20.新しい種類の快感を覚えます
リヴィオたちがダニエラの宿屋に戻ると、昼間なのに
グリゼルダと、
食堂ではアルマンドが一人、のんきに
「なによ。巻き込まれたのが
「まあ、それもありますが……」
ロゼッタの八つ当たりに、相変らず寝ぐせの残る
「どちらかと言えば、あなたたちの護衛です。今はさすがに、疲れているでしょうから」
「どういう意味だよ?」
「結果として後手に回ってしまい、申しわけありません。今度の件の、容疑者ないし関係者が、ここにいます」
リヴィオとロゼッタがどんな反応をするより早く、奥の階段を、女が一人降りてきた。
短い金髪と、男物みたいな
「マトリョーナ=マルティノヴィナ=マハーリナです。<
一礼する女、マトリョーナに、アルマンドが当然のような顔で隣の、リヴィオとロゼッタに近い
「ぼくはこっちで、食事しながら聞いてますので、遠慮なく話して下さいね」
「ちょっと! なんなのよ、その無責任な丸投げは?」
ロゼッタのあきれ顔に、アルマンドも、すっとぼけた顔になる。
「あれ? 友達って聞いてましたけど」
「いや……そりゃまあ、うちの客だけどさ。別に、友達なんかじゃ……」
「先日は、
マトリョーナが、
リヴィオもロゼッタも、言葉を
「ええええええええええっ?」
「あんた、あの
「そこまで反応いただけると、新しい種類の快感を覚えます」
なんとも言いようのない表情を見合わせて、リヴィオとロゼッタも、おずおずと
マトリョーナが、しかつめらしく
「名乗りましたのは、本名です。
「はい、そうですか。信じたわ」
ロゼッタが投げやりに言う。
ロセリア連邦は、ヴェルナスタ共和国と同じオルレア大陸の、東方と北方を合わせた領域に広大な勢力圏を持つ集合国家体制だ。
冬季には領土と領海のほとんどが氷雪に閉ざされる過酷な環境と、そこで生き抜く
リヴィオは、改めてマトリョーナを見た。
確かに、顔や手指の白さはロセリア人のそれだし、無遠慮にのぞき込めば瞳の
だが、髪は今よりも濃い
「胸は、変装のために
「あんた、グリゼルダに殺されても知らないわよ」
「な、なんで、そういうことわかるの……?」
リヴィオが慌てて視線を
「で? この際、馬鹿になりきって聞くけど、ロセリアの諜報員さんがヴェルナスタに、なんの用があるのよ?」
ロゼッタが、アルマンドの
「私たちコミンテルンの目的は、
当たり前のような顔で、次に
「
「いいえ。世界大戦の終結で帝国主義が崩壊し、各地の植民地も混乱している中、従来からの安定した国体と勢力を
革命の第一段階は、
「
「なんだか気の長い話ね。武器と資金に物を言わせて、ぱぱっと攻めれば良いじゃないの」
「外部でも内部でも、敵と認定されれば、対抗する力の集中を招きます。国に保護されている国民を、その立場のまま、国の破壊に利用することが重要なのです」
ロゼッタの
「両足でまっすぐ立ち、両手を誰かとつなぎ合った人間は、簡単には倒れません。逆に言えば、立ち位置を自覚できない孤独な人間は、
マトリョーナが、淡々と話を広げた。
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