19.驚いたわ
街は<
水路を行く
嫌な知り合いを思い出して、リヴィオが
四人がのぞいて見ると、広場中央の
その楽団の中に、レナートがいた。
レナートの左右に
「へえ。あいつ、あんなこともできたのか」
「そうね……驚いたわ」
リヴィオの素直な感心に、ロゼッタが硬い声を出す。リヴィオが聞き返す前に、グリゼルダが耳打ちした。
「
「え……?」
「
ジャズアルドの言葉を理解するのに、リヴィオには、一呼吸の
ロゼッタ、グリゼルダ、ジャズアルドを順に見る。もう一度レナートに視線を戻すと、横の、
男が
演奏が、軽い
広場に面した建物も、すべての窓の
「この国の
「あんたが、
男の
「彼はこの街で、私の、最初の
「なるほど。どっちも悪いのね」
ロゼッタの言葉と同時に、ジャズアルドの炎の
男とレナートたちを、
大小二つの波紋が、空気を
一瞬だけ
「冷気だ。
「効率悪く
ジャズアルドとロゼッタが、状況を分析する。男は、一歩も動いていなかった。
「この野郎……っ! てめえが出てきやがれっ!」
リヴィオが叫んで、踏み出した。広場の
「良いですよ」
リヴィオの背中側から、頭を
リヴィオは男の脇をすり抜けるように、地面に
「な、なんだ、今の……?」
「
起きざま、すり抜けた男の方に向き直って、
男の
限界まで身体に引きつけていた左の
ジャズアルドの炎の
ロゼッタの
「リヴィオ! ジャズアルド!」
ロゼッタの叫びに
「申しわけありません。彼が人前に出るのは、まだ早すぎたようです。あんまり素直に上達するので、私もつい、はしゃいでしまいました」
「待てっ! レナートを返しやがれ!」
「返すもなにも、彼は自分から、私に協力する気になってくれたのですよ」
「てめえの寝言なんて聞いてねえ!」
「リヴィオ」
やはり霧の向こうから、レナートの声が聞こえた。
「邪魔をしないで。僕は……君も、この国も大嫌いだ。やっと、自分の気持ちを言えるようになったよ……」
「レナート……っ!」
「落ち着きなさい、リヴィオ。今、真意を確認する手段はありません」
「わかってるよ!」
リヴィオが、グリゼルダに
「重ねます。落ち着きなさい。この
「
「レナートを死なせず、
グリゼルダの抑えた声に、リヴィオがようやく
「……時々、ロゼッタみたいなこと言うよな」
「相手に聞かせられないでしょう。代役です」
ロゼッタを見ると、リヴィオを見返して、無言のまま
「あの男は……レナートを
背中を合わせているジャズアルドが、やはり抑えた声で言う。ロゼッタの思考を、言葉にしているようだ。
「ただ、まだ早すぎた、とも言った。レナートの状態が、進行する可能性がある。この場の力押しは不利だが、
ロゼッタが、リヴィオを見つめ続けている。
ここで一番レナートを知っていて、もっとも助けたいと思っているのは、リヴィオだ。戦うのも
リヴィオは
動かなかった。
「ちゃんとしたお
男の声が、
人のざわめきが戻ってきて、どの建物も、不思議そうな顔をした住人が雨戸を開けた。旅芸人の一座も、昼寝から目覚めたような表情を見合わせながら、広場に入ってきた。
リヴィオはまだ、動けなかった。
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