第12話 底辺部活① 囲碁将棋部の場合

あかりはまず、囲碁将棋部とアポをとり、ある日の放課後の活動時間中に訪問することにした。

囲碁将棋部もプログラミング部と同様、部室棟の端の方にある。

長い廊下を歩きながらあかりはルイに尋ねた。


「玉木先生の言ってた、プログラミングとマイナー部活の関係って…あるの?

玉木先生の口からでまかせ?」


「マイナー部活のほとんどが女子に人気のない理科系の部活であることを考えると、親和性は高いかもしれない」


「ふーん、どういうこと?」


「多分、これからわかる」


玉木先生はいつもヘラヘラしている割に、核心をついた課題をだすことを、ルイは知っていた。


部室に入ると、何名かの部員が真剣な顔で将棋を指している。

囲碁将棋部の部長が、簡単に部のことを説明してくれた。


「活動は毎週木曜日の放課後。思い思いに指すだけ。学校には、オンラインでの対戦実績も提出してるんだけど、学校にはそれを公式の実績と認めてもらえないのが悩みかな」


「プログラミングが囲碁将棋とどう関係があるのかリサーチをしているんですけど、囲碁将棋とプログラミングって関係あると思いますか?」


部員たちはいったん手を止めると、顔を見合わせた。


「プログラミングやったことある人ってどのぐらいいますか? 最近はじまったプログラミングの授業をして、どう思いましたか?」


しばらく沈黙が広がった後、ぽつぽつと部員たちがつぶやきはじめる。どうやら、あまりしゃべるのが得意な人はいないようだ。


「詰将棋を解くのに似てるなって思ったことはあるけど」


「自分でAIをつくって、最強の棋士をつくりたいって思ったことはある!」


「先の手を読むには頭の中に何通りもの中からいちばんよい手を考えるんだ。すべての手を順番に考えていたのではキリがないから、ある程度あたりをつけて読むんだけど、そういうところが、プログラミングに似ていると思うことはある」


「あの…もしかして、早乙女ルイさんですか?」


部員の一人が、恐る恐るルイに話しかけた。


「実は私、将棋アプリ作ってみたいってずっと思ってるんです。なかなかうまくいかないですけど…。作りたいと思ったきっかけが、中等部のときの文化祭で、早乙女さんがつくったリバーシ(オセロ)の展示を見たときでした。すごかった!わたしにはあんなアルゴリズム考えつかないです。…まさかお会いできるなんて」


女子生徒の顔は真っ赤になっている。


ルイはうろたえて、ルイの顔も真っ赤になっていた。


「へー。ルイちゃんって、意外と人気あるんじゃん?ちょっと見直したよ」


あかりが、真っ赤になったまま硬直しているルイを肘でつついて小声でからかった。


「う、うるさい」


「ここはさ」


ずっと質問に答えてばかりの部長が、ふと自分から話を切り出した。


「やっぱりここは、男子の目を気にする必要なく存分に指せるから、いいんだよねー」


部員たちの顔が明るくなった。


「そうそう。やっぱり意識しちゃうからね。あと、なんかやたら教えてくる男子とかいるし」


「いるいるー!」

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