48.そういうことでさ
昼食の時間帯には、大方を調理し終わった。
ピエトロとダニエラ、エンリコ、リヴィオとレナート、アルマンドにロゼッタとマトリョーナも、めいめいにひよこの串焼きをかじりながら、よく冷えた
さすがのグリゼルダも、
宿屋の前の通りも、流れで
「公共の祝祭ではないはずだが……少し、間の悪い時に来たようだな」
「あら、
騒ぎを
薄灰色の地味な上下は、私服のようだ。宿屋、兼、
以前、レナートとロゼッタが言い争ったように、ヴェルナスタの人間は職務以前に個人として対等、という意識が強い。ガレアッツオも、特に気にする風でもなかった。
「申しわけありません、今日は食堂を休ませてもらってまして……あ、こちら、いかがです?」
ダニエラが差し出した串焼きの異様な外観に、ガレアッツオが明らかに
「いや、私は……」
「さばいたの、レナートだぜ。こういう時は食べてやるのが、親ってもんだろ?」
リヴィオのからかうような声に、ガレアッツオが口を引き結ぶ。そして小さく
「いただこう」
「……無理すると身体を壊すよ、父さん」
「客が身体を壊すようなものを出しているのか、おまえは?」
「
微妙に険悪な二人の間に、こういう時はありがたく、アルマンドが気にもしないで口をはさんだ。
「ああ。すいません、
「そうだ。急がせてすまないが、準備を進める都合もある。本人の意思だけでも確認したい」
「はい、了解です。リヴィオくん、ちょっとお願いします」
「え? 俺?」
完全に
「リヴィオくん。
アルマンドの説明に、レナートが少しだけ、串焼きを持つ手を止めた。だが、それだけだった。
むしろリヴィオの方が、輪をかけて面食らう。
「そりゃ仕事なら、できることはやるけどさ……なんで俺? 自慢じゃないけど、お偉いさんの出回り先で礼儀とか作法とか言われたってわかんないし、ロゼッタの方がしっかりしてるだろ?」
「まあ、そこいら辺は
「加えて言えば、私は今まで
アルマンドとガレアッツオが、それなりに
「おもしろそうな話じゃないの。身辺警護って言っても、今まで
「私はむしろ、見たいし見せたいです」
「ええと、おかしな対抗意識を出さないでください。そんな風だから頼みにくいんですよ」
ロゼッタとマトリョーナの余計な補足に、アルマンドがため息をつく。リヴィオも苦笑しながら、少しだけ考えた。
「じゃあさ……レナートも、一緒で良いかな?」
リヴィオの唐突な
「リ、リヴィオっ? いきなり、なに言って……」
「こいつ今、半分、
「いや、レナートは……」
ガレアッツオの表情が
ガレアッツオとレナートは、五年前の同じ視察で他の家族を亡くしている。もちろんリヴィオも知っていたが、それがなんだ、という気になる。ガレアッツオが行くのだから、レナートも行けば良い。
「大丈夫だって! おまえが
「そ、そうかも知れないけど、当事者同士を前にして言うことじゃないよ!」
レナートの声が調子を外す。
いろいろごちゃごちゃ並べ始めたが、リヴィオはもう、聞いていなかった。
「頼んだよ、アルマンド。そういうことでさ」
「いや、まあ……検討します……」
呆然とするアルマンドの横に、同じ表情のグリゼルダが現れる。リヴィオと真正面に向かい合って、感心するように、自分の腰の両側に手を当てた。
「あなたは時々、とても
「あ。やっぱり
「むしろレナートの友人だから、あなたと
「世話が焼けるよな、二人とも」
普通に会話したが、レナートもガレアッツオも、多分、聞き
リヴィオとグリゼルダは、向き合ったまま、笑い合った。
「あなたのそういうところ、とても好ましいですよ。
「成長したろ? 最近、痛い目に合わされることも減ったし、さ」
「それはそれで残念ですね。趣味でいじめることも考えましょう」
「勘弁してよ」
リヴィオがまた、笑う。グリゼルダも
関係なくリヴィオにつられて、グリゼルダの横で、アルマンドが苦笑する。
ロゼッタとマトリョーナも、あきれたように笑った。
レナートとガレアッツオを放ったらかして、ピエトロとダニエラも、エンリコも笑った。
〜 第四章
ヴェルナスタ特務局の魔法事件簿 司之々 @shi-nono
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