18.私をお母さまに紹介するのです
リヴィオはまどろみの中で、胸が苦しくなるような、甘い花の
いや、違う。本当に息が苦しい。
「ようやく起きてくれましたか。外は良い天気ですよ。いつまでも
胸と腰に豊かな金髪だけをまとわせて、グリゼルダが悪い顔で笑う。
「どうやって起こすのが効果的か、あなたの潜在意識から探りました。嬉しいでしょう。うふふふふ」
「あ、
「奥ゆかしいですね。そこでガバっと来てくれても、
「
「まあ、後の楽しみに致しましょう」
グリゼルダがいつもと少し違う、
幻像なのだから、自由自在だ。たおやかに
「ロゼッタたちに負けてはいられません。私たちも
ふん、と、鼻息が荒い。
食事は外で
「それは仕事着でしょう」
「でも、これが一番まともな服だよ。他は、いつもの作業着みたいなのばっかりだし」
「お
「ずっと独り芝居を見られる、こっちの身にもなって欲しいなあ」
「どんな恋人たちも、二人きりの世界に
これ以上、なにか口ごたえしたら、回避した
起き抜けから全力回転のグリゼルダに追い立てられ、階下に降りると、食堂でロゼッタとジャズアルドが優雅に
非日常性とやらは
グリゼルダがきっちりめかし込んでいるだけに、
「あれはちょっと、かないそうにないわねえ。レナートも言ってたけど、あんたのどこが悪いってわけじゃないんだから、しょげないのよ」
「母さん、まだそんなこと……って、え? あの人、見えてるの?」
「なに言ってるんだか。もう昼だけど、あんたも
よく見れば、確かに、ジャズアルドの前にも
グリゼルダの白い腕が、リヴィオの首に巻きついた。
「リヴィオ。あなたも早く
「わ、わかったから……妙な対抗心、燃やさないで」
ぎりぎりと締まる首に気が遠くなりながら、リヴィオはロゼッタたちの
「おはよう、ロゼッタ。ジャズアルドさん。仕事でもないのに
「おはよう。グリゼルダこそ、
ロゼッタは、なんと言うか、つやっつやに満ち足りた
見ないふりをして、リヴィオは、ジャズアルドの隣に座った。
「前に言ってましたけど、これ、なにかを準備するんですか? いや、その、俺にもできたら便利かな、って」
どうにも言い訳っぽくなる。ジャズアルドが、口元を隠す
「私もグリゼルダも、本質は君たちの身体中に
「血……?」
「そうだ。一度に多くは用意できないが、血液なら、二、三日で身体が補充できるからな」
「ちょっとリヴィオ。先輩として、できそうって判断したらちゃんと教えるから、勝手に試しちゃ駄目よ」
ロゼッタが、少し
「
「へえ。文字通り、身を
「一心同体ですね、リヴィオ」
リヴィオの首に
確かにちょっとだけ気の毒かな、とリヴィオが思うと、グリゼルダの
「あ、あれ? そう言えば、レナートは?」
慌てて思いつきの話を振ると、ダニエラが、
「とっくに遊びに出かけたよ。
「あいつも、考えすぎるところあるからなあ」
「なに、なんの話よ?」
「あいつの親父さん、
リヴィオの短い言葉に、ロゼッタも、それ以上は続けなかった。五年前の
もちろん、ガレアッツオ=フォスカリが事故の後も、
「ロゼッタも家出してんだっけ? 第二分校に行ってたってことは、貴族か金持ちだよな。育ちが良いと、たかが家出も
「あんたは、ずいぶん
「この辺の連中は、季節に一回くらいしてるよ」
「それは遊びほうけて、帰り忘れるだけでしょうに」
ロゼッタが苦笑する。
グリゼルダとジャズアルドも、苦笑したようだ。
「あんたたち、出かけるんでしょ? 近くまでつき合うわ。レナートの奴にも、
「はっきり言ってお邪魔ですが、まあ良いでしょう」
「え? どういうこと?」
リヴィオが一人だけ
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