室では、今日もものづくりが進められている。

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私立くすのき女学院プログラミング部 かわプロ。 @kawaiiprog

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