46.羽毛が未成熟なの
リヴィオが、困惑の目を流す。
「あの、さ……これ、どんな流れなのかな……?」
「さあ……わかりにくいですね……」
グリゼルダが、同じ表情をジャズアルドに向けたが、視線を
「今ならまだ選べるわ! それがわかってて無用に死んだら、今までのあなた自身への裏切りだと思わないの?」
『……あなたの怒りを、理解しました。私は行動を間違おうとしています。ですが……』
「生きなさいよ! 立派に生きて、それから
ロゼッタの目には、涙が浮かんでいた。隣でメドゥサも、
「ええと……」
「私に聞かないで下さい……」
リヴィオとグリゼルダが途方に暮れる。
高く、
すぐにあちこちの
「え? あ、あれ? ひよこ? なんで?」
リヴィオの声に反応したわけでもないだろうが、ぴよぴよぴよ、ぴよぴよぴよ、と、鳴き声も羽毛の数も、どんどん増える。
ついには、水路脇の歩道を、黄色い羽毛の
これほどの数のひよこが、そもそもヴェルナスタにいたということから、まず驚きだった。確か、肉屋で
一羽一羽の脚が多くないのが、せめてもの救いだ。それでも良く見れば、ところどころに背中に小魚を貼りつけた、前に見たことがある
肉屋や、買われたあちこちの家を勝手に開けて、ここまで連れてきたのか。
『あなた方は……どうして……』
ぴよぴよぴよ、ぴよぴよぴよ。
『それは……』
ぴよぴよぴよ、ぴよぴよぴよ。
『……理解しています。ですが、私は……私の怒りを優先しました。それが、理由はわからなくとも、思考し、行動する力を与えられた、私の役割であると……』
ぴよぴよぴよ、ぴよぴよぴよ。
『いえ……そのような……』
ぴよぴよぴよ、ぴよぴよぴよ。
『私には聞こえました。理解しました。それは……存在しました。私が行動の結果、どのようなことになろうと、それは私という個体の問題でしかありません』
ぴよぴよぴよ、ぴよぴよぴよ。
『そんな……そんなことは、あなた方も同じと考えます』
ぴよぴよぴよ、ぴよぴよ……。
『……私は……』
ぴよぴよぴよ、ぴよ……。
『……』
ぴよぴよぴよ……。
『私という個体が、そのような……』
ぴよぴよ……。
「あ、あれ? なんか、鳴き声が……」
なんだかいたたまれない感じで、リヴィオが不自然な声になる。グリゼルダとジャズアルドは、もう、完全に
メドゥサが、涙をふくまねをした。
「ひよこはね、羽毛が未成熟なの。気温の低下に弱いのよ……」
ひよこが一羽、また一羽と、動かなくなっていく。多分、
「こんな夜に外気に触れたら、それだけで……この子たちも、命がけなのよ……!」
「それ知ってて連れてきたの? なんで?」
「お姉さん、感動したわ……!」
会話になっていない。いつもならロゼッタがどうにかしそうなものだが、今夜は向こう側らしい。リヴィオは孤立無援で、思わず、
『私は……すべて理解しました。私の行動が
「ありがとう……! あんたたちの気持ち、無用に終わらせたりはしないわ……!」
ぴよ……。
ロゼッタがなんだか力強く
メドゥサが豊満な胸を支えるように腕組みして、恐らく、良い顔をしているつもりのようだった。
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