28.急に大所帯になったなあ
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半壊した
祝祭客も屋台の商人も、大道芸人も楽団員も、とにかく大騒動のうわさで持ちきりだった。だがその声も、時間が
初夏のよく晴れた日中に、猛吹雪で海が
記憶か正気か、どちらかを疑わなければならない。おおむね全員が、前者を選んだ。まして身体を冷やして風邪をひいた以外、大した怪我人も出なかったのだから、なおさらだった。
ガレアッツオ=フォスカリ
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二つの食卓それぞれに、いつもの
二人と三人で別れて食卓に座り、
「いやあ、たくさん食べてもらえて嬉しいよ! うちの子たちの分まで払ってもらっちゃって、なんだか悪いねえ」
「とんでもありません。先日もいただきましたが、どの料理も絶品ですね! すべて経費で処理しますので、
相変わらずの寝ぐせ頭で、アルマンドが上機嫌に言う。
「同意します。海の友達は、生きていても料理になっても、素晴らしいです」
アルマンドと差し向かいのマトリョーナが、無表情ながら、
「友達としての
「海の食物連鎖は、海の中で回っています。友達同士で食べる食べられるは、おかしなことではありません」
「なるほど、言われてみればそうですね」
右から左にこぼれるような返事で、アルマンドがさっそく、三本目の
「
マトリョーナもマトリョーナで、何度目かの定型文を
「なんであんたが、まだいるのよ……
「そのつもりでしたが、先日の一件で考えを改めました」
姿勢と手つきだけは上品に、マトリョーナが会話しながら、今度は
「ザハールは、私を
「ですので、
「まあ……感謝は、するけどさ……。なんか左腕だけじゃなくて、あちこちに、妙な感触が残ってる気がするのよね……」
「申しわけありません。新しい快感を覚えました」
うっすら青ざめて
「あれ? ロゼッタ、怪我なんかしてたんだ? だからジャズアルドさん、出てこないのかな」
鶏肉と
「うるさいわね! あいつは、基本的に出てこないのよ! そのべたべたべたべたうっとおしい
「な、なに? なんで俺、怒られてるの?」
「あなたが悪いのですよ、リヴィオ。幸せな人間は、その幸せを自覚して、そうでない人間に配慮しなければ」
リヴィオの背中から肩から、からみつくように、後頭部に胸を押し当てて頭に
「ロゼッタ……なげくことはありません。ジャズアルドもあなたを愛していますよ。彼の行動はすべて、彼なりの愛の形なのです」
「知ってるわよ! それでもこういう時は、身体は大丈夫か、とか、無理はするな、とか、言って欲しいのよ! 心配しないで、とか、でもありがとう、とか、そういうのがしたいのよ! べたべたべたべた
それで熱量を消耗して、回復が遅れたら本末転倒なんじゃ、とリヴィオは思ったが、鶏肉と一緒に飲み込んだ。
隣でレナートが、冷ややかに肩をすくめた。
「時々、
隠す気のない
「周囲に散々迷惑をかけた、使い捨ての
「いや、俺は別に……なあ?」
たった今、学習したことを
「リヴィオ、甘やかしてはいけません。あなたの
「ケンカ中に言われたことなんて、いちいち覚えてないよ。細かいなあ」
「私はどんな時でも、あなたの言葉を一言一句、覚えていますよ。なんなら二倍速で、すべて再現して見せましょう」
「絶対にやめて。お願いだから」
ふん、と鼻息の荒いグリゼルダに、リヴィオが真顔でうなだれる。横目で見て、レナートがもう一度、肩をすくめた。
「……ごめん。感謝してるよ……リヴィオ」
レナートの小さな声に、今度はリヴィオが、肩をすくめた。なにを今さら、だ。リヴィオは思い切り、レナートの肩を叩いた。
「難しく考えるなって! 俺は俺で、やりたいようにやっただけなんだから、さ。もう気にすんなよ!」
リヴィオが笑って、レナートも苦笑した。グリゼルダは不満そうだが、ロゼッタも、マトリョーナも
最後にアルマンドが、笑いながら、思い出したようにつけ加えた。
「マトリョーナさんと同じように、レナートくんも、これからは<
「急に大所帯になったなあ。それにしても、ほとんどうちのお客さんか。仕事場が引っ越してきたみたいだな」
「その通りです。今日からぼくもお世話になるので、正式にここが、特務局の臨時本部ですよ」
アルマンドの
「な……なんでっ? アルマンドまで、どうしてうちに……っ?」
「ぼく、執務室に住んでいたんですよ。合理的で良かったのですが、あの通り、
「ずぼらの極みだろ、それ……!」
言ってはみたが、どうしようもない。
「なんだか、おかしなことになっちゃったなあ……」
リヴィオが、あきれ返った。
目を見合わせたロゼッタが、同じ表情でため息をつく。
「仕方ないわよ。
アルマンドとマトリョーナ、グリゼルダまでが、自分たちがそこに含まれている自覚がないように、大きく
レナートだけが、少し申しわけないような、同情するような目を、リヴィオに向けていた。
〜 第二章
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