40.深い命題ですね
影が、水路に伸びた岩の柱にとまる。まっ白い羽毛、
『なぜ邪魔をするのですか? 人間』
『あなた方は争っていました。私とあなたの行動は類似しています。したがって、邪魔はされないと考えました』
「え、ええと……」
「あなたの行動に害意を感じたからです。
「そ、そう! それ!」
さすが、非常識な状況には、グリゼルダの対応が早い。リヴィオは全力で乗っかった。
『あなた方が私を邪魔する行動に、害意はないのですか?』
「行動基準にのっとり、
「その通り!」
「頭、良いね。グリゼルダ」
「まだまだ、あなたに頼られたい私です。がんばりました」
長い金髪をかき上げて、グリゼルダが得意顔でふんぞり返る。リヴィオは素直に放置した。
「それじゃあ、まあ、落ちたおっさんたちを拾わせて……」
『あなた方の行動を理解しました』
『同族保護のため、異種族を排除する害意は許容されるのですね。やはり、私とあなたの行動は類似しています。したがって、私の行動をあなた方も理解すると考えました』
暴風と共に、
『私たちは理解し合いました。お互いに害意を許容して、排除し合います』
「……理解と争いって、両立するんだな」
「深い命題ですね」
荒れ狂う暴風と
リヴィオは、落ち着いて状況を
ロゼッタ流に言えば、戦いの
激しい暴風が吹いて、
「知能はあっても、知恵が足りませんね」
グリゼルダが
両肩の装甲を展開して、暴風を取り込んで圧縮、
水路上で
リヴィオは自分が構築した岩柱に降りて、水路の奥の闇を見た。
「逃げた、かな?」
「そのようですね」
「今さらだけどさ。なにかな、あれ」
「……
グリゼルダが難しい顔になる。他に、どう言いようもないのだろう。
リヴィオは肩をすくめて、ずぶ濡れでなんとか
「おっさんたち、面倒なことしてくれたみたいだなあ」
「ふ、ふはははは! そうだ、儀式は着実に進行しているぞ! 我らが深海の邪神、ク=リト=マ=ッタクェさまが復活すれば、この世界は我らのものだ!」
「海の神さまに、なんで
「
「海底って……この辺は
「海底は海底だ!」
リヴィオがげんなりして、
ついでに、リヴィオも一人の背中を
グリゼルダはいつも通り、リヴィオの頭を胸に抱くようにからみつく。どうせ見えていないのだから、リヴィオは気にしないようにした。
「……で? その
「い、いや、それは……」
「おお! もしやあれはク=リト=マ=ッタクェさまの
「なにぃ? ではあれが、うわさに聞く
「飛んでいれば、甲虫だろうが
「おのれ! 他の邪神の
「つまり、それだけ我らの儀式が、完成に近いということよ! 悲願達成は遠くないぞ、同志!」
「おお! 我らがク=リト=マ=ッタクェさまのために!」
なんだか盛り上がる、ずぶ濡れの三人に、リヴィオはもう声をかける気力もなかった。
「さっきの
「ええ。こちらは、知能も足りないようですね」
リヴィオのため息に、グリゼルダの返事も、かなり身もふたもなかった。
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